9/26 Mon. 内炭朱里の受難

 文化祭まで2週間。


 思えば10月10日はスポーツの日。3年前までは体育の日って呼ばれてたが、とにかく文化祭をスポーツの日にやるってのも乙なものだね。学生の本分は学業! って全力で唱えてる感がある。


 まあ、日程の都合上、ハッピーマンデーを利用したって話だと思うけどね。


 ところで、今は昼休みになったとこだが、今日は朝からざわついてる。8組だけじゃなく、学年全体で、もしかしたら学校中でざわざわしてる。


 恋人になって欲しい人コンテスト。通称、恋コンの自薦と他薦の受け付けが始まったからだ。


 エントリーは簡単。指定のメールアドレスに名前を書いて送るだけ。非常に雑。


 だから宿理先輩の名前が100回送信されることも普通にあると思うが、この時点では票としてカウントしない。それをやるのは来週の頭からだ。


 そして水谷さんから聞いてたベストカップルコンテストは想像してたものと少し違った。正しくは、ベストカップリングコンテスト。最良のカップルの選出ではなく、理想のカップリングを選出って形だ。これが実に恐ろしい。


 だって成立してしまうんだ。油野X浅井という組み合わせが。


 ただしこっちは恋コンと違って無記名でのエントリーができない。推しカプの合意も必要だ。いじめや嫌がらせの元になっちゃうからかもね。源田氏も一応はその辺の配慮ができたってことだな。


 生徒間での略称がネタコンになっちゃってるから、ガチのカップルで出場するのは厳しいかもね。はてさて、どんなカップリングが成立するのやら。


 という訳で技術科棟へGO。ランチを食べにいざゆかん。


 その話し声に気付いたのは技術科棟の1階でスリッパを履き替えた時だった。


「あんた、何様のつもりなの?」


 聞き覚えのない声。怒ってるというよりは呆れてるって感じだった。


「それな。釣り合ってないって自覚がねえの? ウケるんだけど」


 男子もいるらしい。


杏奈あんな、油野くんのことが中学の時からずっと好きだったのに」


 おっと。杏奈ちゃん、油野くんのことが好きなんだってよ。誰か知らんけど。本当に油野はトラブルメイカーだな。


「てかさー。お前みたいなやつがくっ付いてたら油野の評判が下がるって分かんねえのかな? 油野も杏奈も可哀想なんだけど。その辺、どう思ってんの?」


 浮ついた心が一瞬で消し飛んだ。俺はスマホの録音アプリを起動するなり階段を駆け上っていく。


 階段の踊り場にいたのは女子3人と男子2人。男女2人ずつで壁際で俯いてる女子を取り囲んでる形だ。スリッパを見る限り、囲んでる側は全員2年だと分かる。


 唐突な闖入者に、上級生は揃って驚きを見せたが、ややイケメンの男子、略してややイケは俺に睨みを利かせて、


「なに見てんだ。さっさと行けよ」


 なるほど。2年だと碓氷って悪名を知ってはいても、立会演説の距離感だと顔をはっきりと見れる訳じゃないから、俺がその碓氷ってことが分からんのだな。


「上級生4人が1年生に詰め寄ってる。とても見過ごせる状況ではないですよ」


 俺の声をきっかけに内炭さんが顔を上げた。泣いてはないみたいだね。


「お前には関係ない話だ」


「それを判断するのはあなたではなく僕です」


「うぜえな、お前。大事な話をしてんだよ」


「人に聞かれたら困るような?」


「そうだ」


「杏奈って人が油野を好きだって話なら1階にいても聞こえましたけど」


 ビクッとした方のやや可愛い系女子が杏奈ちゃんか。えー、この子はこの子で釣り合ってないじゃん。油野がシベリアンハスキーならこの子はパグだよ。


「他にも色々と聞こえましたけど。人に聞かれたら困るような話をあの声量で行うのはいかがなものかと。自分はバカですって自己紹介しているのと変わりませんよ?」


 ややイケの表情が露骨に変化した。怒っちゃってるよ。せっかく助言してあげてるのにね。まあ、ついでにもう1つだけアドバイスしておこうか。


「てかさー。お前みたいなやつがくっ付いてたら杏奈の評判が下がるって分かんねえのかな? 油野も杏奈も可哀想なんだけど。その辺、どう思ってんの?」


 こいつが投げたブーメランをそのまま返してやっただけなのに。男2人が詰め寄ってきたわ。これは殴られるパターンかな?


