第48話 ドラゴンとの戦い

 俺たちが立てた作戦はこうだ。


 まず、俺が【透明化】でドラゴンに近づく。奴に気付かれずに側に近づき、【解析術】を発動、その弱点を見つける。


 続いて、魔法使いのセレスティーヌが陽動開始する。音やら光やらが派手な魔法で、ドラゴンの気をそらす。


 それから、俺とミオが攻撃開始。発見される弱点の部位によって対応はまちまちだが、なるべくミオがとどめを刺せるように俺が取り計らう。せっかくだし、初クエストではひとつくらいは手柄をあげて、良い気持ちで終わらせてみたいものだ。


 作戦、というには簡素ではあるがこんなものでよかろう。



 【透明化】で姿を消した俺たちは、ドラゴンの近くへと寄る。


 食事が終わった後なのか、奴は悠々と眠っていた。


「さーて、あいつを仕留めるぞ・・・・・・」

 俺は抜き足差し足忍び足、奴との距離を一歩ずつ縮めていく。


 セレスティーヌとミオは後方で一時待機だ。


「よし、このままいけば【解析術】発動の範囲内に行けるはず・・・・・・ん?」

 俺はふと違和感に気付く。ドラゴン耳がいまピクリと動いたような・・・・・・気のせいかな?


 一歩、二歩、三歩と慎重に歩いていく。


 ・・・・・・気のせいじゃないぞ。ドラゴンが目覚めやがった。


「え?おい、どういうことだ!?」


 驚愕する俺。恐ろしいことに、眠りから覚めた前方のドラゴンのその頭は、しっかりと俺の方を向いている。


「シュピィィィィィンッ!!!」

「うわっ、【防御壁】!!」


 奴の頭部から放たれた極太レーザーを、俺はすんでの所で防御する。


 だが強力なレーザーの前に、とっさに展開した【防御壁】は、じりじりと熱で溶け始める。


「くそ、駄目なのか!?仕方ない、【瞬間移動】!!」


 こうしてあえなく撤退することになり、俺たちの計画は脆くも崩れ去った。



「うーん・・・・・・」

 セレスティーヌとミオ、俺の三人は頭を突き合わせて、考え込む。


「そもそも、なんでレイが近づいてるのバレたのかな?【透明化】していたよね?」

 ミオが至極当然の疑問を口にする。


「恐らく、あいつは聴覚の器官がずば抜けて発達しているのでしょうね」

 セレスティーヌが自分の考えを述べる。


「【透明化】していても、ちょっとした足音や呼吸で敵の位置を把握するのでしょうね」

「でも、じゃあ打つ手なしってこと?いやだよ、そんなの。マロンちゃんは救えないで依頼は失敗だし、もう散々じゃん」

 ミオがこぼす。


「そうだよなあ・・・・・・」

 俺はぼーっと、己の魔法一覧を眺めながら思考を巡らす。なんか良い方法ないのかねえ。


 ふと、魔法一覧の中の一つの魔法に目がとまった。


「・・・・・・あ、これいけるかも」

「え、何々?」

 俺は二人の前に、自分の魔法一覧を表示して、今見つけた魔法を指し示す。


「ちょっとシンプルすぎない?」

 セレスティーヌは効果があるのか、疑問だという風に首をかしげる。


「いや、こうなったら小手先の作戦は効かないだろう。シンプル過ぎる方法での突破を狙った方がいいかもしれないぞ」

「ミオちゃんはどう思う?」

「そうねえ・・・・・・特にこれといった対案を私は思いつけないし、やってみていいんじゃないかな?」

「了解。それでは、早速始めましょう」

「ああ、今度こそぶっ潰してやるぜ」


 俺は【千里眼】を発動して、作戦を実行し始める。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る