魔力無限の異世界生活!
いおにあ
第1話 プロローグ
「まことに言いにくいことなのですが・・・・・・あなたはお亡くなりになりました」
美しい女性からそう告げられた。何の脈絡も無く。
「あ、そうそう。まずは自己紹介から。私は転生女神・テレスと申す者です。以後お見知りおきを。といっても多分、お会いするのはこれっきりでしょうが」
転生女神?なんだそりゃ?
「まず、再度告げますが、あなたはお亡くなりになりました。大変不幸な、唐突な死に方でした。お悔やみ申し上げます」
お悔やみって、死んだ当人にかける言葉なのか?
「そこで今回、あなたには特別に異世界転生をすることが認められました。どうします?異世界転生、選びますか?」
「選ばなかったらどうなる?」
「あなたの記憶は一端リセットされます。そして、魂は再構成されて次の世界へと送られます」
「選んだら?」
「その場合、記憶はもとのままとなります。今のあなたの人格はそのままで、もう一度、異世界での新しい生活を送ることが出来ます」
なるほど。ことのあらましは分かった。だが、どちらがいいかねえ。
「女神さんよ、あんたとしてはどちらがおすすめなんだ?その異世界転生とやらをするのとしないのでは」
「うーん、原則上は人の判断に影響を及ぼすようなことは言ってはいけないのだけれど・・・・・・ま、いっか。異世界転生の方を強く薦めます」
「その理由は?」
女神さまは微かに顔を曇らせて答える。
「最近、異世界転生を選んでくれる人が減っているのよねえ。このまま減り続けると、私たち異世界転生機構もそのうち解散、なんてことになりかねないし・・・・・・」
「異世界転生機構?」
耳慣れない単語に首をかしげる俺。
「うん。まあなんていうか、異世界転生の諸々をお世話する組織よ」
「そんなのがあったのか・・・・・・」
「ええ、まあね。異世界転生と言っても、前世で不幸な死に方をした人とか、そういう人を優先的に選んでいたのだけれどね」
なるほど。
「それで、もう決まったかしら?転生しますか?しませんか?」
「いや、まだだな。あんたたちにとっては、異世界転生が望ましい選択だというのはよく分かった。だが、俺には何かメリットがあるのか?そこのところを聞いておかないとな」
「もちろんよ。ほいっ」
女神テレスは手にしていたステッキを一振りする。途端、眼前にグラフやらなんやらの映像が浮かび上がる。
「異世界転生後のあなたのステータスは、最大限、希望に沿うように調整します。外見もある程度はお好みのものに出来るけれど、どうかしら?」
俺はステータスバーの項目を一つ一つ確認していく。賢さや武器を扱う力、などなど。
なるほとね。つまりは、次の世界では希望通りの能力が手に入る、というわけだ。
ステータスの一覧に目を通しながら、俺は疑問を口にする。
「この魔力値、ていうのは何だ?」
「それはね、今度転生予定の世界は魔法があるのよ。だから、その魔法を使うときに消費する値ね。魔力値とかマジックポイントとか、呼び名はまちまちだけれど」
「へえ・・・・・・」
「どう?とりあえず、そのステータス上げておく?」
「あ、はい。お願いします」
「りょーかい」
女神テレスは、指先を器用に動かしてステータスを調整し始める。
「ここをこうして、それからここを・・・・・・あら?これはどういうことかしら?」
彼女は怪訝な顔で一人呟く。
「どうかしましたか?」
「何かの間違いかしら。魔力値が無制限になっているわね・・・・・・」
「というと?」
「まあ、端的に言えばあなたの魔力値は一切減らない、てことかしら。つまり魔法が無限に使える、てこと」
「まじ!?」
「ええ。どうしましょうかねえ。そうね・・・・・・えい!」
彼女はステータスバーに片手を突っ込む。
「なにしたんですか?」
「恐らく、何かのミスなんでしょうけれど・・・・・・せっかく魔力値が無限なのだから、全属性・全魔法の使用を解除しておいたわ」
「え?本当ですか?」
「もちろん本当よ。良かったわね。次の世界は、魔法が何かと役に立つところだから。すぐに英雄よ」
「やったー!ありがとうございます、女神テレスさま・・・・・・!!」
