第95話 後始末クエスト
俺たちは、カチカチに凍ったアメーバの身体を調べる。
「これ、結構巨大ね。【保管庫】にひとまず入れておいて、持ち帰ってから調べてもいいんじゃないかな?」
ミオの言葉に、セレスティーヌもアリスも首肯する。
「そうだな。それじゃ【保管庫】っと」
俺はアメーバ=ゲルディスガーディアンを
【保管庫】に入れる。
「とりあえず、ギルドに帰ろうか?」
「そうね」
【瞬間移動】を発動させて、ギルドに帰る。
「みなさん、見事なお手柄でしたね」
ギルドに帰り、ゲルディスガーディアンを解体・調査室に持っていき、その旨を伝えにアリエスさんの所へと行ったら、開口一番そう言われた。
「どういうことですか?」
俺は訊く。
「ボスモンスターを倒しましたでしょ?」
「あ、はい。まあ・・・・・・」
俺たちは頷く。
「そのボスモンスター――名前はゲルディスガーディアンでしたっけ?――を倒したことにより、パグラス国ダンジョン内のモンスターが一斉に機能を停止したとの報告が先ほどありました」
「そうなんですか?」
てか、それは驚きだな。そもそもダンジョンってそういう仕組みだったの?
「うーん、各ダンジョンによってまちまちですが、少なくてもパグラスダンジョンにおいてはそういう風になっていたみたいですね」
俺は隣にいるセレスティーヌに訊く。
「セレスティーヌは知っていたのか?ゲルディスガーディアンを倒せば、あのダンジョン内のモンスターも皆動かなくなるって」
セレスティーヌはゆっくりとかぶりを振る。
「ううん。パグラスダンジョンがそうだとは知らなかったわね」
アリエスさんは俺たちを見ながら話を進める。
「それで、グレートパーティの皆さん。せっかくですので、もう一つ依頼を発注してもよろしいでしょうか?」
「はいはい、なんでしょうか?」
アリエスさんは、パグラスダンジョンにまつわるクエストの説明を始める。
ゲルディスガーディアン討伐の翌日。
「さあ、今日もクエスト頑張っていきましょう!・・・・・・といっても、今日はレイにお任せすることになりそうだけれどね」
いつものミオのかけ声も、少しだけ今日はトーンが違う。
「まあ、仕方ないんじゃない?今日はレイくんの魔力無限ステータスをとことん利用させてもらうということで」
久々にクエスト参加となったソフィアは、そう言う。
「いや、だったら他のクエスト――それこそリーティアダンジョンのでも、ダンジョンクエスト以外のでも受注すればいいんじゃないか?わざわざ俺についてこなくても」
「うーん。でも正直、レイくん抜きでクエストこなせるか、ちょっと不安だなあ。【ディミディア】での魔力無限供給、わたしに至っては【創造術】での弾丸無限供給まで、レイくんに頼りっぱなしなんだし」
とアリスは言う。
「結局さ、私たちレイに頼りっぱなしになっているのよね。魔力使い放題なんて、どうしようもないくらいにチートだし」
セレスティーヌがそう締めくくる。
「それじゃ、始めるぞ」
俺は最初のクエスト目標であるダンジョンの一室に足を踏み入れる。
昨日アリエスさんから、パグラスダンジョン攻略達成のついでに頼まれた依頼――ダンジョン爆破解体クエストを開始する俺たち。
このダンジョンのモンスターたちは、どうもゲルディスガーディアンから生命力とでも呼ぶべきものを皆供給されていたようで、奴がくたばった途端、モンスターたちは皆死に絶えてしまった。
ということで、俺たちがその後始末をさせられることになったのだ。
「う~、モンスターの死体とか一杯あるのかな~」
アリスがげんなりといった様子で呟く。
「アリスは死体とか苦手なのか?」
「うん。てか、苦手じゃない人なんているの?」
少なくとも俺は苦手ではないかな。リーティアダンジョンに行けなくなってからは停止しているが、早朝からダンジョン清掃クエストをしていたわけだし。
「私も大丈夫な方かな。ミオちゃんは?」
とセレスティーヌがミオに尋ねる。
「え?私は全然平気!小さい頃から、小型の低レベルモンスターとかは、バッサバッサとなぎ倒していたし!」
「おお・・・・・・」
俺は思わず唸ってしまう。やはりミオは豪胆というか、女傑というか。
「ソフィアちゃんは?」
アリスが今度はソフィアに訊く。
「わたしはミオちゃんと同じね。というか、食材として狩ったモンスターを捌いたりしないといけないから、そんなの気にしていたらきりがないわね」
「む~、それじゃ、わたしだけなの?」
アリスが面白くなさそうに俺たちを見回す。
「まあまあ、アリス。ぱっと見たところ、ダンジョン内にはモンスターの死体は見当たらないぞ」
俺は【千里眼】を発動させて、ダンジョンをざっと一望しながら言う。
「えー、本当?」
「ああ。恐らく、ゲルディスガーディアンを倒して生命力の供給がストップすると同時に、モンスターたちはその身体ごと消滅したみたいだな」
「やった・・・・・・」
アリスは軽く喜ぶ。
「いや、そうも喜んでばかりはいられないぞ・・・・・・。死体がないってことは、つまりそこから採取出来る素材とかアイテムもない、てことだからな」
「あ、そっか・・・・・・」
ソフィアが誰よりもがっかりとした表情になり、肩を落とす。そんなにモンスターから採れる食材が楽しみだったのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます