第16話 ボンゴ

同僚の伽奈ちゃんが、お昼ご飯を食べそこなって、

休憩時間に喫茶スペースでカプヌ(カップヌードル)を食べようとしていた。


伽奈ちゃんはセロファンを取ると、

カプヌのフタを開ける前に、

トントコトントコ両手でフタを叩きだした。


まるでボンゴを叩くように。


『カプヌのフタをボンゴのように叩く』


伽奈ちゃんは何をしているのだろう。

伽奈ちゃんの地元にまつわる伝統儀式なのだろうか?


伽奈ちゃんはまだボンゴのように叩いている。


私はもしかして秘密の儀式を見てしまったのかもしれない。他の土地の者が見てはいけない、死の儀式を。私は呪い殺されるかもしれない。


取り返しのつかないことをしてしまいました。


私は伽奈ちゃんに、恐る恐る、

「何してるの?」


すると伽奈ちゃんは笑顔で、

「カプヌのフタを叩いて、フタの裏についたスープの粉を落としてるの」


フタの裏についたスープの粉を落とす。

私には思いもつかないことだった。


でも呪い殺されないで済んだと、

ほっと胸をなでおろした。

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