第4話

 次の日の朝、無事でいてくれと願いながら、動物病院へ向かった。


「どうぞ中へ」

 緊張の一瞬だ。

 診察室の中に入り、ゲージの中を見る。

 あくびをしている。昨日助けた猫がいた。

 助かったのだ。

 僕は胸を撫で下ろした。

「峠は越えました。食欲もあるみたいですので、命に関しては、別状はないです。ただし、腰の骨折は治っても、下半身麻痺でしょう」

 下半身麻痺。2つ返事で喜べなかった。

「どうします?」

 自分で引き取りしたかったが、ペット禁止の物件なので、無理だった。そうすると、もしこの猫の飼い主が探していたら、見つけ出す。もしくは、里親さし。最悪、保健所へ連絡するかの選択肢を迫られた。

 僕は、前者を選択することにした。

「とても難しいですよ。探しだすのは。下半身麻痺の子ですから尚更です」

 それでも僕は猫を助けたかった。だが、動物病院はボランティアではない。預けておくにも、お金がかかる。

 僕の家は裕福ではない。貧乏の部類に入る低所得世帯のため、動物病院に預かってもらう期間を1週間にするのがやっとだった。

 それから、僕の必死の飼い主と里親探しが始まった。

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