第41話 勝負2
神殿らしき場所の近くになったのだろうか、声が聞こえた。
「俺にたてをつくのか?騎士団どもは、俺に勝てない事は分かっているだろうに、まだやるか?ははは」
その声は偉そうで、すぐにこの里の族長の声だと分かった。
「貴様、ふう、俺は決めだんだよ。貴様にどんな手を使っても勝つと。」
その声は、バレットさんのものだった。
神殿が見えてきた。
遠目だったが、太った40代ぐらいの中年男性がバレットさんの胸ぐらを掴んでいた。無傷で余裕そうな、恐らく族長とは対照的にバレットさんはボロボロで、血まみれになっていた。その他にも神殿の壁で死んでいるか生きているか分からないぐらいボロボロになっている、僕が一度戦った、双子がいた。力の差は圧倒的であることが分かった。
「ははは、それで3対1で挑んできたのか。だが、それでも俺には届かない。雑魚の息子は雑魚だな。」
そう族長が嘲笑っていたが、でもバレットさんの父親を倒したのは、あんたではないのでは、そう思いつつ、ルナを降ろして。とりあえず、その戦いに乱入することにした。勝算も何もないが、どうせ僕は不死身みたいなものなので、最悪、動きを止めればルナがどうにかしてくれそうだし。
「待ってください。徹さんとエルフさん。」
それは、アインさんだった。
「誰?この女の人?徹。…………まあ今は許してあげますよ。でも、徹、私も考えなしに突っ込むのは反対ですよ。」
その言葉にルナが同調的なことをした。ああ、そうか人質がいるのか。
「じゃあ、僕が囮になるので、アインさんが、人質を助けて、その間にルナがけが人を回収して治療するとかの作戦で行きましょう。」
作戦と呼べるレベルではなかったが、時間がないのでしょうがない。
「徹。私、回復系の魔法はあまり得意じゃないのであくまで応急措置しか出来ませんよ。まあ、それが一番良いですかね?族長を攻撃するのは徹に今回は譲りましょう。じゃあ、そこの女の子は………」
ルナが話しているときにアインさんは言葉を遮った。
「違います、そういうことじゃなくて、お二人は逃げてください。お二人の身の安全は私たちが守ります。これは兄からの伝言です。『貴様らには迷惑をかけたって、俺は聖剣伝説のアンナのような人物になりたかったことを思い出した、俺が族長を倒す、貴様に迷惑はかけない。』それにこれは私たちの問題です。私もサリちゃんを逃がしてそれで………」
アインさんの言葉の途中でルナが
「何で?私たち君らより強いと思いますよ。」
そう言って遮った。
「分かってません、族長の強さを、分かってません。それに私たちが助けてもらう義理もなければ、返せるものもありません。私たちだって、プライドがあります、捕まえてしまった人に助けられたなんて大恥じゃないですか。」
はああ?
「しょうもないプライドですね。」
思わずひどい言葉を投げかけてしまった。すると、アインは泣き出した。何で?
「徹。多分、これはこの子が、私たちが族長に負けると思ってるから、戦わせずに逃がすためにわざと言っているんですよ。それぐらい分からないとダメですよ。まあ私はある意味安心しましたけどね。」
ルナがなんかルナのほうがまともな感じを醸し出している、何かすごく癪に障った。
「…………お願いします。部外者まで巻き込むなんて、私たちの獣人族のプライドが」
泣きながら叫ぶアインに僕はもう一度
「しょうもないプライドですね。」
そう言うのであった。捨てれないプライドなんて碌なものではない。それは変なプライドを持っていた、クラスでいた時の経験で分かる。プライドを持つことは大事だ、でもそれより大事なことがあるなら、プライドぐらい捨てれないと後悔する。自分のプライドや立ち位置を言い訳に何もしないと後悔するだけだ。
さらに涙目になった。僕、知らない。
「徹…………じゃあ、まあさっきの徹の作戦で私がサリさんを助けて、手当もする感じでいきましょうか。」
まあ、二人でやるなら人質救出もルナが
「…………私がサリちゃんを助けます。だから、お二人とも私を私たちを助けてください。」
アインさんは泣きながらそう言った。
「いや、別に助けませんよ。自分がしたいからするんですよ。」
そうほとんど反射的に呟いた。
「えっ」
「僕が、僕らがムカつくから族長に喧嘩を売りに行くんですし、僕らが心配だから人質を解放するだけですし、僕が文句をバレットさんに言いたいから傷を治してもらうだけですよ。それで勝手にたまたま、君が助かるだけですよ。」
するとルナは笑いながら
「徹ってめんどうな性格してますね本当に。私は、助けるつもりなので、お礼に泊まる場所を貸してくださいね。じゃあ、早く助けに行きましょう。」
そう言っていた。まあ、いいや。
「じゃあ、」
そう僕は言い残して、神殿に飛び出した。ボロボロのバレットさんを見下ろす。族長の前に飛び出した。
「き…………き貴様、なぜ、なぜ来た。貴様が来ていないことを確認して、それでこ」
声を振り絞りながらバレットさんは呟いた。
「うるさい。無理せず、バレットさんは黙っててください。」
何となく強く叫んだ。
「お前が侵入者の人間か、のこのこと俺に殺されに来たのか?ははは、それともヒーローか、聖剣か何かのつもりか?でもそれは間違っている俺が正義だからな。」
なるほど、
「おじさんは頭がおかしいんですね。とりあえず、決闘しませんか?僕が勝ったら、族長を辞めてくださいね。」
そう言って煽った。
「はははは、いいだろう、俺が負けるわけがないからな。ぶっ殺してやるよ。俺の手で、いたぶりながら後悔させてやるよ。俺に偉そうな口を聞いたことを俺に挑んだことをな」
族長は何というか挑発に乗りやすかった。
「やめろ、貴様、死ぬぞ。寺坂 徹。」
そのバレットさんの声を合図に決闘が始まった。
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