第5話 青いパンダ

滑舌の悪い年配の男性上司がいる。

その人にいきなり、

「期間限定で青いパンダが出ていてさ」


『期間限定』『青いパンダ』

もう取り返しのつかない予感しかしない。


私は当たり障りなく、

「あの、中国のパンダですか?」

「違うよ、今、コンビニで青いパンダが売ってて」


もうダメだ。『コンビニ』で『青いパンダ』だ。

絶望的だ。


私が何も答えられずにいると、

「ファンタだよ、ファンタ。ファンタが期間限定で味が謎の青いボトルのが売ってるんだよ。どんな味なんだろうね」


ファンタ?

ファンタ?

あっ、あの炭酸飲料か。


私とはかなり縁遠い飲料だったので、パンダと聞き間違えていた。


やっぱり取り返しのつかないことをしてしまいました。


私は次の一手を、恐る恐る繰り出した。

「美味しいんじゃないですか」

「そうだね、美味しいよね」


やった。取り返した。

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