第18話 野望

女子会で帰りが遅くなってしまい、一緒にいた彩香の家に泊めてもらった。


その翌朝、彩香に言われた。

「ねえ、夜中に大きな声で寝言言ったの覚えてる?」と言われた。


「覚えてない」

「そうなんだ」

彩香は含み笑いをしている。


何か性的な言葉を発したのか?◯◯◯◯みたいなことを。◯◯◯◯って伏せ字、なんかエッチ。

そこに『呉越同舟』と入ったとしても。

って、呉越同舟って何?


「聞きたい?」

「うん、聞きたい」

ここまで言われたら、聞かざるおえない。


「生徒会長になりまーすって」

「えっ?」


「生徒会長になりまーすって、宣言してた」


『生徒会長になりまーすっ』

夜中に。夜中にそんな寝言を。


取り返しのつかないことをしてしまいました。


「マジか」

「うん。どんな夢見てた?」


「覚えてない」

「じゃあ願望みたいなのが出たんじゃない?生徒会長になりたかったのかな?」


私は中高と目立たず、いじめられもせず、いじめもせず、地味に、川辺にある大きな石の下で、小虫のようにひっそりと暮らしていた。


その石をどかすと、私がいるのだ。


そんな私に生徒会長になりたいという野望があったとは!


「ない、ない」

私はそう言ったが、その野望を心の奥底に押し込めたまま大人になったことが、取り返しのつかないことなのかもしれない。

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