第八話 強敵
「ふむふむ。この鎖は誠に便利じゃな。お主たちみたいにせっかくじゃから名前を付けようかの? うーむ、『
名を付けられた鎖はジャラジャラと大きな音をたてながら動き出す。それはまるで本当に意思を持っているかのようで、守もナナコも未羽も動き出せなくなってしまった。
「なんじゃ、もう終わりかの? それに忘れておらんか?」
「え?」
凄まじい衝撃を受けて吹き飛ばされる守。攻撃をくらうまで誰もその存在に気付けなかった。壁にぶつかるのと同時にそちらを見ると、眼鏡男が全身を灰色に染めて立っていた。
「実に素晴らしい。これもあなた方のおかげですね。流石に清華 瑠璃様のようにはなれませんが……これくらいならできるようですよ」
再び守の目の前までやってきてそのままレバーブローを守に撃ち込もうとする。だが、その前に未羽が眼鏡男の後ろに迫り、ハイキックをかます。だが、この攻撃は簡単に避けられ、そこから出来た隙を今度は眼鏡男が逃さなかった。
「あなたの『身体強化』もとても便利で助かっていますよ」
眼鏡男の攻撃が未羽に当たると思ったその瞬間、未羽の周囲を赤い膜が覆い、眼鏡男の攻撃を防いだ。そして砕けた欠片はそのまま眼鏡男に襲い掛かる。残念ながらその全ては避けられた。だが、その結果うまく距離を取る事が出来た為、何とか一息をつく守と未羽。
「っ! 全く、私の存在を忘れないでほしいわ」
赤い膜の正体はナナコの『血界』だ。一撃で壊されてしまうが、それでも必ず一度は防ぐ事が出来る為、十分に通用している。ナナコはそう判断し、積極的に使用していく。
ナナコは眼鏡男の攻撃を防ぎつつ、無数の『紅鉈』でけんじぃを牽制している。さらに瑠璃のかまいたちも同時にけんじぃに放ち、その結果、なんとかけんじぃが身動きを取れない状態を維持しているようだった。
だが、これだけマルチタスクで動くとナナコの身体への負担も大きい。既にナナコはかなりの力を消耗しているのは周りから見ても間違いなかった。長期戦は厳しいのは四人とも理解出来ていた為、けんじぃが動けない今を好機と考えた。
それを最初に察した守が『双骨』を両手に持って眼鏡男へと迫る。それにわずかに遅れる形で体勢を戻した未羽も黒刀を握りしめ、守の攻撃に合わせて振り下ろす。
急所だけ避けるように攻撃を受ける眼鏡男。ぶつかった瞬間、金属音のような音が鳴り響き、その衝撃は守達に伝わる。
「かったいなぁ、もう!!」
「全くだ、ほんと!」
肩は腕に当たるどの攻撃も致命傷どころか、かすり傷一つ出来ない。二人はダメージを全く与えられていない事に焦りを感じ始めていた。
それに対し、眼鏡男は余裕な表情をしている。悔しいが致命傷を与えるのは難しいようだ。
「ふふ、それなら諦めたらよろしいのではないですか?」
そして攻撃を受けながら、相手をバカにしたような眼鏡男のセリフが地味に二人の焦りをエスカレートさせていた。
段々と単調になっていく攻撃、そこには連携はなく、ついには正面に立つ守の攻撃が片手で抑えられてしまう。
「これで終わりですか? この程度では『あの方』が満足してくれません。もっと頑張れないのでしょうか?」
「『あの方』なんて知るか! 俺は俺と仲間達の為に戦っているんだ」
「いくら『あの方』のお気に入りとはいえ、その言葉は聞き捨てならないですね。……一度死にますか?」
さっきまでの余裕そうな表情が一変し、般若のように怒りの表情になる。まずは掴まれた『双骨』の片割れをそのまま折られ、守にそのまま投げつけられる。それを何とか避けた守だったが、目の前には眼鏡男がいた。
「死になさい」
眼鏡男の拳が守に迫っていた。だが、守は体勢が崩れていた為、避ける事が出来い。心臓目掛け、目にもとまらぬ速さで迫る眼鏡男の拳。ナナコの『血界』は薄氷のように容易く貫かれ、わずかながらに速度を落とす程度にしか役をしない。守は『死』を覚悟した。
だがその時、
「だめえええええええええええええええええええなの!!」
けんじぃの相手をしていた瑠璃が守と眼鏡男の間に立った。そして眼鏡男の拳はそのまま瑠璃の心臓目掛け、突き刺さった。
「るぅううううううううううううううううううう!!」
慌てた様子で眼鏡男がるぅに刺さった拳を抜くと、瑠璃はそのまま自ら作った血だまりに倒れてしまう。
「パパ、大丈夫……なの?」
心臓を潰された瑠璃はどんどんと力が無くなっていく。
「あ、あぁ……なんて事を」
なぜかうろたえている眼鏡男を無視し、守は必死になって瑠璃を抱きしめた。
「るぅ! るぅ! 俺は大丈夫だ!! だから死なないでくれ!!」
「そう、なの。それ、は、よかった…なの。あの…ね、パパならこんな……やつら、絶対に勝てるなの。がんば…な……の」
そのまま瑠璃はどんどんと冷たくなっていく。それを守は見ているしか出来ないのであった。
――――――――――――――――――――――――――――
もし、少しでも面白かった! 応援してもいいよ!! って方いましたら、フォロー、応援、☆評価をよろしくお願いします。
評価される事、それが何より執筆への励みになります。今後も精一杯面白くなるよう頑張りますので、是非、よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます