第8話 行き先はヘブル連邦

ユーリさんが旅立ってから3日後の事。僕の周りでは何事も起こらずシリアさんの貴族としてのお仕事を手伝う毎日。朝早く起きてお祈りしてから朝食。朝食を食べてからは領内での仕事。


お昼を食べてから趣味や娯楽を楽しみ、客人を招いて晩御飯を食べながら客人と会話を楽しみ、消灯してから睡眠という健康的な生活をしていて、僕は今日もそんな毎日を送るつもりであった。


今日だけは何か違った。それは早朝のお祈りの時までは何事もなく、お祈りが終わった後、シリアさんは食卓で朝刊を読みながらモーニングティーを一口飲んでから新聞の一面を見た事から始まる。


「な!なによ!この記事は?!」


「どうなされましたか?お嬢。」


「コレを見て。」


シリアさんはその新聞記事の一面をテーブルに置き、爺やさんと僕にアーニャさんがこの記事の見出しに驚愕する。


「まさか、ネールランド連合国が……」


「ファシズ共和国に……」


「完全包囲。」


新聞の記事の見出しを爺やさん、アーニャさん、僕の順番に読み上げ、記事の内容としてはこうだ。


一昨日、長らくファシズ共和国は突如としてネールランド連合国にファシズ共和国内でテロ活動を行うカサルティオのメンバーを匿ってるとして身元引き受けを交渉したところ、ネールランド連合国は匿ってないと断固拒否。


拒否した事によって昨夜、ファシズ共和国はネールランド連合国の首都であるオルアンを包囲し明日までにカサルティオのメンバーを引き渡しをしなかった場合、攻撃を仕掛けると宣戦布告。


ネールランド連合国は匿ってない事に疑われるのは遺憾だとして、因縁を付けた上に攻撃を仕掛けるのは侵略も同然だとしてネールランド連合国は徹底抗戦の態勢を取る。


その背景にはネールランド連合国内で起きるファシズ共和国との領土問題がここ十数年の間起きている互いの溝と亀裂によるものだと本誌は考察する。


歴史的観点の違いからこのような事態が起きてしまったのではないかと思われる。


という新聞記事の内容だ。


「ネールランド連合国は決してテロリストを匿うような国ではないわ!」


シリアさんは新聞の記事内容にも腹を立てている様子でテーブルを何か当たるように新聞を叩きつけて続けて言う。


「あそこは自然豊かで人々がドラゴンと共存して自然を崇めて人々は尊敬し合い、嘘を許さず心優しい人々なのになんなのよ!」


「お嬢。お気持ちは分かりますが少し落ち着いてはいかがでしょうか?」


「うん……」


爺やさんはシリアさんを宥め、それに続いてアーニャさんも一言だけ頷いて首を縦に振る。シリアさんは爺やさんの言葉で冷静に戻って落ち着きを取り戻して何か思い立ったように準備を始める。


「お嬢。何をしております?」


「これから王宮に行って皇帝バルガ様にお会いしに行くわ。爺や、アーニャ、泰虎。私と着いてきてちょうだい。」


「かしこまりました。」


「了解です……」


「分かりました。」


僕はすぐに胴着の袴から出掛ける用の軍服に着替えてからすぐに身支度を整えてアント家の正門へと向かう。シリアさんは剣士のような姿、爺やさんとアーニャさんは変わらず燕尾服とメイド服って感じ。


なんだろう。この世界ではあんまりオシャレとかしないのかな?っていう微かな僕個人の疑問は置いといて馬車で王宮へと向かう。


馬車の中ではピアノ線が張り詰めている緊張した雰囲気の中で王宮へと向かう。馬車に乗ってまだ数分と経っていないけど、馬車の中に入って数十分は経っているんじゃないか?って思わせる。


ネールランド連合国はシリアさんの言っていた通りドラゴンが住む最後の楽園と言われている。その昔、ドラゴンは吉兆や災厄の象徴とされ人々に拝められながらも畏怖の存在とされていた。


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