『世界7位のゲーム転生』〜愛する世界で少年は、ゲーム知識で最強になる〜

空色凪

プロローグ

第1話 始まりの終わり

 俺は、世界7位だ。


 全世界を席巻したファンタジーゲーム『天我原』。

 VR技術を応用したそのゲームは発売から瞬く間に世界中で人気を博した。そして、現れるのがプロゲーマー。


 俺もその一人だったのに……。


「もって、あと数週間です」


 医師に告げられた。もう俺は終わりだ。死ぬんだから。


 病気のせいで子どもの頃から体が不自由だった。だから、『天我原』が発売されたときは夢のようだった。ゲームの中なら体が自由に動かせる。走れる。跳べる。魔法だって使える。


 俺はこの上ない喜びを感じた。生きててよかったって思えた。だから俺が『天我原』に没頭するのは必然だった。生活のすべてを賭けた。ろくに学校も行かなかった。


 俺は『天我原』に関することならいくらだって努力した。全身全霊を懸けた。だけど、ついぞ、一位にはなれなかった。


 そうだな。病気に殺されるくらいなら。


 俺は病室の窓を開ける。体が思うように動かない。でも、もうあのゲームはできないから。だから生きていても仕方ないんだ。


(クソ!動けよ!)


 もう声も出せない俺は、飛び降りる力さえないことを悔やむ。憎む。この体を。


(クソ、クソ、クソ!)


 死ぬのが怖い。嫌だ。一位になりたかったんだ。それが俺の存在理由だったのに。


「まだやり直せますよ」


 肩に手が添えられた。振り返るとそこにはスーツ姿の男が居た。


「私はこういう者です」


『株式会社ユニ・ゲームズ 代表取締役 加藤駿』


 ユニ・ゲームズって『天我原』の!

 俺は驚きを隠せなかった。なぜ?

 涙を拭いながら男の顔を覗く。代表取締役にしては若く見えた。


「話があります。きっと良い話だと思いますよ」


 加藤さんはそう言って笑うと、俺に手を差し伸べた。




 ◆



 気づくと、見慣れた場所にいた。見慣れた噴水に、見慣れた花壇。


「ここは……えっ?」


 待て。俺、喋れてる?

 なんで?

 喉を抑えながら確認する。


「『天我原』で人生やり直しませんか?」


 あの人は確かにそう言った。


 人生をやり直す……。

 そうだ。俺はやり直せるんだ。何よりも愛したこの世界で。誰よりも知っているこの世界で。だから……。


「決めた。俺はこの世界で一位になる!」

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