10/2 Sun. 内炭朱里の多難――前編
隔週日曜はシノブちゃんの予定次第でメイク教室を開くことになってる。参加費は無料。ただし俺がお供え物を用意しないといけない。
今回もフルーツケーキにしたかったんだけど、それがちょっと無理になった。
文化祭まで残り1週間。今日くらいしか男装および女装の方向性を確認することができない。なので日曜にリハーサル的みたいなことをしようって昨日の勉強会の最中に油野が提案しやがったんだよね。そのせいで突発的に知り合いの参加者全員が油野家に勢揃いすることになった。
碓氷・上条。油野姉弟。浅井・天野。大畑・大岡。水谷・川辺。牧野・相山。以上の計6組。急な提案なのに全員が集まるとか暇人の集まりかよ。
当然、勉強会に参加してた内炭さんもこの話は知ってる。けどネタコン出場者でもないのに「私も参加していいかな?」と言えるほどの度胸はまだない。
ついでに言えば、俺や油野が気を回したとこでネタコン出場者じゃない以上は『あれ? なんで内炭さんがいるの?』って空気は絶対に生まれる。内炭さんもそれに気付いてるから俺に目配せすらしなかった。
けどさ。それってなんかむかつくじゃんか。碓氷くんにこの件を解決するのは無理だよーって言われてるようなもんだしさ。
よって生贄を用意した。そう、新人奴隷の吉田くんである。
「明日さー、油野家にネタコン出場者が集まることになったんだけどさー、グループの中だと吉田くんだけまたハブることになっちゃう訳よー。けどやっぱ王国の主としてはそれってどうなんだろーって思うんだよねー。だから来ないかね?」
二つ返事だったね。感謝までされたね。それを内炭さんに伝えたらこれまた感謝されたね。生贄を用意っていう一手で2つの恩を売るとか手口がリフィスっぽくね?
それはともかくとして、フルーツケーキは優姫に内緒で練習をしてるから見せたくなかったりする。男のプライドとかいう不燃ごみのせいだよ。悪いかよ。
てかさ。優姫と川辺さんは男装しないんだから来なくてよくない? そんなこと口にしたらどうなるか分かったもんじゃないから言わないけどさ。
とにかくそのせいで久々にスフレチーズケーキを作ることになった。正しくはスフレフロマージュってやつな。
なんか途中から楽しくなっちゃったせいで6ホールも手掛けちゃったね。こんなにケーキを生産したのはビューティフルムーン以来じゃねーかな。フルーツケーキは多くて日に3ホールしか作らんし。
両親の朝メシとして出したら2ピースずつ食べてくれたから悪くない味のはずだ。5ホールの持ち運びはさすがに面倒だからオトンに車を出して貰ったが、油野家の冷蔵庫にそんな空きはないから保冷バッグに入れたままリビングダイニングに放置。
「食後のデザートにするから食うなよ?」
油野と佳乃さんが凝視してたから一応は警告した。
6号のサイズだから8等分でいいと思うが、スイーツ好きとか男子からすると小さすぎるし、6等分で切る予定なんだよね。
そうなると5ホール=30ピース。油野家6人+ゲスト12人だからおかわりできる人とできない人が生まれるし、こういうのはフェアにいかないとね。
「シノブちゃん、これ、ウチで食べたやつの余り」
俺の朝メシは普通にトーストだったから6等分の2ピースが余ってる。これも献上品ってことで1つお願いしますよ。ぐへへ。
「あらまあ。相変わらず気が利くわねぇ。じゃあ先にいただいちゃおうかしら」
このハゲは2ピースあるならそれを3等分して6人で分けるなんて考えを持ったりしない。そのことをよく知る佳乃さんと紀紗ちゃんがハゲに襲い掛かった。
仲の良い親子ですね。それじゃあ俺は駅まで参加者を回収しにいきますね。
って感じで一旦は家に戻り、優姫と一緒に南安城駅まで行こうとしたら既に相山家に牧野がいた。恐ろしい。
