第十二話 不老不死
「あ、あ、あ」
全く喋る事すら出来ないけんじぃの元へ、ナナコと未羽は近づいていく。
「こんなによぼよぼになっちゃったのって強化されたゾンビウィルスをナナねぇが侵蝕して塗り替えちゃったから?」
見る影もないけんじぃの姿を見た未羽の推測は正解だった。けんじぃは数多の実験を自らの身体に行う事で常人ではありえない程の力を得ていた。それをナナコが全て取り除いたのだからこのような結果になるのは当然であった。
確信をついた質問にナナコは未羽の頭を撫でながら答える。
「そのとおりよ。私がやったのはこのくそジジイの中にあるゾンビウィルスを全部塗り替えたの。未羽ちゃんの時と一緒ね」
当時、ショッピングモールでナナコと未羽が戦った時も全く同じ方法で未羽を救い出した。あの時はナナコが未熟だったのもあり、完全に侵蝕出来ず、最終的には混ざりあった事で今の未羽のような姿で落ち着いてしまった。これはナナコどころかけんじぃにも想定外の出来事で、この結果から更なる人体実験が加速したのは二人の知る由もなかった。
ちなみに今のナナコなら完全に守の血だけに染める事も当然ながら出来る。だが、その時に未羽の特性である『身体強化』がそのまま残るかはナナコにもわからなかった。その為、未羽の血を弄る事をナナコはしないし、未羽も望んでいないのだ。未羽としては守の血が入ってるだけで十分だと思っている。
「んで、まだ生きてるんだよね?」
虫でも見るような目つきでけんじぃを睨みつける未羽。感情を抑えなければ今すぐにでもけんじぃの首を落としそうな勢いだった。
「そうね、まだ聞きたい事がたくさんあるわ」
この組織の目的、『あの方』、四人にはわからない事だらけだった。
「だよね……。ごめんね、ボクはまもにぃの様子を見に行くよ」
力を込めていた『紅夜叉』の掴む力を自分に言い聞かせるようにゆっくり抜いていくと、そのままけんじぃの方を見ずにけんじぃから背を向けた。今の未羽にはこのままじゃ耐えられそうにないからだ。それをわかっていたナナコは、未羽を止める事はなく、けんじぃに向かって歩き出した。まぁ守が心配だった為、見ていてほしいという感情も勿論あったが。
それはおいといて。
「さぁ、けんじぃさん? 色々話してもらおうかしら」
疲れている様子を見せる事なく妖艶な笑みを浮かべるナナコ。だが、その裏では、ナナコも怒りを抑えるのに必死だった。
(こいつらのせいで全てがめちゃくちゃになったのよ)
「あ、が、が、が」
何か喋ろうとするもナナコの力によってそれすら出来ないけんじぃ。
「あらあら、忘れてたわ。このままじゃ話す事すら出来ないわね」
既にけんじぃの体内の全てを掌握しているナナコにとってけんじぃは既に何の脅威にもならない。その気になればこの場で爆発させる事も可能だ。
「ナナコさんや、何でも聞いとくれ」
無表情のまま棒立ちで機械的に話すけんじぃ。さっさと話を終わらせたいナナコは、先程までの妖艶な笑みが嘘のように切り替えた真顔になってけんじぃに問いただす。
「回りくどい事はしないわ。あなたの目的は何?」
「不老不死の実現じゃ」
「不老不死……そんな事が可能なの?」
「理論上、可能じゃ。唯一無二の力を持っとる、清華 瑠璃様の力があればじゃがな」
「瑠璃ちゃんの力で……」
ここでふと違和感をナナコは感じていた。瑠璃の力に対してではない、なぜ瑠璃だけは呼び方に様が付くのか? だ。
けんじぃ自体はナナコが支配している為、嘘をつけない。口調は普段通りにするように操作している。その為、この瑠璃に対しての様付けにも意味があるとナナコは考えていた。
(おそらくけんじぃはそれなりの地位にいる筈。何も考えずに呼び方を変えているとは思えないわ)
頭の中で整理しながら次の話を考える。
目的は『不老不死』。
けんじぃが真実を知らされていない可能性を考慮しても、瑠璃の能力から考えたらあり得ない話ではない。ナナコはそう判断した。
そうなると次は――――。
「じゃあ次ね。『あの方』って誰なのかしら?」
「そ、それは―――――」
けんじぃの口からは思わぬ人物が上がるのであった。
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