騎士と世界樹(後編)

第50話 怨霊1

「それで、徹。行く当てはあるの?」

とりあえず、勢いよくドアを開いてみたが、特に何も考えていなかったので、僕の動きが止まった。


「全くないですけど。とりあえず、人を集めて、どうにかして本体を倒せば良いんですよね。あと謎の怪物を」

まあ、そう言ってみたが、その通りである。それは正しいと思う。まず何処に人がいるのか分からない。次にどうやって倒すか分からない。つまり何も分からない。


「まあ、どんだけ被害がでても大丈夫なら私が最大火力の魔法を使えば良いんですけどね。でも、それだとどっちが侵略者か分かりませんしね。」

下手したらより大きな被害を生みそうである。


「まあ、それは最終手段として、とりあえず、他の生き残っている人を探してみましょう。それで、どこに逃げたかとか分かりますか?」

一応聞いてみよう。あまり期待は出来ないが、バラバラに逃げてルナがここまで一直線で来たなら多分。


「徹。全く分からないよ。正直、生き残っている人がいるかどうかも分からないです。少なくともここまでくる間に人とは出会ってません。それに探すって言っても多分皆さん隠れてますから、見つけるのは至難の業ですよ。」

ルナさんはそう言って、少し頭を抱えていた。ああ、そうか。土地勘があまりない場所で、土地勘がある人が隠れているのを探すのは至難の業だ。というか多分不可能だ。他の人が見つけてくれるならまだ可能性があるけど、でも他の人が僕らを探しに来てる確信はないので、あまり良い作戦では………あっ


「ルナ、探すって発想が違うんですよ。」

そう言って僕が笑うと


「何その悪い顔。それでどうしますか?徹。」

そう言って笑ったので


「探すんじゃなくて、目立って騒ぎを起こして見つけて貰いましょう。」

とりあえず、ドヤ顔を決めた。そしてそんな余裕がないかもしれないことを思い出して少し冷静になった。こういう時こそ、テンションに飲まれずに冷静にないといけない。


そう僕が言うとルナは、ニッコリと笑い

「了解しました。」

そうつぶやくと、杖を出して、建物の壁に向かって魔法を放った。

その魔法は大きな炎の塊で壁に大きな穴をあけてしばらく進んだのちに霧散した。

外には、数多くのクロモヤに包まれた、人々がいた。僕は一度剣をしまって。


「ルナ、とりあえず、飛び降りてみよう。」

そういうと僕はルナを抱えて、少し高さのある僕の貸してもらっている部屋がある階層から地面に飛び降りた。体が勝手に動いていた。


「徹、お姫さ、あっえっ、いきなり飛び降り…………」

そう、途中まで言いかけて、ルナは途中から言葉ではなくパンチで僕に抗議してきた。飛び降りた衝撃で軽く地面が凹み、大きな音が発生した。地面には多くのクロモヤに包まれた人がいて、そしてまあまあ取り囲まれていた。あっ………僕は冷静さを失っていたらしい。


「ルナ、なんとなく飛び降りたけど、たぶんこれ飛び降りなかった方が良かった気がします、ごめんなさい。」

とりあえず、謝りつつ、さて、どうするか。


「許しません。とりあえず、徹は走ってください、私が攻撃します。それでいきなり飛び降りてアホなんですか?いつも考えて動くのに、何してるんですか?」

そんなルナの罵倒はまあ、しかたなかったので甘んじて受け入れることにして、素直に言うことを聞いて避けることに専念することにした。


ルナの魔法はクロモヤに当たるとそのクロモヤが取れて中の人が現れるのだが、すぐにまたクロモヤに戻ってしまっていた。


「えっと、ルナの魔法…………」

そうつぶやくとルナは乾いた笑いを浮かべながら。


「徹に言い忘れてましたけど、私の魔法を使って、クロモヤを取り除いても、これだけ数がいたら、すぐに他のクロモヤが倒れている人に補充するので、囲まれないように死ぬ気で逃げてくださいね。」

…………マジかよ。厄介すぎるでしょ。ああ、なんで僕飛び降りたんだろう、バカじゃんただの、バカじゃん。それでも、今はとりあえず、必死に走った。




とりあえず、走り回っているとそんな声が聞こえた。

「ルナさん、徹さん、こっちです。」

多分アインさんだった。でもどこから声が聞こえているかは分からない。


「徹、上に居るみたい。」

そうルナがいうので一瞬上を見てみると四角い建物の屋上にアインさんがいた。

どうやって、登ろう。普通に飛んで届きそうもないし、だからと言って入り口から入る分けにはいかない、というか多分閉めてるだろうし。………まあどうせ、ルナにはあとでいろいろ言われるだろうし、今から一つ文句を言われる要因が増えても誤差みたいなものである。


「ルナ…………ルナさん、ルナ様、ごめんなさい、後転送魔法お願いします。」

僕がルナを持って飛び跳ねるのは無理だが、ルナを投げ上げることは出来る。ルナ軽いし。


「徹…………」

そんな叫び声と共にルナが上空に舞い上がった。ルナは空中で魔法を使ったのか、無事に着したようだった。怒ってすぐに僕を屋上に転送しないと思ったが、以外にもすぐに転送した。



真顔のルナがいた。

「ちゃんと上に、行けましたね、ルナ…………ルナさん」


ルナはゆっくりと笑った。

「徹、せめて何をするかを言ってください。今から投げるとか言えましたよね。」

そう笑顔でルナは呟いた。あっ、怒ってますよね。ついでに、その場にいた人から突き刺すような視線を感じた。
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る