第3話 ミステリと言う勿れの6巻

去年の12月、寿退社した会社の元先輩が離婚した。

私はその元先輩に、12月に入ってすぐにLINEで『もうクリスマスの時期ですね。街中、ジングルベルの音色が鳴ってます』と、当たり障りのない時候の挨拶を送った。本当は離婚の話を知りたかったのだが。


送信した後、これに合うスタンプを探そうと、文章を読み返してみた。


するとこう書かれていた。

『シングルベルの音色が鳴ってます』

『シングルベルの音色が』

『シングルベル』

『シングル』


先輩は離婚したばかりなのだ。シングルなのだ。

私が削除しようとした瞬間に、既読になった。


取り返しのつかないことをしてしまった。


飛行機の中で読もうと思って、ミステリと言う勿れの6巻を羽田空港の本屋さんで買って、


新千歳空港行きの飛行機の中で読み始めたら、これもう読んでるじゃん!羽田の本屋さんじゃ返品出来ないじゃん!みたいな。


悔やんでも悔やみきれない。


その後、私は元先輩からLINEをブロックされたのだった。


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