目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい/リュート

  <七人目のクルーは?>



「エルマさーん、これ良くないですか?」

「えぇ? 私にはちょっと似合わないんじゃない? ミミが着るならともかく、私にはちょっとその……デザインが可愛すぎるというか、ね?」

「エルマ姐さんは美人やしスタイルもええから、こういうガーリーなのも似合うんちゃう?」

「お姉ちゃんもそういうの着れば良いのに」

「ウィーはともかくうちには似合わんやろ……」

「いや、双子なんだからウィスカに似合うならティーナにも似合うでしょ」


 女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、四人も揃えばそれはもう賑やかなものである。ホロディスプレイでコロニー内のアパレルショップにアクセスしてあれがいいこれがいいそれが似合うのなんのと大騒ぎだ。


「メイは交ざってこなくて良いのか?」


 休憩スペースの隅っこ。テラリウム前のソファに座って寛いでいる俺のすぐ側で待機しているメイにそう声をかけてみるが、彼女は小さく頭を振ってみせた。


「いいえ、私はメイドロイドなので」

「……たまにメイド服以外の格好も俺は良いと思うぞ?」

「メイド服は私のアイデンティティですから。しかし、ご主人様が仰るならばどのような格好でもご奉仕致します」

「いや、うん。別に絶対にメイド服以外が良いってわけじゃないからそこまで深刻にならなくてもいいけど……」


 平坦な声と表情なのに悲愴な決意が感じられるのは何故なんだろうな? 実はうちのクルーの中でメイが一番謎の存在なのかもしれん。

 コーマット星系での仕事を終えた俺達はエルフ達の母星であるリーフィル星系へと移動中――なのだが、今はその道中のとある星系の交易コロニーに寄港している。このコロニーは特にアパレル系の技術に秀でているコロニーで、最新鋭の技術を用いた特殊繊維から伝統の織物までありとあらゆる生地を使った様々なアパレル製品が交易の要となっているのだという。

 様々な生地が集まってくるということで多くの服飾デザイナー達も同様に集まっており、大小様々な服飾店が鎬を削っているというわけらしい。


「小型店舗はホロディスプレイでの省スペース、低コストの商品展示で注文が入ってから共用の工場で仕立てて発送。中規模以上の店舗は現物も展示してその場で買っていけるようにもなっていると……よく考えられてるなぁ」


 小型情報端末で交易コロニーの情報を閲覧していると、話し合いが一段落したのかエルマとティーナがこちらへと歩いてきた。


「新陳代謝も早そうだけどね」

「活気はあるけど、人気が出なくて短期間で消えていく店も多いんやろなぁ」


 エルマが俺の隣に座り、ティーナが真正面から抱きつきながら俺の顔を見上げてくる。ティーナよ、それはちょっと危険な体勢では? いくら俺がお行儀よく足を閉じて座っていなかったからって股の間に入ってくるのはどうかと思うのだが。


「……ティーナ、それはズルくない?」

「ふふん、体格の勝利やな。小さいには小さいなりの利点があるってこと――にゅにゅあー」


 俺の股の間に挟まってドヤ顔をしているティーナの頬を両手で挟んでむにむにと揉んでやる。うーん、もちもちほっぺ。これはずっと触っていたくなるね。ところでそこは危険だから退去したまえ。地味にちゃんとあるティーナの柔らかい感触が俺のデンジャーな場所に当たっているのだよ。


「くっ、ティーナちゃんの無自覚を装った悩殺作戦が……!」

「直接攻撃過ぎるだろう……」


 ティーナの脇の下に手を入れて持ち上げ、エルマとは反対側に座らせる。ヒョイッと軽くやったように見えるだろうが、実は結構重かっ――痛い痛い。ドワーフパワーで俺の肩にパンチするのをやめろ。肩が外れる。というか砕ける。


「それで、良い感じの服は見つかったのか?」

「ちょっと私の趣味とは違うんだけど、まぁ、うん」

「それはウチも同じやで、姐さん」


 どうやらミミとウィスカにガーリーな感じの服とやらを押し付けられることになったらしい。二人とも普段着も部屋着もスタイリッシュだったり半ばズボラっぽい格好だったりするから、二人のガーリッシュで可愛らしい感じの服装ってのは是非見てみたいな。


「兄さんは服買わんの?」

「俺はこの服で良いし……スペアもたくさんあるからな」


 下着とか中に着るシャツはそれなりに揃えてるし、今までにエルマやミミから贈られた服とか必要に応じて買ったちょっと良い服とかもあるしな。わざわざこのコロニーで何か新しい服を買おうとはあまり思わない。


「第一、皆みたいな美人さんと違って俺なんてちょっと目つきが悪いだけのモブ顔だろ。エルマの兄さんみたいな美形ならまた違うだろうけど、俺が着飾ったところでなぁ」


 俺が豪華な服を着ても服に着られるのがオチだ。


「そうかしら? そこまで卑屈になることはないと思うけど」

「うちもそう思うで。まぁ、兄さんにはその傭兵スタイルが一番しっくり来るのは確かやけど」


 エルマが俺の頬を手で撫でながら首を傾げ、ティーナが俺の腕に抱きついてくる。密着度合いが凄い。君達、あまりこう、明るいうちからベタベタするのはやめないか。


「あー! ズルいですよ二人とも!」

「こ、こんなに早い時間から……良くないと思います!」


 こちらの状態に気づいたミミとウィスカが駆け寄ってくる。こういう時、エルマはミミに譲るんだよな。おおう、エルマに譲ってもらった空間に滑り込んできたミミの素晴らしい感触が左腕に。

