第十七話 対峙する二人
突き刺さっている鉈からは絶え間なく血が溢れだしている。だが、瑠璃がそれを気にする事はなかった。
「るぅ……?」
いきなりの展開に守の心が追いつかない。
何でるぅに鉈が刺さってるんだ……?
何でそれを刺したのがナナコさんなんだ……?
ナナコさんはるぅの敵なのか……?
俺はるぅを守るんだ。
俺がるぅを守るんだ。
あの日の誓いの為に……。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
止まっていた時が動き出す。
『双骨』を構えなおし、、ナナコへと接近する守。怒りに狂った守はそのままナナコの頭上へと振り下ろした。
筈だった。だが、目の前にいたのはナナコではなく瑠璃だった。しかも瑠璃は『双骨』をただの骨に変え、そのまま砕く。守は予想外の事に一瞬止まってしまい、その間に瑠璃が守の腕を掴みそのまま壁へと投げつけた。
投げつけた後、瑠璃は投げた守の方は全く見ないでナナコの方を向いている。まるで守の攻撃など、最初から気にもしていないようだった。
「な、何で俺の邪魔をするんだ、るぅ! 俺はナナコさんを……」
「邪魔しないで」
いつものように微笑んでいる筈が目が全く笑っていない瑠璃とそれを睨みつけるナナコ。
壁にぶつかった守だったが、触られた腕はともかく、それ以外の部分は『全身硬化』中な為、ダメージはない。だが、守の頭の中は困惑しており、すぐには動き出せなかった。
その間にナナコと瑠璃が対峙し、お互いに睨み合っている。
「初めまして、守の幼馴染さん? 守を返してもらいにきたわ」
いつの間にか手元に戻っている『
「どちら様? まぁどっちでもいいですけど」
瑠璃の漆黒の翼が大きく拡がると、凄まじい暴風が吹き荒れる。ナナコはそれを嗤いながら『紅鉈』を振り抜く事で受け流す。
『紅鉈』から出てくるナナコの血液の粒子が一気に広がり、瑠璃の暴風を逃がしたのだ。
そしてナナコの血はそのまま瑠璃へと襲い掛かる。それを瑠璃のゾンビを元に戻す『回顧』の力でただの血液へと戻していく。
お互いの力は拮抗しあっていた。お互いの力がお互いを塗り替え、侵蝕しようとしていく。
基本的に二人とも接近戦を得意としていない。特に瑠璃は接近戦になれば一般人と殆ど差がない程だ。だからこそ、瑠璃は絶対にナナコを近づけさせない。
吹き荒れる暴風は苛烈さを増し、かまいたちとなってナナコを襲う。
全身を切り刻まれながらもグッと耐えるナナコ。ナナコの血の粒子は拡がっていくが近づけばすぐにただの血液に戻されてしまっていた。
今もナナコが普通に立っていられるのは、膨大な数のゾンビ達を糧としてきたからだった。
そして血だまりだけが瑠璃の周りに溜まっていく。
瑠璃は疑問に思った。
なぜこんなに無意味に攻撃を受け続けるのか? と。
その違和感に気付くのが瑠璃は少し遅かった。
血だまりだったモノが突如、無数の鉈へと変化していく。意図的にただの血液に戻された血だまりの中に新しく自分の血を潜ませ、十分に溜まったところで『紅鉈』へと変化させた。
「こんなに無意味に攻撃受ける訳ないじゃない」
三日月のように口角の上がったナナコはそのまま無数にある『紅鉈』で瑠璃へと送り込む。
暴風の内側は台風の目のように無風だ。無数の斬撃が瑠璃の翼を折り、腹を抉り、臓物を引き千切る。
「るぅううううううううううううううううううう!!」
吹き飛ばされ、端に追いやられていた守だったが、瑠璃の攻撃されている姿を見て、まだ残る暴風の中、瑠璃へと向かおうとする。
だが、
「まもにぃ、ナナねぇの邪魔はさせないよっ」
いつの間にか守の目の前までやってきていた未羽に立ち止まった守。どうやら簡単にここを通させてはもらえないようだった。
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