第66話 今日もクエスト

「今日もクエスト頑張ろうー!そして、今日こそ魔神水発見よ!」

 ミオの威勢のいいかけ声と共に、早朝からダンジョンへと潜る俺たちグレートパーティ。


「ちょっと待ってちょっと待ってミオちゃん」

「ん?どうしたの、セレスティーヌちゃん」

 ミオは不思議そうにセレスティーヌを見る。


「あのさ、闇雲に探すだけは、不毛だと思うの。それでさ、昨日ちょっと作戦というか、ダンジョン攻略のための計画を立ててきたの?見てもらえるかしら?」

「えー、そうなの?そりゃもう是非!」

 ハイテンションなまま、ミオはセレスティーヌの出してきた「作戦立案書」を受け取る。


 それは、昨晩セレスティーヌと俺の二人で作ったものだった。


 迷路の様なダンジョン。その中でも、探索が進んでいるものとそうでないものがある。ダンジョンガイドには、どのエリアがどれくらい探索されているか、一目で分かる地図が掲載されている。


 それで、探索の進展がはかばかしくないエリアを中心に巡りながら、ダンジョン攻略をしていこうと計画をしたのだ。そのついでに、魔神水を探せば良い。


 ダンジョンクエストはその性質上、運送のような時間制限など特に設けられていない。そもそも未だ分からないことだらけのダンジョン、ぶっちゃけ依頼主たちも「出てくれば儲けもの」ぐらいの気持ちでしかクエストを発注していないらしい。


「ふーん・・・・・・なるほどねえ。確かに、これなら効率良くいけるかもね」

「だろう?これなら、色々とお宝も見つかるかもしれないしな」

「ソフィアちゃんはどう思う?」

 ミオが、ソフィアに話を振る。


「え?より良い食材が手に入るのなら、おーけーよ」

 やっぱりそう言うと思った。


「ということで、行くか」

「改めて、行くわよー!」

 ミオのかけ声と共に、今日もダンジョン探索が始まる。 




「この部屋が、まだほとんど探索されていないみたいね」

 地図を覗きながらソフィアが確認する。


「そうだな」

 俺は【千里眼】を展開しながら、

「でもここには魔神水はないみたいだな」

「そうなの?でも、何がしかの収穫はあるんじゃないかな」


 俺はだだっ広い空間を見回す。


 他の場所とさした違いもない、石造りの床に壁。何らかの魔法なのか、天井が明るく輝いていて室内全体を照らしていること以外は、殺風景そのものの光景だ。


「ここって、何もないみたいね」

 ミオが退屈そうにする。


「いや待て。本当に何もない、てことあるのかな?普通に考えりゃ、モンスターの一匹や二匹住み着いていてもおかしくないはずだが」

 だが、どんなに目をこらしても、モンスターの一匹もいなかった。


「うーん・・・・・・ここって何かヘンじゃない?違和感があるというか・・・・・・」

 ミオは首をかしげる。それから、不意に背中の剣を抜き出し、「えい、【破光斬】!」と突如壁に向けて攻撃を繰り出す。


「ミオ、大丈夫か?そんないきなり剣技を披露して」

「あ、ごめんなさい。何かアクションを起こせば、仕掛けとか発動しないかなー、て」

「んな簡単にいくかよ」


 だが、そのときゴゴゴゴゴ、という音が響き始めた。


 ガラガラという音とともに、ミオが攻撃した付近の石壁が動き出す。ものの一分ほどで、壁のあった場所には小さな空間が出来ていた。


「あ、宝箱よ!」

 セレスティーヌが声をあげる。


 壁から突如出現した空間には、確かに「宝箱」と呼ぶ以外にないものがあった。


「まじかよ・・・・・・」

 手を伸ばそうとする俺に、後ろからセレスティーヌが注意してくる。


「レイ、気をつけて。宝箱に擬態している、トラップ系モンスターかもしれないから」

「お、おう。そうだな」

 俺は【解析術】で宝箱を見る。大丈夫だ。鉄と木で出来た、何の変哲もない宝箱だ

った。


「それでは、いただくとしますか」


 俺が宝箱を持ち上げた瞬間、ゴオンゴオンという不穏な音が室内に響いた。

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