第107話 ペンダント回収


 ペンダントは、スキュラーケンの残骸の中から発見された。


「見つけたわよ~」

 ミオが真っ先にペンダントを取り上げて見せてくる。


 ルミナが確認して、喜ぶ。


「本当に見つかりましたね・・・・・・ありがとうございます皆さん」

 深々と礼をして感謝の念を伝えるルミナ。


「だけれど、このまま持っていくにしてはちょっと汚れているわね」

 ミオは言う。確かにちょっとベトベトしているな。


「ミオ、ちょっとそのペンダント掲げてみて」

「え、こう?」

 俺の言われたとおりにするミオ。 


「ちょっと冷たいかもしれないが我慢してくれ・・・・・・【流水】」


 ペンダントを握ったミオの手に、空中で発生した水が勢いよく浴びせられる。


「どうだ?これでたぶん、ペンダントは綺麗さっぱり洗えるだろ」

 流水を浴びせること数分、ペンダントの汚れは綺麗に洗い流されていた。


「わあ、ピカピカですね!母もきっと喜ぶと思います」

 ルミナは喜ぶ。


「それじゃ、ルミナの家までもどるか」

「ええ、そうしよ」

「はい、是非」

 ということで、俺たちはルミナの実家へと戻る。



 アパートの前の公園にあるベンチに腰掛けて、ミオと俺はルミナを待つ。


 ルミナは今頃、ペンダントを母親に渡しているのだろう。


 ふと、眼前にある公園の遊具たちで遊ぶこどもたちを見ながら、ルミナも幼い頃はここで遊んでいたのかな、と思った。


 午後の公園をこどもの声が穏やかに満たす。


 ミオと俺の間には、心地よい沈黙とでも呼ぶべきものが流れていた。


 十分ほどしたのち、ルミナがアパートから出てきた。


「どうだった?」

 ミオの問いに、ルミナは満面の笑みで頷く。


「はい、母もとても喜んでいました。それもこれも、お二人のおかげです。本当、ありがとうございます」

 深々と頭を下げるルミナ。


「なに、大したことはない。仲間だからな」

 俺は偉そうに言う。


「仲間・・・・・・ですか?」

「そうよ。ルミナちゃんも今やグレートパーティの立派なメンバーなんだから。頼っていいなだからね」

 胸を張るミオ。


 そんな俺たちを見て、ルミナは言う。


「でも・・・・・・あたし、皆さんのお役に立てるか分かりませんよ?」

「そんなの気にすることはないわよ。いい?仲間、ていうのは役に立つとか立たないとか、そんな損得抜きの関係なのよ」

「は、はあ・・・・・・そうですか」

 ルミナは今ひとつピンとこない様子だ。


「まあ、クエストをこなすだけが役に立つってことじゃないからな。戦闘が苦手でも、ソフィアとアルカディア荘で食事の仕度とかしてサポートしてくれるのも、立派なメンバーの仕事だよ」

 俺は言う。


「そういえば、ルミナちゃんの報酬の取り分とかも、一旦みんなで話し合った方がいいかもね」

「そうだな。じゃ、帰りますか」

 俺たちはアルカディア荘へと帰還する。



 結果的にというか当然というか、報酬の取り分に関しては、ルミナにも均等に分配するということで、即座に決まった。満場一致、即断即決だった。


「えー、本当にいいんですか……?」


 ルミナは恐縮しきりだった。そりゃ、他のメンバーに比べたら、戦闘能力はゼロに等しいみたいだから、そう思うのも無理はないかもしれないが。


 だが、これが俺たちの方針だ。仲間にすると決めたら、こういうことで分け隔てはしない。


 これでめでたくルミナも正式にパーティメンバーになった、ということでいいだろう。


 しかし、パーティメンバーも随分と増えたな。グレートパーティの家計は大丈夫なのだろうか。俺ももっと高額クエストを受注して稼がないといけないな。

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