 仕方ないね。原因は俺だからね。せいぜい教頭を上手く使ってみよう。


「待って!」


 驚いた。止めに入ったのは内炭さんじゃない。パグだ。


「あ? なんで止めんだよ」


「思い出したの」


 パグは声を震わせて言った。


「その子、碓氷くんだよ」


 ショックだなー。みんなしてバイ菌を見るような目をしないでくれよー。


「こいつがあのサラちゃんなのか」


 ぶち転がすぞこの野郎。ったく、宿理先輩め、余計なことを言ってくれたなぁ。


「はい、こんにちは。1年8組の碓氷才良です」


 俺は上級生を1人ずつ順番に一瞥して、


「ちょっと自慢していいですか?」


 戸惑ってるね。そりゃあ急にこんなことを言われたら戸惑うよね。


「僕、油野と10年以上の付き合いがあるんですよね。宿理先輩ともですけど」


 ややイケじゃない方の男子は宿理先輩に気があるのかな。目が泳いだけど。


「金曜日もね。油野がちょっと話したいってことでウチに来たんですよ。そこの内炭さんも僕と同じ部活なんで別件で来てたんですけど」


 パグの顔色が悪くなる一方だな。どうでもいいけど。


「油野が妹さんを連れてきたこともあって昼メシの材料が心許なかったから、油野と内炭さんに買い出しをお願いしたんですよ。僕は他にやることがあったし、適材適所ってことでね。けどそれが失敗だったってことかな?」


 ややイケを睥睨してやる。相手はもう及び腰だ。


「自分はバカですって人達がバカな勘違いをする可能性を考慮してませんでしたわ」


 次はパグを見遣る。即座で目を逸らされた。傷付いちゃうね。


「この件は油野に報告しないとなぁ」


 逸らした目を戻してきやがった。


「そんな。やめてよ」


「あなたには関係のない話です」


 さっきややイケに投げられたボールをパグの顔面にぶつけてやった。


「これは僕の失態です。僕はこう見えて正直者なので、自分のミスはちゃんと報告しなきゃ気が済まないんですよ。すみませんね?」


 諦めな。この論理を崩すのは上条先輩でも困難だと思うぞ。


「いや、お前は悪くないだろ。悪いのは、その、オレらだ」


 ややイケが素直に非を認めてくれた。素晴らしいね。けど、


「それを判断するのはあなたではなく僕です」


 内炭さんの頬が引きつった。セリフの使い回しが気に入りませんでしたかね。


「そもそもですがね」


 俺は溜息を吐き、当然のことを教えてやる。


「油野が誰と一緒にいるのかを判断するのは油野本人です。外野が喧しいことを言うもんじゃない。それで人が離れていったらそれこそ油野が可哀想だ。油野のことを本当に思ってるのなら、あいつの気持ちを尊重してやってください。お願いします」


