ゾンビを躾けてみたら、こんな結果になりました!
羽弦トリス
第1話出会いは突然に
中堅企業のサラリーマン、藤岡は仕事帰り公園のベンチで缶ハイボールを飲んでいた。
彼には、妻いや彼女もいない、独身の冴えない男だ。
今日は営業課で飲み会だったが断った。
歳は44歳であり、20代のノリには辟易していた。
時期は10月。
さすが、秋。朝夕はひんやりする。
隣が墓地だからか、一際、涼しいと言うか寒い。
基本は自炊しないので、スーパーで出来合いのおかずと更に弁当まで買い込み、明日の大口の営業が待っていた。
ま、門前払いだろうが。
藤岡は課長の前田が何度も係長昇進をプッシュして来たが、断った。
管理職になるには、まだまだ自信が無かったのだ。
藤岡はベンチで3本目を飲んでいるが、この公園も元々、墓地で幽霊を見たと言う噂が絶えない。
しかし、彼はそう言った、幽霊、未確認飛行物体と言った類の話しを信じる事はしない。
いるハズがない。
チーカマをかじり、ハイボールを飲んでいると、唸り声が聴こえる。
誰か、飲み過ぎてリバースでもしてるんだろ?と、思いながら辺りを見渡した。
すると、公園の砂場から手が出ている。
事件だ!
誰かに生き埋めにされたのかもしれない。
藤岡は砂場に近付いた。
腕が出ている。しかし、その腕は腐っており、悪臭漂う。
藤岡は腕を引っ張り、砂場から身体を引き摺り出した。
引き摺り出した、死体は、よく映画で見るゾンビの様だった。
ゾンビは突然、藤岡に襲いかかった。
「何しやがるんだ!ハロウィーンは来週だぞ!」
「……肉、肉~」
ゾンビは藤岡に掴みかかった。藤岡は、極真空手の有段者なので、すぐにゾンビはノックアウトされた。
手の込んだ、仮装だ。
「に、肉をくれ~」
「……?」
「400年、何も食べてないんだ。お前の肉をくれ~」
藤岡はしょうがなく、スーパーで買った、フライドチキンをそのゾンビに食わせた。
「い、生き返る~」
「お前、本当にゾンビか?」
「そうで、ゲス」
「弁当、食うか?」
「弁当?」
「え~と、昔の言葉なら行厨だ!」
「食べるでゲス」
ゾンビは、かきこむように弁当を食べ、ハイボールも飲んだ。
「旦那、この飲み物は人間の生き血より、うまかですばい」
「さっさと、家に帰んなよ。家族が心配してるぞ」
「それがし、実は400年前に暗殺され申した。名は栗原新之丞と申しますけん」
「僕は、藤岡卓也。あんた、ゾンビって証拠あるの?」
栗原と名乗るゾンビは首を胴体から外し手で持ち、
「旦那、信じていただけたかな?」
藤岡は、
「う、うん。信じるよ。でも、僕を食べないでね」
「藤岡殿は恩人でごわす。何かお礼をしたい
でごわす」
藤岡は、
「取り敢えず、風呂入ろうよ。あんた、臭いよ」
「分かり申した。では、湯浴みでも馳走になりやす」
「栗原さん、僕の後、付いてきて」
「御意」
藤岡が歩き出すと、
「肉、肉~」
と、襲いかかった。藤岡は振り向き様、頭を回し蹴りした。
首が吹っ飛んだ。吹っ飛んだ首は、
「もう、二度と藤岡殿を襲いません」
頭部のない胴体は、飛ばされた頭を拾いに行った。
取り敢えず、藤岡と栗原新之丞と並んで歩き始めた。
これが、出会いである。
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