第142話 塔


「どこまで続くのかしら・・・・・・」

 隣を歩くアリスは、退屈そうに漏らす。


「先が見えないわね・・・・・・本当にここでいいのかしら?」

 セレスティーヌも上の方を向き、疑問を口にする。


 ワイバーンの大群を退けた俺たちは、無事塔にたどり着いた。そして、塔の外部を巻くように付いている螺旋階段を登り始めた。だが、行けども行けどもなかなか塔のてっぺんは見えてこない。


「ねえ、【瞬間移動】で一気に上まで行けないの?」

 ミオの問いに、俺は首を振る。


「いや。さっき【千里眼】でこの上部を見てみたんだが・・・・・・なんか、光の霧みたいなので覆われていて、どういう場所か分からないんだ。別に【瞬間移動】で飛べないこともないんだが、その途端にいきなりストーンウォールにどっしゃーん!とかなっても嫌だろう?」

「それは確かにね・・・・・・」

 釈然としない様子で黙るミオ。


「ワイバーン、また襲ってこないのかな?今度来たら、わたしの銃砲の餌食にしてやるのに」

 ホルスターから銃を抜き出し、構えてみるアリス。だが周囲のどこからも、何の反応もない。


 俺はグレートパーティの皆を見る。モンスターと戦うのは、それはそれで大変なんだが、まだやりがいがあるんだよな。こうしてただ黙々と階段を登るだけだと、ぶっちゃけかなりつまらない。


「そういえばみんな、高所恐怖症とかないのか?これ、かなり高い所まで進むぞ多分」

 俺がそう言うと、ソフィアが恐る恐るといった感じで手を挙げる。


「ごめん、わたしちょっとその傾向があるわ・・・・・・」

 そんなソフィアを見てセレスティーヌは、

「え、そうなの?じゃあ位置交代するね」

 とソフィアを内側に誘導する。


「ありがとう・・・・・・」

 今まで我慢していたのか、ソフィアはほっとした表情になる。


「ソフィア、万が一落ちても【招集術】とか【瞬間移動】で絶対に助けるから安心していいぞ」

 俺はとりあえずそう言っておく。


「それにしても、モンスターの攻撃がないと、それはそれで何だか侘しいものがありますね・・・・・・」

 とルミナ。


「本当ね。うーん・・・・・・しりとりでもする?」

 ミオが提案する。


「そうだな。それぐらいしか退屈しのぎが思いつかないからいいんじゃないか?だけれどみんな、どこにどんな罠が仕掛けてあるかもしれないから、気をつけておいてくれよ」

「りょーかい。それじゃ私からいくね・・・・・・」

 ミオが最初の単語を口にして、それから順々にしりとりを始める。


 小学校のとき、山登りでこんな風にしりとりしたっけ。ふと懐かしい記憶が頭をよぎった。



 ひとりあたり八百単語くらい言ったところで、やっと塔のてっぺんに到着した。


 到着した途端、まるで霧が晴れるみたいに視界がクリアになった。 


 塔の最上部には、モンスター始め動く物の影はなにひとつなかった。


「ここが・・・・・・“隠されし世界”の最終地点かしら」

「いや、そうとも限らんだろう。さっきから何度も空間そのものが変形していたりするからな。いきなり、天地がひっくり返るかもしれないぞ」


 俺たちは、武器を構えて用心する。さあ、鬼でも蛇でも出てこい。


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