10月1日 晴れ 29℃/19℃
101号室 大刃美憂(1)
カーテンの隙間から漏れる太陽が頬を撫ぜ、
9:20。まずい、遅刻も遅刻大遅刻! と慌てて起き上がったところで数字の下の土曜日の文字を見て、バタンと枕に倒れ込んだ。
そうだ、今日は会社も休みだった。美憂はほっと胸を撫で下ろし、ならば二度寝しようと枕の上の顔のポジションを取り直した。だが一度ばっちり醒めてしまった頭はなかなか夢の世界に旅立とうとしない。
しゃーない、とりあえず一発するか。
美憂は朝の日課とばかりに、足の辺りでもたついていた薄掛け布団を胸まで上げ、もぞもぞとパジャマのズボンに右手を入れる。左手で素早くスマホのロックを解除すると、画面は昨日寝落ちした時に見ていた
……まあいっか。
美憂はおもむろに目を閉じて、朝一番の爽やかな自慰に耽った。
◆
トースターに六枚切りのパンにスライスチーズを乗せて1200W4分にセットし、昨日の水が残ったままの電気ケトルのスイッチをオンにする。予熱なんて面倒な事はしないので4分がベストだ。パンが焼きあがるより早く湯が沸くので、学生時代パン祭りでゲットしたミッフィーのマグカップに、インスタントの粉をすり切り一杯のところを山盛りに入れて渋めのコーヒーを淹れる。一口二口啜るうちに、チーズトーストが焼き上がる。学生時代から使っている一人暮らし用の小型化冷蔵庫にバターは無い。
これが生来ズボラな美憂が一人暮らし六年目にしてたどり着いた、究極の朝ご飯である。とはいえ彼女も究極や至高を追い求めたわけでなく、昨晩のカレーが残って入れば朝からカレーだって別に構わないし、会社帰りのコンビニで見切り品のサンドイッチを買って翌朝食べることもある。
ジャムを掬ったスプーンを洗うより、スライスチーズのラップをゴミ箱に放った方が楽だからこのスタイルに行き着いたのだ。一時期はコップを洗うのも億劫で紙コップを使用していたが、コスト面の理由で断念している。
サクサクと小気味良い音がして、右手に持ったチーズトーストが美憂の口の中に消えていく。スマホを抱えた左手の親指は忙しなく動き、昨晩のオカズのお勧め関連動画をザッピングしては好みの子がいないかをチェックしている。そうして最後の耳の角を食べ切って、ぺろりと指を舐めた時にまた気がついた。
しまった。まだ手を洗ってない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます