川中忍

「ねー零くんって子供欲しいと思う?」


「え、あんまり好きそうじゃなくね?」


「そう?でもわかんないでしょ?聞いてみたら?」


「やだよ。そういうの聞きたくないし」


「そ、じゃあいいわ」


碧唯、なんなんだよ。これって、聞けってこと?俺はどこの親戚だよ。子供はまだできないのか?って催促すんの?やだよそれ。とは言え、碧唯が聞いて欲しそうだし、一応聞いてみようと思ったんだけども、


「川中先生、碧唯さんと一緒に出かけてみてはいかがでしょう?気分転換になるのでは?」


零くんと話すとなぜか俺の話になってるしー。聞きたいけど、聞けない。


「あのー零くん、子供って…」


「ああ、椿ちゃんですか?この間会いました。しっかりしていて、碧唯さんにとても似ていますね」


「ああ、そうなんだよ。かわいいだろ?」


話がすり替わってしまう。そうやっているうちに、うちのアパート一階に新しい人が入居してきた。


「忍、すっごいいい人が入ってきたわよー!」


「そうなんだ」


「今会ってきたら?零くんたちもいたし」


「うん」


碧唯に言われるがままに新しい住民に会いに行った。そして彼らは外で話していた。


「川中先生!」


と、零くんに呼び止めれた。なんか、いつも以上に元気なんですけど。


「こちら高原先人たかはらさきとさんです。私の友人の友人です」


「いや、自分で紹介するからいいって。はじめまして、高原です」


なんか、紳士的で控えめ、且つ男らしい人だ。


「二階の川中です」


「さっきのおねーちゃんの旦那さん?」


「そうです」


零くんが話しているのは、高原さんの嫁だろうか?ちびっこくて、ちょっと太い?そんな素朴な人だ。この人俺よりも年上じゃね?


「先人さんは零さんと同い年なんですよ!びっくりでしょー」


は、零くんの嫁もいたのね。


「そうなのか」


零くんよりも年上に見えたけど、なんか常識ありそうだな。


「ちなみに~私も同い年なのよ?ゆかちゃんって呼んでね?」


高原さん嫁は、無茶なことを言った。ないない。


「…お断りします」


「川中さん家は厳しいのね」


碧唯はこの人になんか言ったのか?


「先人さんのことは、川中先生はなんと呼びますか?」


零くん、それ今関係ないと思うけど。


「じゃあ、先人、さん?」


「先人でいいです。年下だと思うし。気軽に呼んで下さい」


「ありがとう」


なんということだ。この優しさ、話しやすさ。


たしかに、すっごいいい人だ。

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