水谷さん、川辺さん、内炭さんの3人は川辺ママの車で来るらしいから駅に集まるのは基本的に8組のやつらになる。上条先輩は1人で勝手にいくだろ。
という訳でチキンレースの開催です。待ち合わせの10時までまだ20分もある。まさかデートでもないのにこんなに早く来てるやつはおりゃんだろー。
いましたね。しかも2人ね。大畑くんと吉田くんだ。どの辺に住んでるかは知らんけど、まあ浅井はいないと思ってたよ。むしろあいつは遅刻するんじゃねーかな。
行き先が油野家だから天野さんはそこそこ早く来ると思うし、大岡さんはそれに合わせて一緒に来ると思う。ってことで、
「おはよーさん」
かなり早い段階でこっちに気付いてたくせに、2人とも挨拶しようとしないもんでこっちから言ってやったわ。これから世話になる相手なんだから礼儀を尽くせよ。
って思ったのに返事すらしてこない。女子2人も挨拶をしない。えっ、なにこれ。
「こうして見た目の良い女子を2人も侍らせて堂々と歩かれてみると、やっぱ碓氷って学校だと擬態してるんだなって強く感じちゃうな」
吉田くんが訳の分からんことを言った。
「どうもー。見た目の良い女子です。今日はよろしくねー」
牧野は完璧な作り笑顔で応じてみせた。一方の優姫は、
「ふっ。まっきー、調子に乗れるのは今だけだよ。油野家には美人がいっぱいいるんだからね。あたしらなんか空気になるよ。エアだよ。エアJKだよ」
全力で卑屈になってる。まあ、気持ちは分からんでもないけどね。
しかし驚かされる。陽キャって自己紹介なしで世間話をやっていけるんだな。ものの数分で牧野と吉田くんはちょっと踏み込んだ話までし始めちゃったよ。
他方の優姫と大畑くんは初対面だから話をしようとしない。かと言って俺に話し掛けもしない。俺と話したらもう片方が寂しい思いをするって分かってるからだ。それゆえに3人とも無言でスマホをいじり始めた。なんか陰キャっぽいね。
「やあ」
えー、なんか来たんですけど。
「飛白先輩!」
話し相手を得るために優姫が食い付いてくれた。これは嬉しい誤算だ。
一応は上級生かつ生徒会長だからみんなが一言ずつ挨拶して、無事に余りものとなった俺と大畑くんで世間話を始める。
残り10分ってとこで天野さんと大岡さんが合流。この2人は上条先輩と俺に挨拶をしてから、びっくりすることに牧野・吉田ペアの会話に割り込んでいった。
人が増えるたびに情勢がちょっとずつ変わってくのが面白いな。
このグループで言えば、男女比が変わったことでまず吉田くんが最下層に転落。
モデルの天野さんが最上層に君臨し、大岡さんが天野さんをヨイショする前に牧野がカットイン。私服もおしゃれだねーって褒めることで天野さんの興味を引き、大岡さんの太鼓を奪ってしまった。
大岡さんとしては天野さんを褒められて悪くない気分。けど、なんか違うな―って感じで佇んでる。その少しだけ落ち込んだ感じの彼女を吉田くんがフォローしたがってるが、ハイカーストの会話をぶった切る訳にいかずに立ち竦んでる感じ。
「どう思う?」
大畑くんにインタビューしてみる。
「碓氷がいなかったら俺が吉田の立ち位置にいそうだなーって思って見てた」
「そうだな。たぶんその場合は大岡さんと吉田くんが会話を始めるんだと思う」
これってどういう理屈なんだろ。一番下だけ発言権がないって感じなのかな。
「てかしゃべれないやつってその場から離れちゃいかんの?」
発言権がないのにその場に留まるのって合理的じゃないんだけど。
「ダメなんじゃねえかな。上のやつが話してるのにどっかに行くってことは、そいつの話に興味がないって意思表示をするようなもんだろ?」
「ケンカを吹っ掛けるようなもんってことか。めんどくせえな」
「本当にな」