 深々と頭を下げてみる。全員が息を呑んだのが分かった。


「という訳で、もうその子を連れてっていいですかね?」


「あ、あぁ」


 ややイケは毒気を抜かれたような感じで頷いた。チョロいな。上手が急に下手に出ると困るよね。これ、リフィスがよくやるんだ。


「ほら、いくぞ」


 そんなことしなくていいのに、内炭さんは先輩方に一礼して階段に足を掛けた。


 無言のままで部室の前まで行き、内炭さんが開錠してドアをスライドする。それぞれが自分の席につき、


「ありがと」


 ふむ。


「俺の失態だって言ったじゃん。こっちこそ悪かったね」


 頬を膨らまされたわ。似合わないね。


「悪くないわよ。あの時間は私にとって掛け替えのないものだったんだから」


 ならいいけどね。とにかくリュックから弁当箱とほうじ茶を取らねば。


「ねぇ」


 矢継ぎ早に来るなぁ。必需品を長机に出すまで待ちなさい。


「どうした?」


「油野くんに言っちゃうの?」


「そりゃあ正直者だからね」


「そしたら次がなくない?」


「あんな目に遭ってもまだ夢を見たいと申すか」


「んー、さっきのは別にそこまで嫌じゃなかったというか」


「は?」


「えっと。困ってはいたのよ。だから助けてくれて嬉しかったのは事実なの」


「なのに嫌じゃなかったと?」


「だって少女漫画のヒロインみたいな感じだったじゃない!」


 あー。あー? まあ、そうだけどさ。けどきみヒロインじゃないじゃん。モブじゃん、モブ。モブ炭さんじゃん。夢を見るのは勝手だけどさぁ。


 けどまあ、いいか。正直、ちょっと嬉しくはある。強くなったよね、この子。


「じゃあ油野に言うか言わないかの選択肢を内炭さんにやるわ」


「なら言わないでちょうだい」


「俺は別にいいけどさ。内炭さんってまだまだ読みが甘いよね」


「どういうこと?」


「目を閉じてください」


 こういうこと。


「エチュード。圭介くんと朱里さん、油野の本音編」


「っ!」


 内炭さんが慌てて瞼を落とした。


「内炭、碓氷から聞いたんだがな」


「う、うん……」


 急にぶっこんだ俺も俺だけど、乗る方も乗る方だよな。


「他人の言葉なんか気にしなくていい。次に何かを言われたら、俺に言うように伝えるか、それが無理なら、俺をその場に呼んでくれ。お前に迷惑を掛けたくない」


「別に。迷惑だなんて……」


「そういう遠慮は無しだ。俺はお前と対等な立場でいたい」


「油野くん……」


 内炭さんが瞼を上げた。満たされたような、穏やかな表情だね。


「今のやり取りって確率で言えば何%くらいで再現されるの?」


 放たれた言葉は願望に塗れてるけどな。


「内容だけで言えば9割は超えるんじゃね」


「そんなに高いの? 対等な立場。是非とも言われてみたいものだわ」


「そこは確度の高い部分だと思うね」


「え。そうなの?」


「リフィマの休憩中に聞いたんだけどさ。あいつ、宿理先輩の立会演説でショックを受けてたみたいなんだわ」


「宿理先輩のって。あの碓氷くんに対する恨み節みたいな?」


「それ。あのかまってちゃんのやつな」


「くわしく」


 それはいいんだけどさ。


「先にメシを食いませんか」


「くわしく」


 こいつもBOTなのかよ。とりあえず無視して弁当箱の蓋を開けてみる。


 おっと。赤玉も森もございませぬ。よって、


「はい、今日はここまで」


「くわしく!」


 くどいね。取引材料がないんだから素直に諦めてくれよ。


「俺と久保田って宿理先輩から1歩退いてるとこがあるんだけどさ」


「あー、なんか分かるかも。みんなでお祭りに行った時も宿理先輩と手を繋ぐのを拒んでたものね」


「それを言うならここに初めて連れてきた時もそうだな。背後から殴られて、逃げようとしたら肩を掴まれて、それでも逃げようとしたら脅されて、なんやかんやで一緒に来たやつ」


「懐かしいわね。ちょうど3か月くらい前になるのかしら」


「だな。その逃げた理由なんだけど。まあ、宿理先輩と一緒にいると視線がね。なんであんなやつと一緒にいるんだって目を向けられる訳よ」


「なるほど。さっきの私みたいなことに発展するのね」


「男の世界はもっとバイオレンスだけどな。俺が録音癖を付けたのもそれが原因だしさ。って切るの忘れてたわ」


 スマホをいじりいじり。


「……さっきのも録音してたの?」


「ああいうやつらってこっちが訴えでても、そんなことやってない、言ってないのないない尽くしで主張してくるからな。俺が初めて宿理先輩の件で校舎裏に呼び出された時もそうだったわ」


