14. 着せ替え令嬢?

14. 着せ替え令嬢?




 豪華なシャンデリア、大人3人が余裕で横になれるほどの広いベッド、そして観葉植物や古びた本が何冊も並んでいる本棚。


「うーん……」


 オレはワガママ貴族令嬢の部屋で悩んでいた。そう、悩んでいるんだ!今までは「何でもいい」とやっていた事だが、今回は違う!ちゃんとした理由があるからこその悩みなんだ!


「何がそんなに悩ましいんですか?エリック様?」


「リリス!?お前ノックくらいしろよ!」


「何回もしましたが?気づかなかったのはあなたです。それでこんな朝早くからお休みなのに……何をお考えですか?」


「…………」


 どうしよう……。まさかコイツに相談する日が来るなんて思わなかったぜ……。でもこういうのはリリスのほうが年上だし、頼りになるかもしれない。このままでは何も解決にならないからな。オレは意を決してリリスに話すことにする。


「……実はな……今日は……その……出掛けるんだ」


「ああ。カトレア様とデートでしたか。それで着ていく物を悩んでいたと?」


「デート!?違うぞ!?出掛けるだけだ!昨日の帰りにカトレアに『ステラ様。明日一緒にお出掛けしませんか?』と誘われたから、心は跳び跳ねて喜ん……じゃなくて仕方なくだぞ!?これはステラ=シルフィードの為なんだ!あいつのイメージを下げないための任務なんだよ!決してやましいことなんか考えてないぞ!?」


「必死すぎですエリック様。まぁそこまで否定しなくても大丈夫ですよ。エリック様も思春期の男性ですからね。理解はしております」


「だからそういうんじゃねぇって言ってるだろ!」


 ったく、話が進まないじゃねぇか。でも女の子と出掛けることなんか今までなかったし。初めてがステラ=シルフィードとして女装ってのは悲しいが、これもオレが生き抜くためだ。仕方がない……それにせっかく誘ってくれたんだから楽しみたいだけだ。


「それでどんな服を選べばいいのか分からなくてな……。いつもは制服。家に戻れば適当にお前が決めた物を着てるし。せっかくなら少しくらいは……」


 そこまで発言するとリリスはニコニコしながらオレを見てくる。


「……なんだよ?」


「いえいえ。ただ可愛らしい所もあるのだと思って。では私の方でいくつか見繕いますので少々お待ちください」


「えっ?あっおい!」


 可愛らしいってなんだよ……オレは男だぞ?


 そう言うとリリスは部屋を出ていき、すぐに戻ってきた。そしていくつかの服を持ってくるとオレの前に広げる。


「こちらなどいかがでしょうか?色合いも落ち着いていて、大人っぽく見えると思いますよ?」


「そ、そうだな。確かに悪くはないけど……」


「ではこちらは?これだと普段の服装にも合わせやすいはずです」


「いや、待て!それスカート短くないか!?見えたらどうすんだよ!バレるだろ!?」


「気になさらず。むしろ見せてあげればいいんですよ」


「出来るわけないだろ!?バカなのか!?」


 その後も数着ほど試した。やはりこういう事は女性じゃないと分からないものなんだろう。


 結局オレは普段のイメージとは違うが、貴族令嬢らしく清楚系の物を選んだ。色は白を基調としていて、装飾もほとんど無いシンプルなものだった。しかしそれでも値段は高く、とてもではないが買えるものではない。


「とてもお似合いですエリック様」


「そっそうか?」


「はい。以前から用意しておいたのですがステラ様は『こんな地味なのは嫌!』と言って聞かなかったものですから。こうして素直に着てくれる人が居てくれて私も嬉しい限りです」


「あーなるほど。アイツなら言いそうだな」


「では次はお化粧ですね」


「……マジかよ」


 こいつ……オレで楽しんでないか?仕方ない。オレは観念したかのようにリリスに従う。もうここまで来たら乗りかかった船だ。最後までやってやるさ。

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