第65話 珍しく勉強
アルカディア荘に帰って、夕食も終わる。
俺は、自分の部屋に戻らずに台所に隣接するリビングのソファに居座り、ダンジョンガイドを読む。
最近ミオも住むようになったので色々と片付けたりして、内部をだいぶ変えた。
アパート内で一番広い一階台所横の空間は、特に変化が大きかった。ソファなども置いて、リビングみたいにしたのだ。
で、そこでちょっと勉強。どうしても、自分の部屋だと集中出来ない。正直、ダンジョンについてもっと知らなきゃなと感じたのだ。で、まずはダンジョンガイドを読むところから始めることにした。
三十分ほど読んだところで、声がかかる。
「あれ?レイ。どしたの、一人でリビングに座って」
見ると、パジャマ姿のセレスティーヌがそこにあった。お風呂上がりで、濡れそぼった髪と、上気してほんのりとピンク色に染まる頬がやたらと魅力的だ。
「別に・・・・・・ちょっとダンジョンについて知っておきたいと思ってな」
心の動揺を悟られまいと、俺はダンジョンガイドに目を落とす。
「ふーん・・・・・・」
セレスティーヌはどさりとソファの俺の隣に腰掛ける。
「・・・・・・なんだよ?」
そんな近くに座られたら、集中できねえだろ。
「いや、ちょっと意外だな、て。レイがそんな何かを学ぶなんて」
「・・・・・・悪いかよ」
ぶっきらぼうに答える俺に、セレスティーヌは微笑む。
「まあまあ。ただ、レイが今更学ぶことなんてあるのかなー、てちょっと気になっただけ」
「そりゃ、ダンジョンのことにせよ何にせよ、知らないことは沢山あるからな」
「うーん・・・・・・成る程ね。でも、レイはどんな魔法でも使えるじゃない。それも魔力の消費は一切無しにね」
なのに、わざわざ勉強する必要あるのかな?セレスティーヌは、素朴に疑問だという風に首をかしげる。
「いや・・・・・・それはあるだろ。別に、能力は無尽蔵にあっても、肝心な知識はないしさ」
「んー、そんなものかな」
セレスティーヌはソファに深く身を沈める。
俺はその様子を横目に、ダンジョンガイドを読み進める。
十五分ほどして、不意に横から声をかけられる。
「問題。現在、閉鎖が完了したダンジョンの数と、その国はどこでしょう」
「え?どうしたんだいったい・・・・・・」
セレスティーヌの突然の言葉に、俺は困惑する。
「いや、せっかくだしちょっとレイの勉強の面倒でも見てあげようかなー、てさ。私、そのガイドブックなら全部覚えているし」
「本当か?じゃあ、逆に俺の方から問題出すぞ・・・・・・」
「いいわよ、かかってきなさい」
こうして夜の時間は過ぎていく。
ちなみに、俺がガイドブックを読みながら出題したダンジョンに関する問題は、セレスティーヌに全問正解された。大したものだ。
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