「……碓氷くんも大変なのね」


「けどこっちとしては『あんたのせいで!』って言えない訳で。だから自衛としての録音と、本人から距離をなるべく取ることにしてんだけど」


 ちょっとやりすぎたかなって思ってる。


「宿理先輩は何も悪くないもんな。なのにずっと一緒に遊んできたやつがよく分からん理由で離れていったら、そりゃあ悲しいよな」


「そういえば、最近はクラスメイトも一緒にランチしてくれないって言ってたわね」


「やどりん教徒の圧が強いんだろな。場合によっては俺らみたいに裏で脅されたりしてるのかもしれんし。かと言って宿理先輩から特定の子を誘うと、その子が今度は何かのターゲットになるかもしれんからな。推薦人が急に逃げたって話も本当のとこはSNSじゃなくてそっちが原因なのかもしれんし」


「難しいところよね」


「今のは全部かもかもかもって話だけどね。とはいえ否定できる根拠がないのがな」


 ふと閃いた。俺はミニハンバーグを口に入れ、白米をかっ込む。そんで腕組みをしながらもぐもぐしてみる。これ、考え事してるっぽくね? こんな感じでメシを食っていこう。


「そういう小細工いらないから」


 なんでバレたんや。


「碓氷くんって思考の瞬発力が高いから長考って滅多にしないでしょ?」


 そんなことはないと思うけど。今の内容で長考は確かに不自然かもな。


 つっても腹が減ってたら思考の流れも悪くなるし。手のジェスチャーで内炭さんも食べるように促す。


 そのままウィンナーの塩茹でと玉子焼きも片付けて、ほうじ茶をゴクゴクした。


「それで、さっきの話って油野も同じなんだわ」


 内炭さんはもぐもぐしてる。くわしく! って目で言ってる。


「油野を初めて連れてきた時も言ってたじゃん。一緒に食う相手がいないって。ちょっと偏見が入るけど、やっぱ女子の方がそういうのって多いんだよな。俺もよく絡まれたし、そのたびにどれほどの涙が流れたことか」


 ジト目ですよ。その涙はお前のじゃないだろって目ですよ。


「まあそんなんだから。油野に今日の件を言えば内炭さんを説得しようとするんじゃないかね。あいつにとっては内炭さんも貴重な話し相手の1人なんだから」


 にやにやするか、もぐもぐするか。どっちかにしなさい。


「とにかく油野姉弟とこれからも付き合ってくなら色々と覚悟はいるな。恋コンで今以上に人気が高まるかもしれんし。そういう意味だと水谷さんや川辺さんもそうなんだけどね。あの華々しい連中の傍に俺らがいるのってやっぱ不自然だしさ」


 内炭さんはごくんと喉を動かして、


「どう見ても出る杭だものね」


 宿理先輩の方はもう手を打ってあるけど、油野の方はどうしようかな。男の子なんだからしっかりしなさいって突き放しても構わんのだが。


「どうした?」


 なんか内炭さんがもじもじしてる。


「お買い物デートの話をちょっとしたいなって思って」


 そういうのは女子でやって欲しいところだが、川辺さん相手に油野の話をするのも勇気がいると思うし。仕方あるまい。


「お望み通りの反応ができるかは分からんぜ」


「大丈夫! 聞いてくれるだけで私は楽しめるから!」


 じゃあメシを食おう。聞いてるようで聞いてないラジオくらいの感覚でいこう。


「実は道を間違えちゃって」


「は?」


 玄関を出て左にずっとまっすぐ行って大通りに出たら見える。事実上の一直線なのにどうやったら道を間違えることができるんだ。


「ちょっとテンパっちゃって。玄関を出て右に行こうとしちゃってね」


「内炭さん」


「急になんでしょうか」


「お箸を持つ方が右。お茶碗を持つ方が左だよ」


「……そんな幼稚園児を相手にするみたいに言わなくても」


 皮肉に対しても笑顔で応じてくれる。きょわい。


「それでね。油野くんが私の腕をこうね。ぐいって掴んでね。内炭、そっちじゃないぞって。もう! すっごくどきどきしちゃって! 男子ってやっぱ力があるなあ! って! 意外と強引なとこもあるんだなあ! って!」