 左腕は素晴らしいんだけど、右腕が二人分のドワーフパワーで破壊されそうなんだが。ティーナを俺から引き剥がそうとしてウィスカがティーナの身体をグイグイと引っ張り、ティーナは引き剥がされまいと俺の腕に全力で抱きついている。折れる折れる。そして抜ける。


「それにしても増えたわよねぇ」

「痛い痛い! 増えたって何が!?」

「クルーよ、クルー。最初はミミだけだったのにすぐに私が加わって、その後メイが加わって、またすぐにティーナとウィスカでしょ。トントン拍子で増えてるじゃない」

「このペースでいくと一年後には軽く十人を超えそうですね!」

「十人とか兄さんアレやん、ハーレムやん」

「何故全員女性という想定なのか」

「今の男女比率を考えれば妥当だと思いますけど……」


 ウィスカ、そこで冷静なコメントをされると返答に困るんだ。実際のところ、これだけ俺以外のクルーを女性で固めたところに下手に男性クルーを入れてもトラブルの元にしかならないだろうから、男性クルーを入れることはないだろうけどさ。


「次はどんな子が来るのかしらね?」

「予想が付きませんね。でも、私はオペレーターで、エルマさんはベテランサブパイロット、メイさんはブラックロータスやセキュリティを任される超高性能メイドロイドで、ティーナちゃんとウィスカちゃんは凄腕のメカニック……私はともかくとして、エルマさんもメイさんもティーナちゃんもウィスカちゃんもそれぞれ専門技術を買われてヒロ様は船に招いたわけですし、やはりそっちの方面から考えるのが妥当じゃないですか?」


 それはそうだな。船に乗る以上は何かしらの役割を持って働いてもらわないと困る。ミミのように一からクルーとしての心得を学んでもらうにしても、何かしら光るものがあって欲しいのは確かだ。


「そう考えると……んー、船医とかかいな?」


 確かに船医はアリだな。今はクルーの健康管理に関してはほぼ簡易医療ポッド任せだから、正式な医師としての資格と経験を持ち合わせている人が船医としてうちに来てくれるなら大歓迎だ。

 まぁ、医者はそもそも収入も社会的な地位も安定している職業だから、わざわざ危険な傭兵稼業に身を窶すような奇特な人はそうそう居ないだろうが。


「白兵戦が得意な海兵とかじゃないかな?」


 それも確かにアリだな。現状、白兵戦をまともにこなせるのは俺とメイだけだ。エルマも出来ないことはないだろうが、少々不安がある。軍用戦闘ボットという強力な戦力はあるが、彼らを有効に運用することができる前線指揮官はメイだけだ。戦力の厚みを増し、クルーの安全を万全なものにするという意味では大いにアリだな。


「ブラックロータスのハンガーはもう一個空いてるわけだし、パイロットかサブパイロットって手もあるわよ」


 なるほど、それもいいな。エルマ用の小型戦闘艦を一つ追加で用意して、俺とエルマのダブルアタッカーとブラックロータスの後方支援というフォーメーションを組めるようになれば、宙賊の取り逃しが今よりも大いに減ることだろう。戦力が増えれば不測の事態にも対応しやすくなる。

 そしてエルマが抜けて空いたクリシュナのサブパイロットを新しく迎え入れる、と。傭兵団全体の戦力の層が厚くなるのは大歓迎だな。


「で、兄さんの意見としてはどうなん?」

「皆が考えてくれた内容については全部大いにアリだと思うけど、そういう出会いがあるかどうかだな。もしかしたら今想定したのとは全く別方向の理由からクルーが増えるかもしれないし」


 と俺が言うと、今までずっと黙っていたメイが呟いた。


「……ご主人様はお優しい方ですから。困っている女性がいて、ご主人様が手を差し伸べる以外に救う方法が無いという状況になるかどうかが全てではないかと」

「「「「ああ」」」」


 君達。四人揃って納得するのをやめないか。俺自身、メイの言葉を否定することはできそうもないけれどもさ。


「でも、男の人は助けないんですね?」

「俺は聖人君子でも博愛主義者でもないんでな。野郎はてめぇでなんとかしろってスタンスだぞ」


 どんな人が相手でも困っていたら助けの手を差し伸べる、なんて奴は胡散臭いにも程があると思うんだよな。俺は女の子しか助けません。何故かってそりゃむさ苦しい男に感謝されるよりも可愛い女の子に感謝される方が気持ちが良いからな!


「そんなこと言っても本当に困り果てていたら助けそうだけどね、あんたは」

「そうですね。ヒロ様は優しいですから」

「そんなことはない。ないったらない」


 俺は必死にそう主張したが、全員にはいはいと適当に流されてしまった。解せぬ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る