15. 初めてのお出掛け
15. 初めてのお出掛け
オレはリリスにバッチリおめかしをされて馬車で王都の少し外れにある、待ち合わせ場所に向かう。カトレアが歩いていきますと言っていたが、馬車があるオレが向かったほうが早い。
「あのエリック様」
「なんだよ?」
「何かステラ様に伝言はございますか?今日で今生のお別れになるかもしれませんから」
「は?」
「エリック様が本能のまま行動して、カトレア様に男とバレるかもしれないですからね」
リリスはニコニコしながらオレを見てくる。本当にこいつオレで楽しんでるだろ?いやあのワガママ貴族令嬢の今までのストレス発散してるのか?いずれにしても性格悪いぞリリス。
あと勘違いしないでほしいんだが、できないだけだからな?男とバレる訳にいかないだけだから、決してオレが臆病とかそういうんじゃないぞ!
しばらく馬車を走らせると待ち合わせの小さな広場に着く。そこにはオレンジ色の髪の可愛らしい少女がベンチに座っていた。
「いましたねカトレア様。エリック様。気の効いた言葉くらい言ってくださいよ?」
「お前ってほんといい性格だよな……」
「ありがとうございます」
「褒めてねぇ……まぁ行ってくる」
オレは馬車を降りて、カトレアの元に向かう。カトレアもオレに気づいて笑顔で手を振ってくれる。なんだろう……なんかいつも以上に可愛いんだけど……リリスの言葉を思い出してハッとする。
「おはようございますステラ様」
「ええ。おはようカトレア。その……とても似合っていますわ」
「あ、ありがとうございます。ステラ様も素敵ですよ!」
お互いに顔を赤くしあう。そしてお互いの格好を見る。確かに似合っているとは思うけど……正直恥ずかしい……。オレは男だしな。少し複雑だが。
「あの本当に良かったんですか?王都の中央のほうがステラ様に合ったお店とかあると思いますけど……」
「構いませんわ。中央のお店は人混みが多いでしょうし、せっかくだからカトレアとゆっくり買い物したいもの。この辺りはカトレアが詳しいのでしょう?お任せするわ」
「わかりました!では行きましょう!」
すごく嬉しそうなカトレア。その姿はとても年頃の女の子って感じで微笑ましい。そんなことを思いながらオレ達は歩き出す。
大丈夫だ、落ち着けオレ。今までだってギルがクラスに来る前までカトレアと二人きりだったはずだ。何も特別なことなんてない。ただ買い物に行くだけなんだから。そう自分に言い聞かせる。
「この辺りはよく来るのかしら?」
「はい!ここはわたしのお気に入りの場所なんですよ。ほら、見て下さい」
カトレアは立ち止まって目の前の建物を指す。そこにはたくさんの女性用のアクセサリーが飾られていた。綺麗なものもあれば可愛いものもある。
「今日は髪留めを買いたくて、良かったらステラ様に選んでほしい……です」
「もちろん構わないけれど……いいの?」
「はい!お願いします!」
「わかったわ」
オレ達は店内に入り、色々と物色していく。ふむ……これはなかなか難しいな。どれを選んでもカトレアに似合いそうだ。いきなり難題が起きたのだが?
「ステラ様?」
「ごめんなさい。ちょっと考え事をしていたわ。どんなものが欲しいの?」
「あまり派手すぎないものがいいですね。あと目立たないものです」
「なるほど……」
オレはその条件に合う商品を探すために店内をウロウロしていると、一つの髪飾りに目が止まる。それは赤色の猫の形をしたシンプルな髪飾りだった。これならシンプルだし、目立たないだろう。可愛らしいし、なんかカトレアのイメージに合いそうだ。
「これなんかどうかしら?」
オレはカトレアにさっき見つけた髪飾りを渡す。
「わぁ猫ですか?可愛いです!」
「気に入ってくれたかしら?」
「はい!これにします!」
「そう。ならプレゼントさせて。いつも一緒にいてくれるお礼よ」
そう言ってオレはその髪留めを購入し、カトレアにプレゼントする。初めは申し訳なさそうにしていたが喜んでくれたので良かった。そのあとは喫茶店に入りお茶をしながら話をして過ごした。
そして夕方になり、そろそろ帰ろうかということになった時カトレアが突然オレに提案をしてくる。
「あのあの。ステラ様。良かったら……私の家に来ませんか?両親に紹介したいですし……その貴族のステラ様に失礼だとは思うんですけど……」
は?両親!?どういうことだ?いきなり顔合わせるのか!?カトレアって実は肉食系女子なのか!?
……そんなわけない。オレは今ステラ=シルフィードだしな。せっかくカトレアが誘ってくれたんだ断る理由もないだろ。オレは快く了承してカトレアの家に向かうことになった。
……別に変な意味じゃない。これはカトレアの親友、ステラ=シルフィードとして当たり前の行動だからな。
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