第20話 ダンジョン2
「そろそろ、ドラゴンが現れると思うのでちゃんと戦う準備をしてください、徹。」
そのルナさんの言葉が聞こえて、ルナさんが作った炎の球体がアリを焼きつくしたと同時に、気が付けば一人で違う場所にいた。
これがダンジョンの形が変わるってやつか。
目の前にはドラゴンというか、大きなトカゲがいた。
トカゲでも大きいと迫力がある。
「はぁ?」
何が起きたのか分からないがとりあえず、このトカゲを倒して、ルナさんと合流するか。
僕はダンジョン攻略を初めてから初めて刀のような剣を抜いた。
「先手必勝」
そう独り言をつぶやきながら地面を全出力を持って蹴り、トカゲとの距離を縮めた。
大きさはかなりあるが、とりあえず頭を落とせばなんとかなるだろう。だって生き物でしょ。そう思い首元めがけて剣を振り下ろした。
振り下ろした刃は、トカゲの鱗を切ることは出来たが、首を切り落とすことは出来なかった。
「硬いな。」
距離を一度取りながら、そう言った。
確実に攻撃は通ったので何度か繰り返せば倒せるが、これだとさすがに倒すのに時間がかかる。なら、柔らかそうなところを狙おう。
そんな風に軽く策を練っていると……策では無いな別にこれ、思案していると
「ギャアオオォオオ」
そんな風に唸りをあげて口を開いた。
口の中に炎の塊が現れた。かなり高温な気がしたが、避けずに突っ込むことにした。防御不要な点はスキル保存における恩恵だろう。
トカゲが吹き出す炎は高温だったが、ルナさんの魔法と比べるとぬるかった。
そのまま距離を詰めるとトカゲの顔の辺りを思いっきり蹴り上げた。かなり質量があったが、まあいけるな。
それによって身体全体が宙に浮いたトカゲの腹は、案の定鱗などがなかったので、そこに刃を刺した。
やわらかいな、そう思いながら空中に舞ったトカゲを切った。
それでトカゲは倒すことが出来たが、問題もあった。大問題である。
トカゲを空中で切った時に飛び出た血しぶきが全て僕に降り注いだ。
「最悪だ。いろいろ最悪だ。」
そう呟きながらひとまず、とりあえず、ルナさんの所に戻ることにした。
ルナさんの場所に戻ると血まみれの僕にルナさんが涙目で抱きついて来た。
「すぐに、すぐにすぐに戻って来ないから、死んじゃったと思いました。」
「いや、僕は死なないので、結構速くドラゴン倒したと思うんですけどね。てか、何でここら辺の地形がボコボコになってるんですか?」
僕の目にはさまざまな大きさのクレーターが見えた。何があったんだよ。
「それなら、私もあります徹何で全身ベトベト何ですか?私もベトベトになったんですけど、どうしてくれるんですか?」
「………なんかすいません。帰り血を浴びてしまって、とりあえず魔法で水をかけて貰って炎の魔法で乾かして欲しいと思ったんですけど。」
ルナお姉さんの作った服は魔法で燃えない。普通に火を物理的に起こしてつけたら燃えるらしいが。
「………徹はそれが出来ても私は出来ないんですけど。ああ、えっとこの地形はドラゴンを倒そうと思って、魔法があんまり通じないからたくさん攻撃をしたからですよ。」
そう良いながらルナさんは僕に魔法で水をかけて、それから炎魔法をぶつけた。
「ルナお姉さんはどうするんですか?」
そう僕が言うとルナさんは笑顔で
「徹?目をつぶるか?反対を向くか?目を潰すかして下さい。着替えたりするので」
目をつぶって反対を向く事にした。
それからしばらくして着替えを済ませたルナさんと共にダンジョンを攻略と言うか、ルナさんの魔法でアリやクマを薙ぎ払っていると再び、はぐれて目の前にはドラゴンというか、大きなトカゲが現れた。
「またか」
とりあえず、このトカゲを倒して、ルナさんと合流するか。
同じような事が3回繰り返された。
「………ルナお姉さん、アリとクマを倒しすぎるとドラゴンの場所に飛ばされるじゃないですか?」
「どう言う事ですか?徹」
ルナさんは考える事をあまりしないらしい。
「だから、ダンジョンのかたちが変わったるんじゃ無くて、僕たちが違う場所に飛ばされてるんじゃないですか?」
「………徹、天才ですか?でもそれならどうするんですか?倒したら飛ばされて、たどり着けない。でも倒さないと進めない。」
ルナさんに対する答えは簡単だった。僕が1番得意かも知れない事。
「ひたすら逃げるですよ。」
「なるほど、確かにそうですね。でもそれはまずいですね。私走れませんよ。」
「なるほど、それなら」
仕方ないのでルナさんを抱えて走る事にした。今まで姫プだったから今度は僕が働く番である。ルナさんをお姫様抱っこをして走っていた。
「徹‥……恥ずかしいですけど。」
そんな風に文句を言いながらルナさんは殺さない程度にクマやアリに向かって魔法を放っていた。
「知りませんよ。走りますか?」
「………ありがとう徹。」
ルナさんは走りたくないらしい。でもそんな事はどうでも良かった。今はそんな事よりも問題があった。
「ルナさん、行き止まりです。このダンジョンが嫌がらせをしてる様にしか思えないんですけど。」
「……じゃあ、徹、とりあえずこいつら撃破して、もう一回追いかけっこやり直そうか。」
ルナさんは乾いた笑顔を浮かべた。非常に美しいと思ったが、それよりも絶望が大きかった。
これが地獄の始まりだった。
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