第7話 「五感を表現する その3 手触り肌触りを書く」
第5回・第6回は「視覚」によるものですが、第7回は「触覚」によるものです。
手触り肌触りを小説に書く人は意外と少ないものです。
だからこそ、感触を丁寧に描くと文章の質がひとつ上がります。
ザラザラとサラサラ
濁点のありなしで感触は変わります。
「ザラザラ」は手触り肌触りが荒くて刺激を感じさせます。
普通はあまり好ましい刺激ではありません。サンドペーパーのように「皮膚を削るような」硬い感触だからです。
それに対して「サラサラ」は手触り肌触りが滑らかで引っかかりがありません。「皮膚を削らない」で柔らかな印象があります。絹のような手触り・肌触りで湿っていないものを指します。
手触り肌触りは感覚を刺激する度合いを表す
手触り肌触りは皮膚を削るような硬くザラザラとしたものから、皮膚を風が撫でるようなサラサラとしたものまであります。
押した感覚が神経を刺激すると、ザラザラと感じたり、サラサラと感じたりするのです。
ベトベト・ギトギトなど粘性の強い感触もあります。これはサラサラとの対比であり、油汚れのような感触を表現する擬音語です。
ツルツル・スベスベはザラザラとの対比であり、サラサラのように湿っていなくて引っかかりがない感触を表現する擬音語です。
擬音語に頼りすぎない
ここまで擬音語を見てきましたが、触感を書くとき単純に「擬音語」ひとつで済ませてしまうと文章力が向上しません。
もちろん触感をまったく書かないくらいなら、擬音語でもいいので触感を書くほうが表現のバリエーションが増えて得をします。
ですが、ある程度は状態を描写して擬音語なしで触感を表現できるに越したことはありません。
「ガスコンロにこびりついた油が埃を取り込んで粘り気を帯びている。」
単にべとべとと書けるものを、状態を描写することで「いかにもべとべとしている」感触を読み手に覚えさせるのが、ワンランク上の書き方です。
触感は熱感・温感・冷感・痛感・圧覚を含む
「熱感・温感・冷感」も触感のひとつです。
「冷たさを感じるほど摩擦のない絹の衣服を身にまとった。」
絹のツルツルとした感触は、触れていると体温を奪われて冷たさを感じるほどです。
「冷たい感触が肌を滑ると、そこから血が吹き出た。刃で切られたようだ。」
「岩に肌がこすれてひどく熱くなった。途端にその場所が鈍く痛みだす。どうやらかすり傷になったようだ。」
「冷感」は「切り傷」で感じます。「擦り傷」は肌をすりつけるため熱さを感じます。
「痛感」も「熱感・温感・冷感」とともに、触感のひとつです。
「献血注射の後に針の跡をアルコールを含んだ脱脂綿で強く圧迫した。」
「圧迫する感覚・圧覚」も触感のひとつです。
つまり熱い、温かい、寒い、冷たい、痛い、圧迫されるという状態は、触感の表現です。
触感不足の時代
バトルシーンを書いているにもかかわらず、触感がほとんど書かれていない作品がけっこうあります。
バトルシーンでは刀で切ったり切られたり、殴られたり打ち据えられたり、叩きつけられたりしますよね。それで痛くも痒くもないのであれば、生身の体で戦っているようには映りません。
バトルシーンでなくても、夏の暑さや冬の寒さ、長雨で湿気の多いジトジトした感覚など、一年中なにがしかの触感に囲まれて私たちは暮らしています。
またパソコンのキーボードで打ち込んだり、ペンで文字を書いたり、タッチパネルに触れて操作したり。
いずれも手になんらかのフィードバックがありますよね。
それをしっかりと書けるかどうか。
触感がない小説には肌感覚がないため、どうしても絵空事になりやすいのです。
夢の中では空から落ちても殴られても自分で頬をつねっても痛みを感じません。
つまり触感がない小説は「夢物語」なのです。
あなたの書いたものが「夢物語」でよければ触覚を書かなくてもよいでしょう。
しかし「小説」にしたいのであれば、触覚をしっかり記載してください。
バーチャル・リアリティーの時代になりましたので、小説だってバーチャルになりがちです。
そうではなく触覚をしっかりと書いて、血肉の通った「小説」に仕立てるのが書き手としての責務といえます。
あとがき
今回は「手触り肌触りを書く」について述べました。
リアリティーをもたらす最も重要な五感が触覚です。
夢を見ているのかを確認するために頬をつねるのも、痛みを感じれば現実だから。
つまり触感を書かなければ「夢物語」と大差ないのです。
「小説」にリアリティーをもたらすものとして、最も重視したいのが触感なのです。
あなたは小説で触感をしっかりと描けているでしょうか。
高いところから落ちたとき、重力落下をしている段階では吸い込まれるような感覚になりますが、着地したときに衝撃が全身に響き渡ります。そこで強烈な痛みを伴うのです。
それなのになにごともなかったかのように颯爽と歩いてしまったら。
とても現実感に乏しい作品になります。そうまるでゲームのような世界になります。
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