「いいってことよ。あ、でもちょっと待って、いいことばかりじゃないかも」
ステータスバーを覗き込みながら眉を潜める女神テレス。
「ごめんなさい。魔力値が無限の代わりに、財力がゼロになっている。つまり、次の世界では無一文からスタートすることになるわね」
「えー!そりゃないですよ~」
「これも何かのミスなんでしょうけれどね・・・・・・うーんでもまあいいじゃない。魔力値も無限で、全属性・全魔法が最初から使用可能なんだから。お金なんてすぐに稼げるわよ」
「だったらいいですけれど・・・・・・」
「そんな落ち込んだ顔しないの。ほら、他にも色々とステータス設定はあるから、次のもするわよ」
そう話しながら、俺と女神さまは転生先の世界でのステータスを設定し続ける。
「・・・・・・これで大体は終わったし、そろそろ転生するわよ」
「はーい」
転生の間と呼ばれる、中央に魔方陣のようなものが描かれている部屋へと入る。俺はその魔方陣の前へと立つ。
「それじゃ、気をつけていってらっしゃい。転生後は、とある王国の首都・王都に着くようにしているからね。あ、そうそう。転生前に、ステータスくじでも引いていくかしら?」
女神テレスは、細い棒が無数に入っている筒を俺に差し出す。
「何ですか、それは」
「ステータスにちょっとした特典を付与するくじよ。ハズレといったハズレは無いから、引いておいて損はないけれど。三本まで引けます」
「ほんじゃ、引いておきますか」
俺は筒から何気なく一本、二本、三本とくじを引く。
「お、一本目はどうやら当たりみたいね。【武器全種の達人】です。ということで、転生後の世界では全種類の武器を自在に使いこなせるようになりました~」
「本当ですか・・・・・・」
「ええ。おめでとうございます。ここまで良ステータスなら、もう恐いものはないでしょうね。無一文なんて最初だけ、お金なんてほいほいと稼げるはずよ。それじゃ、二本目は・・・・・・お、これは普通かな。特別能力【天界との通信及び召喚】よ」
「なんですかそれは」
「まあ簡単な話、いつでもどこでも私たち天界の女神とやりとりできる、てのがひとつ。何か困ったことがあったらすぐに相談なさい。私が出るかどうかは分からないけれど、誰か他の女神が基本的には出てくれるわよ。ま、愚痴くらいは聞いてあげるわよ。で、もうひとつは、困ったときには天界の住人を特別に召喚できますよー、というものです。あ、天界の住人って言うのは私たち女神も入ってますので、困ったなら遠慮無く呼び出してね。ただ、用事とかで必ずしもお望みの女神が出られないこともある、ていうのは通信の場合と同様てす」
「結構それってすごい能力じゃないですか・・・・・・?」
女神テレスは首をかしげながら言う。
「うーん、少なくともこのくじの中にはそこそこ多く入っているから、そこまで希少じゃないかな。ぶっちゃけ、あってもなくてもそこまで変わらないわよ。これまでの経験上、転生者はこの能力をほとんど使わない可能性大よ。私たちのサポートなんてなくても上手くやっていける人が多いからね。いや、多いって言えるほど最近転生者いないんだけれど、それは置いといて・・・・・・それじゃ、三つめね・・・・・・うん、これはまあ当たりかな」
「なんですか」
「【創造術】よ。自分が想像したものを、生き物以外なら何でも現実世界で創り出すことが出来ます」
「え、それもかなりすごい能力なんじゃ・・・・・・」
「うーん、まあ使いこなせれば、てとこですかね」
「というと?」
「この【創造術】で生み出せるものは、あなたの想像力にかかっているからね。想像力がたくましければ、結構あなたの強力な助けになるかもね」
「なるほど・・・・・・」
うーむ。俺、あまり想像力が豊かな方じゃないから、そこまでこの能力は役に立たないかもな。
「ま、ここまであればもう恐いものはないでしょう。それじゃ、いってらっしゃーい」
俺の視界は白い光に包まれる。女神さまの声に送り出されて、俺の転生が開始された。
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