彼女はオタク男

@tsuusan

第1話オタクの宿命

画面の中で、可愛い衣装に身を包み、歌って踊る…。

長い黒髪をなびかせ、彼女はウインクをした…。

彼女の名前は、加藤アイリ。

今、人気のアイドル。

アイリに魅了され、毎月のおこづかいは、

すべて、アイリ関連に使い込む学生の男…。

顔は、…の油ピカピカオタク男…平間ひろし。

アイリのライブDVDをパソコンで見ては、胸を弾ませる日々。

(あ~可愛いなぁ…アイリ~アイリ~。)

ひろしは学校へ行き、家に帰って来ては、アイリにクギズケになる…そんな日常だった。

学校での生活は、ひろしと会話をしてくれる人はいない。

会話の代わりに、女子達からの鋭い言葉が、ひろしに向かって飛んでくる…。

「きも。」

「こっち見るな、くさ。」

「いやだぁ~。」

ひろしは心の中で言い返す。

(別にお前たちに言われても平気だよ…俺にはアイリがいる。)

そうは思っても…、

鋭い言葉は、ひろしの耳を貫通して心にぶっ刺さる。

へこまされて家に帰るひろし。

アイリの姿を見ては、元気をとりもどしていた。

だが…。

見たくない、知りたくないニュースは不意にやってくる。

ひろしは珍しく、自宅の一階の茶の間でくつろいでいた。

いつもなら二階の自分の部屋で、アイリに夢中になっているのに…。

茶の間のテレビは、本当におせっかいな芸能ニュースを流した。

「人気アイドル加藤アイリさんと、マルチタレント桜庭ゆうまさんの熱愛が発覚しました。」

テレビから聞こえる声に、ひろしは動揺した。

(アイリが熱愛…男ができた…そんな…そんなぁ…。)

涙が溢れてくる…。

ひろしは自分の部屋に向かった。

部屋で崩れ落ちるひろし…。

彼は、心の中で自分達と会議をする。

(許せない…こんなに愛していたのに。)

(いやいや、芸能ニュースだ…本当かどうか。)

(俺はアイリを信じるよ、そんな女じゃない。)

会議は続く…。

(アイリのグッズなんか全部捨ててやる。)

(売って違うアイドル好きになれば?)

(さっきと一緒で。)

結局、アイリのグッズ全てを捨てる事にした…。

部屋からアイリのグッズがなくなったひろし…。

心の拠り所がなくなった。

(好きだったのに…本当に大好きだったのに…男なんか作りやがってぇぇ。)

アイリへの憎しみが増していく…。

そして相手の男にも…。

(お前がアイリに手をださなければ、こんな事にわぁぁ…うおぉー。)

どんどん憎しみが増していく。

ひろしはとうとう闇落ちした…。

(許さない…どうして…俺はこんなに不幸なんだ。)

いつの間にか夜になり、部屋は薄暗くなっていた。

その時…。

「我が望みを叶えてやろう。」

ひろしの前に突如現れた…。

黒いフード付きのマントに身を隠し、

恐ろしく鋭い目だけが見える…。

ひろしは腰を抜かし、驚いた顔で質問をする。

「うわわわ…な、なんですかあなたは?」

ひろしを恐ろしい目で見つづける…。

「我は大魔道師カナ・エール。」


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