第23話 魔法学院襲撃

 ガキィィィンッ!!


 鋭い衝撃と共に、全身を弾き飛ばされる衝撃。

「痛ってててて・・・・・・」


 地面に投げ出された俺。


 何が起こったんだ?


 俺は顔を上げる。目の前にはパルシア魔法学院の巨大な校門、その奥にはそびえ立つ校舎があった。


「とりあえず【ヒール】」

 身体のあちこちに出来た打撲傷が癒えていく。


「それから・・・・・・【解析術】」

 俺は【解析術】でパルシア魔法学院を解析する。


「なるほどね・・・・・・」

 怒りに我を忘れて、こういう事態を想定していなかったな。


 パルシア魔法学院全体に、巨大な防御結界が張られていた。そのため、学院に直接【瞬間移動】しようとした俺は、結界に弾き飛ばされたのだ。


「ふむふむ。上級魔法の結界みたいだな。さしずめ、ルディがやったのかねえ」


 まずはこの結界を破らないといけないな。魔法一覧を確認すると、超上級魔法【幻魔神の結界破り】なるものがあった。なんでも、神属性の魔法とかで、いかなる結界も破ることが出来るらしい。


 さて。結界自体は大した問題ではないが、どう攻めていくかだ。


 俺は五分ほど案を練った後、行動に移す。



――【千里眼】発動――



 【瞬間移動】を使い、胃の中に限界まで水を送り込むという魔法拷問器具のチェックを終えたあと、雷魔法で性器に電流を流すという拷問器具のチェックをルディは始めた。


「イッヒッヒ。セレスティーヌよ、どの拷問器具でキミの人生最期の瞬間を彩ろうかねえ・・・・・・」

 下卑た笑いをして、鼻歌交じりに器具の準備を進めるルディ。


 そのとき、ズズンッという地響きがして、ルディの身体が揺れた。それから数秒後、今度はドッゴォーンという轟音が、ルディの部屋にまで伝わってきた。

「ん?なんだいったい?」


 ルディは手を止めて、部屋を出る。


 廊下の端っこから、黒き鎧の部下が慌てたように走ってきた。

「た、大変です!ルディさま」

「なんかあったのか?」


 部下は息も絶え絶えといった感じで言葉を継ぐ。

「何者かが、襲撃してきました!」


 ルディの顔がみるみる紅潮してくる。次の瞬間、彼は部下を怒鳴り散らしていた。

「なんだと!!警備をどうした!?お前たちに警備を命じていたはずだ!!」

「そ、それが・・・・・・」


 慌てて説明しようとする部下を突き飛ばし、ルディは廊下を駆ける。


 廊下から出て、学園が一望出来るバルコニーへ行くルディ。

「こ、これは・・・・・・」

 そこに繰り広げられる光景を目にして絶句するルディ。


 学園の方々から、爆炎が上がっていた。ドォン、ドォンという爆音と共に、その炎の数は増えていく。


 だが、ルディを驚かせたのはそれらの爆炎ではなかった。そんなものではなく、学園の上空を悠々と羽ばたく、巨大なドラゴンの姿がルディを震撼させた。


 その“ドラゴン”は、全身が逆巻く火焔によって構成されていた。というより、意思を持った炎が大量に集まり、ドラゴンの姿をなしたと表現するのが正しいだろう。


 ドラゴンは己の身体のあちこちから、火球を放つ。そのどれか一つが命中するたびに、学園内の建物が炎を噴き上げてガラガラと崩れる。


「そんなバカな・・・・・・これは大魔道士などの一部のエリートクラスにしか使えないはずの、超上級魔法の中の超上級魔法・・・・・・」


 ルディは総毛立った。一体何が起こっているのだ?


 見ると、黒い鎧を身にまとったルディの部下たちは、鎧を飛行モードにして漆黒の翼をはためかせながら、炎の巨大なドラゴンに果敢に応戦している。

「行け、お前たち!!」

「はっ!!」


 だが、レベルが違い過ぎた。いくら奴らが防御力を強化しているといっても、この超上級魔法中の超上級魔法の前ではなしのつぶてだった。ドラゴンの尾の一振りで、ルディの部下たちは、その鎧もろとも炎の中で蒸発した。


「ひぃぃぃっ・・・・・・!!」

 目の前で強力な部下たちが、なすすべもなく倒されたのを見て、ルディは恐ろしさのあまりに声をあげて、逃げるようにセレスティーヌのいる院長室へと向かう。



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