第22話 スラック商店にて
再び、ギルドに入る。目指すはスラック商店だ。
店主のガゼルさんは、先ほどと同様にそこにいた。
俺は「ザルノスのローブ&杖セット」を【保管庫】から取り出し、平身低頭お願いした。
「すみません!ガゼルさん、先ほど買ったザルノスのローブ&杖セット、お返ししたいです!」
ガゼルさんは怪訝な顔をする。
「ああん?うちは基本的に返品は受け付けていないんだが」
「お願いします!どうしても、です。その代わり、同じくらいの値段の武器を頂けませんか?」
「ん?ああ、つまり返品じゃなくて、他の品物との交換、てことか?」
「お願いします!今すぐ必要なんです。大切な仲間の命がかかっているんです!」
お願いします、お願いします、お願いします・・・・・・俺は何度も頭を下げる。
「坊主、顔を上げな」
ガゼルさんはそう言うと、俺の手から「ザルノスのローブ&杖セット」を取り上げる。
「いかなる事情があったのか、詮索はしない。それがこのギルド内で商売をする者の鉄則だ。きちんと支払いさえあれば、黙って品物を売る。俺たちの役目はただそれだけだ」
だがな、とガゼルさんは続ける。
「そうは言っても、こちらに人間らしい情がないわけじゃねえ。俺だって、昔は数々の冒険を仲間と共にやってきたもんだ」
そう言いながら、ガゼルさんは大剣を取り出した。俺の背丈くらいはあろうか、とにかくデカい大剣だ。
ガゼルさんはその大剣を軽々と持ち上げると、俺の前に差し出す。
「ほらよ。すまんが、ザルノスのローブ&杖セットと同じ五十万リルドの武器といえば、これしかない。これでもいいのなら、交換を受け付けてやろう」
俺はガゼルさんの顔を見る。灰色の狼顔の中に光る、金色の眼は少しだけ柔らかくなっていた。
「ありがとうございます!ありがとうございます!ガゼルさん、恩に着ます!」
俺は何度もお礼を言う。
「いや、大したことじゃねえよ。しかしお前、本当にその大剣でいいのか?それ、かなり重いぞ?」
「あ、それなら多分大丈夫です」
俺は差し出された大剣を掴む。ひょいと片手で持ち上げることが出来た。女神様にもらった【武器全種の達人】が、こんなところで活かされるとはな。
「おお。お前、見かけによらず力持ちなんだな。んじゃ、それでいいな」
「はい。ガゼルさん、本当にありがとうございます!」
俺は深々と頭を下げる。
「いいってことよ。それと、こいつがその大剣の説明書だ」
ガゼルさんが紙切れを渡してくれる。
「それじゃ、行ってこい」
「はい、行ってきます」
ガゼルさんの暖かい言葉を背に、俺はスラック商店を後にする。
俺は早足で歩きながら、大剣の説明書を読む。
「魔聖大剣ディアボロス・鏡紋残月型
魔聖竜・ディアブロの牙から作られた魔聖大剣シリーズに新型が登場!!今回のタイプは、従来のそれとは比べものにならないほどの高性能です!特筆すべき改良点は、魔力共振によりあなたの発動する魔法を何倍にも増幅する魔力鏡を、その内部に多数搭載していることです。これであなたの戦闘力も大幅にアップ!!!」
なるほど。とりあえずどういうものかは分かった。俺は魔聖大剣ディアボロスを背負う。
ギルドから出て、即座に【瞬間移動】を発動。俺はパルシア魔法学院へと転移する。さあ、殴り込みだ討ち入りだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます