第29話  世界樹のダンジョンでの成果1

それから、何もないダンジョンの100階でいろいろ話をした。


「徹は、私がボーっとしている間にいろいろあったってことですね。まあ、昔のいせかいから来た勇者は、私も一緒などで大船に乗ったつもりで安心してください。」

ルナさんはとても機嫌がいいのか、そう言ってニコニコ笑っていた。美人エルフの笑顔は写真映えしそうだな、とカメラがない今、どうしようもないことをふと思ったりした。


「てか、ルナさんは、魔力があり続ければ不死身とかいう重要な情報をなんで黙ってたんですか?」

僕は、今まで助けなくても大丈夫なところで無駄にカッコをつけて助けてしまっていたということになるではないか。それは、普通に恥ずかしい。


「徹は、しっかりと私の話を聞いてませんでしたね。私は呪われた子として迫害されていたんですよ。それがあるから、怖がられるか、嫌われると思うじゃないですか。」

ルナさんは口を軽く膨らませながらそう言っていた。こんなに表情豊かだったけ?まあいいや。


「いや、僕も似たようなものだから。嫌うも何も、ないですから。それで、一通りいろいろ話をしたところで、この階層はどうすればクリア何ですか?」

流石にここでずっとしゃべっておくわけにもいかないのでそう尋ねると、ルナさんは


「そこのドアをくぐり抜ければクリアだと思いますよ。なんか拍子抜けですけど。進みましょうか。」

ルナさんに僕は手を引かれて、ドアをくぐった。


眩しい光を超えた先には、

ドアをくぐった先には、宝物庫のようなものが広がっていた。

たくさんの金品と本があった。

ダンジョンのクリア報酬的なものだろうか?


『クリアおめでとう、諸君、説明を長くするのは面倒だから、そこにある本でも読んでくれ給え、継承者よ。』

そんな少し聞いたことがある声があたりに響いた。パッとルナさんを見ると


「魔法ですね。とりあえず、本を探しますよね。」

ルナさんはそう言って返した、ルナさんにはエスパーの素質があるかもしれない。

まあ、探すまでもなく本は見つかった。机のような場所にここと書かれた紙があり、本があったのだ。『世界の真実について』


「世界の真実ですか…………胡散臭いですね。」


「まあ、良くわからないのでとりあえず読んでみましょう。」

内容は目次から見るに二部構成だった。世界の歴史についてまず書かれていた。




『世界の真実について』第1部 要約


世界には、この世界と別々に様々な世界があり、なんやかんやいろいろあって、唯一の神と天使たちによって管理されていた。ある時に、この世界に神に近い、ほとんど神である世界樹の精霊が誕生した。神は自分の支配のためか、理由は分からないが、この精霊を殺すように最も信頼していた天使長に頼んだ。しかし、天使長は、世界樹の精霊と触れ合うことで、神の命令に違和感を感じて、神を裏切った。その判断に一部の天使が同調し、この世界をかけた戦いが始まった。決着はつくことがなかったが、元天使長はいくつかの世界に神たちが干渉できないように結界を作った。しかし、神はこの世界を諦めることなく結界が弱ってきたところを攻めてこようとしている。疲弊しきった元天使長たちは、自分の力をすべて使って、未来に託すためにダンジョンを作った。世界を救うために力を使ってほしい。




こんな感じだ。これは、多分、確か、ルルシア教と同じような内容だ。これは事実ってことか。


「ルナさんは神様を信じますか?」

そう僕が言うと彼女は首を傾げて


「信じませんよ。いることをじゃなくて神様がいても信じませんよ。今私が信じてるのは徹だけですから。」

そういった、なるほど、参考にならない。僕のクラスメイトはこの戦いに巻き込めたということか?だとしたら良い迷惑だが。


まあとりあえず。今分かる勢力を整理しよう。


ダンジョンは神様へ反乱した天使たちが作ったもの(ルルシア教)で目的はこの世界を守ること。


この世界に僕らを呼んだ人はエル帝国(皇帝陛下)で今のところ目的不明。


前に異世界からやって来た人は誰が呼んだのか不明で、目的は確か、世界を救うとか言ってた気がする。


魔王軍は話に出てきたが、魔族はいるが魔王などがいるかは不明、だからもちろん目的は不明。


なるほど、わけが分からない。そもそもこのダンジョンを作った側が味方かどうか分からない。そもそも書物とかいくらでも嘘がかけるし。とりあえず、面倒な状況ってことが分かった。


「徹、ぼーっと考え込んでないで続きを読んだらどうですか?」

ルナさんがそういうのはごもっともなので続きを読むことにした。




『面倒なので、書くのはこれまでにします。いろいろ前半で書いたが、まあ世界を自分で見て自分で判断してくれたらいいよ。』

ページをめくるとそんな一文が僕の目に映った。その後の数ページをめくってみたが白紙だった。うん、なるほ、なるほどね、なるほど。


「ふざけるなよ。ああ、」

思わず本を投げつけてしまった。…………良くない、良くない、これは良くない。本には罪はない。


「徹、どうしたんですか?これ、最後のページになんか書いてますよ。」

僕が投げた本を拾い上げて、ルナさんは見せてきた。


『最後にもし異世界から来た人がこれを読んでいたら、一つアドバイスをあげよう。この世界から元の世界に帰る方法は基本的にはない。まあ、全くないことはないってことはないが、出来るのは一部の天使と神様ぐらいだ。だから頑張れ。』


そう書かれていた。なるほど、ふざけるな。いろいろふざけるな。なんだよ、神とか天使とか、マジであああ、てか、これだけかよ。もっと情報が欲しいよ。てか帰れないの?どうするのよ。とりあえず、王国目指すか?でも目指したところで、あそこは多分終わってるしな。いや、こんだけ本があれば、なんか情報があるかもしれない。


「ルナさん、ここから出る前にとりあえず、片っ端から本を読みましょう。それで使えそうな情報を」


「徹、さっき何冊か見てみたけど、それは全部中身は白紙でしたよ。」

ルナさんはそうニッコリと非情なことを言った。


「…………」


「それにこの貴重品に見えるやつも魔法で加工されたただの石ですね。」


「…………」

何それ、こんなの新手の嫌がらせだろ。何もないのここ。いや、そんなことはないはずだ。何かはあるはずだ。そう思って必死に本棚をあさり始めることにした。


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