「そういや文化祭で作るものってちゃんと決めてきた?」


「……碓氷くん」


 ごめんて。けどやっぱ無理。口から砂糖が出る。


「これを聞くのって俺の担当じゃないと思うんだよな。優姫にしなよ」


「優姫ちゃんに言ったら愛しのカドくんで再現しようとするかもしれないけど?」


「続きをどうぞ」


 メシを食おう。何を聞かされてもメシを食おう。


「道路を歩く時も車道側にいってくれてね。最初のミスで恥ずかしくなって黙ってたら『今日は「ねぇ」って言わないのか?』って! 私のこと分かってるなって思っちゃって! そんなに私とお話をしたいのかな! って! ねえ! どう思う!?」


 ほうれん草の胡麻和えが美味しいと思います。


「だから言ったの! ねぇ、って! そうしたら碓氷くんみたいに言うの! どうした? って! しかもなんかちょっと嬉しそうにしてるの! もう! 可愛い! 油野くんもあんな顔するんだ! って! 私! 超テンションが上がっちゃって! ついついいつもみたいに、私! 油野くんのことが好きなんだけど! って言いそうになっちゃって! ほんっと焦ったんだから!」


 言っちゃえばよかったのに。


「そんな感じで話してたらあっという間にスーパーに着いちゃってね。10分って短いなあって。光陰矢の如しってこういうことを言うのかなって」


 それを言うなら相対性理論だね。今もきっと内炭さんは30秒くらいしかしゃべってない感覚だと思うけど、俺はもう5分も聞いてる感覚だよ。つれえよ。


「スーパーの中でもね。将来、結婚したらこんな感じでお買い物をするのかなって。今はちょっと野菜が高いね。空梅雨が響いたのかなって感じで」


 てかこんな感じでハイテンションかつにやにやデレデレして、かつ顔を真っ赤にして親しげに話してたんなら、パグが勘違いをしても不思議じゃないよな。


 あっちからすれば羨ましくてしょうがないって感じだったろうよ。イラつきもするでしょうよ。ちょっとやりすぎたかなって後悔しちゃうわ。


「そういえばまいたけ先輩って本当に舞茸警察みたいなことをしてるのね」


 話を振らないで欲しいなぁ。聞き専希望。


「魔除けの舞茸をかごに入れてなかったのか?」


「すぐに入れたわよ。だから油野くんに向かって駆け寄ってきて、かごの中をチェックした時は笑顔でうんうん頷いてたわ。でもマッシュルームの缶詰を見つけた途端に目を鋭くしてね。麻薬捜査官みたいな感じで『これはなに?』って」


「邪教徒の証みたいなもんだからな」


「舞茸があるならコレはいらないんじゃないかなって」


 あのきのこ、バイト先の売上を下げようとしてんじゃねえよ。


「そこで上条先輩が助けてくれたの」


「それは本当に助けなのかって疑問がね。厄介者が増えただけじゃん」


 正しくは厄介者と厄介者のトレードに成功しただけ。


「上条先輩、帰り道に私が聞きたかったことを代わりに聞いてくれたりしたから私の中では天使なのだけど」


 ダメだこいつ。洗脳されてやがる。


「もちろん! 碓氷くんも天使よ! 私に素敵なひと時を与えてくれたんだから!」


 あの悪魔と一緒にするんじゃないよ。


 それからも内炭さんは砂糖の生産に勤しみ、5限の予鈴が鳴るまで話は続いた。


 教室への復路の最中、俺は心の中で固く誓ったね。


 これ、次はねえな。


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