「ちなみに浅井が来たらどう変化すると思う?」
「変化って。全員が揃うから油野の家に向かうんじゃないのか?」
「それは誰の音頭で?」
「そりゃあ碓氷だろ」
「じゃあ俺が何も言わずにスマホをいじってたらどうなる?」
「……恐いことを言うなよ」
ほう。大畑くんが俺を促す可能性を示唆してくれないのか。
となると、合理厨の上条先輩が俺に声を掛けるか、プール掃除の時みたいに優姫が自己紹介がてらに俺を焚きつけるかってパターンのどっちかになるとは思うが。
「試していい?」
「勘弁してくれよ」
本当に嫌そうな顔をされちゃったから諦めるしかないな。陽キャに対する立ち回りの勉強をしたかったんだけどね。
そして9時59分に浅井が姿を見せ、
「おー、お前ら早いなー」
「きみが遅いんだ」
「惜しい。あと1分遅かったら連絡なしで出発してたのになぁ」
上条先輩と俺の言葉で撃沈した。じゃあ油野家に行くべさ。
そして着いたら着いたらで見逃してた問題に気付いた。
内炭さん、1人だけ正座しちゃってるよ。美人が多すぎるもんね。川辺さんが下から2番目になりそうなくらいの狂った現場だからなぁ。
幼馴染の上条先輩や既に来たことのある大畑くんと大岡さんは平気みたいだけど、天野さんはガチガチだ。牧野も大人しくしてる。浅井でさえだんまりだ。
ほんと、この『空気を読む』ってなんなんだろな。好き勝手に話せばいいのに。リフィマ勢の連中だけならこんな感じにはならんのにねぇ。
「おかみさん」
紀紗ちゃんがマイペースな感じでとてとて歩いてきた。背後から「おかみ?」って聞こえたけどスルー。
「どうした?」
「ハゲがケーキくれなかった」
卓上の皿を見るに夫婦で食ったらしいね。子供に厳しい親どもだな。
「先に俺の分を食べていいよ」
「え。おかみさんは食べないの?」
とか言いつつ嬉しそうな顔をしちゃってる。
「俺は食おうと思えばいつでも食えるし、味見もしたからね。だからいいよ」
「やった。さすがおかみさん。ハゲとは違う」
やったぜ。ケーキ1つで将来のふさふさが約束されたぞ。
「おかみくん。私は?」
今度は佳乃さんが破壊力抜群の上目遣いをしてきた。
ああ、これってめんどくさいスイッチを押しちゃった感じか。皆川副部長的な、あの子は良いのになんで私はダメなの? みたいなやつ。
失敗したわ。こうなっちゃうともう打つ手は1個しかない気がする。
「もう先に食っちゃうか。自己紹介とかも兼ねて」
という訳で最初にケーキを食うっていうよく分からんムーブになった。
油野ママと俺で切り分けていって、各人に提供していく。まあ、広義で言えば同じ釜の飯を食うようなもんだし、これはこれで悪くないか。
「碓氷くん、これ美味しいよ!」
牧野が寄ってきた。と思ったら優姫が引っ張っていった。いいぞ、その調子だ。
ここでも早速って感じでグループが出来上がってる。なのに内炭さんは1人で隅っこにいってケーキを食べてた。胸が痛くなる光景ですね。
今はこの空間に18人いるが、内炭さんが遠慮なく話せる相手は俺、優姫、川辺さんの3人しかおらず、話したことがあるって関係で言っても、宿理先輩、上条先輩、紀紗ちゃん、水谷さん、油野、天野さん、大岡さんに絞られる。
俺以外の全員がもうグループを作っちゃってるもんなぁ。川辺さんはこういうのに疎いと思うし、優姫は牧野の飼い主をやってるし、消去法でいきますかね。
「ケーキどうよ」
内炭さんの隣に腰を落ち着けた。内炭さんはチラッとこっちを見て、
「美味しいわ。こっちに来て大丈夫なの?」
「それはどういう意味で?」
「今回の集まりの中心って碓氷くんでしょ? なのに私なんかに構っていいのかなっていう単純な疑問なんだけど」
「かっこつけたことを言ってもいい?」
「笑ってもいいなら」
言うね。
「友達と話したいと思った。それだけだよ」
