38. 葛藤
38. 葛藤
そのまま屋敷に入るとカトレアは目を輝かせてオレに言ってくる。
「ここがステラ様のお屋敷なんですね。すごく綺麗で、それに大きいです」
「ええ……まあ……」
「それになんだか落ち着きますね。お花の香りもしますし。こんな素敵な場所に住んでみたいです!」
そう言って彼女は満面の笑みを浮かべた。リリスに連れられて屋敷の中を案内していると、ある部屋の前で立ち止まった。
「ここがステラ様のお部屋です」
「あのリリスちょっと」
「なんですか?」
オレはカトレアに待ってもらってリリスを呼び出し小声で話す。
「待て待て。もしかしてカトレアはオレの部屋で寝泊まりするのか!?」
「はい。その通りですよ」
「その通りってお前……」
「違う部屋のほうが違和感ありませんか?それにステラ様のベッドは広いですし、エリック様が何もしなければ問題ないかと思いますが?」
問題は大ありだが確かに一理ある。すべてはオレ次第ということだな……。
「わー!すごいです!」
オレたちが話している間にカトレアは部屋の中に入っていた。
「もう入ってるじゃないか……」
「ふふっ。さすがカトレア様ですね」
その後、リリスからの説明を受けた後、夕食の時間になった。食事の準備ができるまでの間、カトレアは庭に出て花を見ているようだ。オレはそのままカトレアを呼びに行くことにする。
「ここはリリスが手入れしている花壇なのよ。何か気になる花でもあったかしら?カトレア」
「ステラ様。あの小さな白い花知ってますか?あれは『ホワイトドロップ』っていうんですよ。花言葉は小さな希望。」
「へぇそうなのね。よく知っているわね」
「私の名前もお花が由来なので少し興味があって勉強したんです」
カトレアも花の名前だもんな。名前の由来の花に興味があるのは当然だろう。
「あら?この花はなんて言うのかしら?」
「それは『ブルームーン』ですね。花言葉は奇跡的なめぐり逢いとか永遠の愛という意味なんですよ」
「そうなのね。じゃあこれはどうかしら?」
そう言ってオレは近くの花を指差す。
「それは『イエロークローバー』ですね。花言葉は約束された幸福。とてもロマンチックな花言葉ですよね」
「詳しいわね。勉強熱心なのね」
「いえ、たまたま知っていただけです。でも花言葉の意味を考えると素敵だと思いませんか?」
「そうね。確かにいい花言葉ばかりよね」
「ええ。だから私はこの名前が好きになりました」
「きっとその名前をつけたご両親も喜んでくれると思うわ」
「ありがとうございます。ステラ様」
そのあとも色々カトレアから花やその花言葉を色々聞いた。カトレアはすごく嬉しそうに話していて時間を忘れるくらい楽しかった。そんな会話をしていると、リリスがやってきて庭にテーブルや椅子などを用意し始める。そして準備が終わるとリリスがこちらにやってきた。
「あっ遅くなってごめんなさいリリス。カトレアが花が詳しくて思わず色々聞いてしまったわ」
「いえ。そんなに花壇を気に入ってくれたのですか?それなら、せっかくなので今日は暖かいですし、ここで夕食でもいいかと。今日は腕によりをかけて作りましたから楽しみにしててくださいね」
そう言いながらリリスは料理を取り分けて運んでくる。今日のメニューはパンとサラダとステーキだった。どれも美味しくてつい食べ過ぎてしまった。
「うぅ……苦しいですわ……」
「大丈夫ですかステラ様!?」
「ええ……なんとか……」
「ふふ。ステラ様家だとそんなになるまで食べるんですね?意外です」
カトレアは笑いながらそう言ってくる。どうもカトレアの前だと調子が狂ってしまう。オレはステラ=シルフィードになりきらなくてはいけないのに。そんな葛藤が頭を過るのだった
【極限の入れ替わり!?】ステラ様(偽)は逃げ切りたい!~突然貴族令嬢の代わりになったオレ。バレたら死ぬらしいので秘密裏に生き抜きます~ 夕姫 @yu-ki0707
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