宣言と違って内炭さんは笑わなかった。
「思ったよりかっこよくないわね」
こいつ。笑われた方がマシだったわ。
「来て後悔してんのかなーって思ってね」
「それはないわよ」
「じゃあどれがあるんだよ」
「んー、やっぱ場違いなのかなって」
はしゃぐ陽キャどもを内炭さんは遠いものかのように眺めてる。
「なんか嫉妬しちゃうのよね」
嫉妬。嫉妬? 油野の隣にいる水谷さんにか? なんか違うような。
「碓氷くんの話」
「俺?」
「ここにいるのはみんな碓氷くんとしっかりとした繋がりがあるでしょ?」
油野ママと佳乃さんはそれほどじゃないけど。
「でも私はよく考えると碓氷くんだけじゃないかなって」
「川辺さんと優姫もいるじゃん」
「……怒らないで聞いてくれる?」
「あの2人が内炭さんと仲良くするのは俺との関係があるからって言うなら怒るかもしれんけど」
単純な論理的思考だ。なぜ俺が怒るのか。いま挙げた2人に対する侮辱をするからだ。ではどんな侮辱をするか。それこそ俺に関係するものだろ。ってね。
「じゃあ。怒られちゃうわね」
ふむ。どうやら今日はネガ炭さんのようだ。どうしたもんかな。
「ごめんなさい。困らせちゃってるわよね」
「困ってはいないな。迷ってるだけで」
「何を?」
「情けは人の為ならずって言葉があるじゃん」
「七五調のやつ?」
内炭さんが言ったのは正しい意味の方だ。
情けは人の、為ならず、巡り巡って、己がため。七・五・七・五の一句。
「いや、誤用の方だね」
「って言うと、情けを掛けるとその人のためにならないってやつ?」
「それ。俺って内炭さんに手を貸しすぎなのかなって思ってね」
「……めんどくさくなってきた?」
まじでネガ炭さんだな。
「俺が手を貸すから内炭さんが自分の成果を自分のものだって思えないんじゃないかなってね。個人的には内炭さんってよくできてると思うし。上から目線っぽく聞こえてたら悪いけどさ」
「嫌味には聞こえないわね」
「ならいいけど。ぶっちゃけなんで内炭さんがへこんでんのか分からんのだわ」
「んー」
迷ってんね。気にせず言っちゃいなよ。
「今日のことを蒼紫に話したらね。いいなあ。俺も行きたいけど。まあ、碓氷さんに迷惑を掛けるなよって言われたのよ」
「別に来ても構わんかったけど」
「そう言うと思ったから迷ったんだけどね」
内炭さんは苦笑した。
「蒼紫はこう言ったのよ。『お前はいいよな。碓氷さんにフォローして貰えて。俺も行きたいけど、お前に言っても決定権を持ってねえし、碓氷さんに迷惑を掛けちゃうから諦めないとな。お前もせいぜい迷惑を掛けずに大人しくしてろよ』って」
曲解にしか思えんけど、言ったのが蒼紫ってなると否定もしにくい。そう読み解けるのも事実だしな。
ただ、そういうことなら言えることもある。
「実はさっき駅で待ち合わせをしてる時に面白いものを見たんだ」
「面白いもの?」
「最初に到着してたのは大畑くんと吉田くんだった。あのシノブちゃんの横にいるのが大畑くんで、大岡さんの隣にいるのが吉田くん。8組の男子の中だと浅井、吉田くん、大畑くんの順で立場が大きい訳だが」
「うん」
「俺らと合流するまで2人で仲良く話してたのに。牧野が吉田くんと話し始めたら俺と優姫と大畑くんが3人揃ってスマホをいじり始めた」
「えぇ」
「これは俺の予想になるが、牧野が先手を取って吉田くんと距離を縮めたのは、その段階で最もハイカーストっぽいのが吉田くんだったからだ。自分の主導権を確保するための行動だな。俺と優姫は元から繋がりがあるから別枠として、牧野は瞬時に大畑くんの存在を切り捨てたんだよな。話す必要がないって感じで」
「本当にすごいメンタルをしてるわよね」
頷く。それが事実だとしても、行動に出ることができるのは素直にすごいと思う。
「次に来たのが上条先輩。もしも上条先輩が俺に話し掛けたら、優姫に話し相手がいなくなるもんで、焦ったあいつは自分から上条先輩に寄っていった。それで余った俺と大畑くんで話し始めた訳だが、そろそろ言いたいことが分かるか?」
「んん?」
「じゃあ続き。次に来たのは天野さんと大岡さん。2人は俺と上条先輩に挨拶をした後、牧野に絡みにいった。たぶんその場にいた1年女子の中のカースト1位は誰かを分からせるためにな。なのに牧野が積極的に褒めるから天野さんも気をよくしちゃってね。その2人で話し始めた。牧野に相手をされなくなった吉田くんはだんまり。自分以上に上手く天野さんを褒めるから大岡さんもだんまりって感じ」
「あぁ……」
分かったらしい。
「実はみんな私と一緒ってこと?」
「そういうこと」
端的に言えば、自分に自信がないんだ。
だから自分より下の立場のやつを作ろうとする。
だから自分と対等に話せるやつを確保しようとする。
「牧野なんか特に顕著だよな。とにかくその場の強者っぽいやつに媚を売る」
さっきわざわざケーキの感想を言ってきたのもそうだ。屋外の俺はただの陰キャに過ぎないが、この状況における俺はシノブちゃんの次くらいにハイカーストだし。
「場所が場所だけに分かりやすい。ここに来たことのないやつは特に思ってるんじゃねーかな。自分がここに来て本当に良かったのかなって」
「あー」
「吉田くんは内炭さんと同じで特別枠。しかも油野と面識すらないからこの中で最も肩身が狭いのは彼だと思う」
「言われてみればそうかも」
「牧野が必死に仲間を作ってたのも、上条先輩や俺が強い言葉を1つ使うだけで縮こまるしかなくなるからだな。油野家で味方をしてくれる人もおらんし」
特に上条先輩を警戒してのことじゃないかな。
「天野さんだって自分の実力でモデルになれた訳じゃないって理解してるから今もガチガチに緊張してるし、大岡さんと大畑くんも憧れのシノブちゃんの指導を受けられることに恐縮しきっちゃってるし、優姫は過去のことがあるからな」
要するにだ。
「内炭さんは油野に相談をされるくらい頼られてる。優姫と川辺さんにも俺のことで頼られてる。きっと吉田くんにも感謝されてる。この中だと中堅以上の立ち位置にいると思うんだよな。だから卑屈になる理由なんかまったくない」
「そっか」
俺らの視線の先ではおかわりの権利を賭けてジャンケン大会を開こうとしてる。
「内炭さんもいっておいで」
「んー、これ、美味しいけど。私が参加しなければ他の誰かが得するでしょ?」
「それはどうだろ」
俺は指を差した。ジャンケンで何を出すか必死に考えてる油野のやつを。
「油野が負けて。内炭さんが勝ったら半分こしてやりな」
「っ! 碓氷くん! 本当に悪知恵が働くわね!」
「そう褒めるな。とにかく今は他人の得じゃなくて自分と油野の得を考えな」
「そうね。そうしてみようかしら」
やっと笑った。ポジ炭さんの誕生だ。
「あっ、でも2人とも勝っちゃったらどうするの?」
すぐネガるね。
「油野家の人物が負けてたらその人と半分こ。仲良くしたい相手がいてもそれな。あとはこんなに食べられないからって言って油野に半分を分けてもいいんじゃね。普通にあげようとすると遠慮すると思うからな」
「それもいいわね!」
「不参加扱いされる前にいってきな」
「うん!」
遠ざかってく背中に手をひらひら振って見送ってやる。
学力はある。思考力もある。配慮もできる。弱者の痛みも知ってる。内炭さんに足りないのは自信と胸囲と美貌くらいだと思うんだけどねえ。
どれだけ変われるか分からんけど。せっかくだしな。いっちょ試してみますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます