第65話

零さんと喧嘩したことでわかったことがある。私たち、けっこう似てる。

夕食後、忘れていたことを思い出した。


「ねーこの袋、何なの?」


「着物だそうです」


「え、着物?」


中から出してみたら、ピンクのかわいらしい着物が出てきた。


「すごーい!かわいい!私着てもいいの?」


「はい。今着ますか?」


「え、着付けとかできるの?」


「はい。得意です」


零さんに初めて着付けしてもらった。零さん私がいないと何もできないって言ったけど、うそだよね。いろんなことできるもん。


「苦しくないですか?」


「うん」


「大きさも丁度いいですね。なんででしょうか?」


「え?零さん教えたんじゃないんですか?」


「さぁ?」


私の情報うっかりしゃべってるよ、零さん。ぼーっとしてたんだよ、きっと。


「できましたよ」


「わーい。かわいいー。似合う?」


「はい、よく似合っていますよ」


それはお世辞?でも嬉しいけど。


「明日、お休みでしょうか?」


「うん」


「よろしければ、この着物を着て、先生に会いに行く…というのはどうでしょうか?」


「うん!いいよ!」


たまたま休みになってよかった。というのも、あまりに私が集中していなくて、萩原さんに休めと言われたんだけど。


「ではそうしましょう。髪型はどうされますか?」


「そっかー、私セットできないしなー」


「僕もです」


そんなのわかってますよーっだ。


「旭川さんに頼むのもなぁー。あー碧唯さんできるかな?」


「面倒なことになりかねませんが」


「そう、ですね」


碧唯さん、確かによく考えると面倒だ。


「じゃあ杏さんは?細川先生もできそうじゃない?」


「そうですね。では、杏さんに電話してみましょう」


こういうのの仕事は早い零さん。なんか悔しいので、零さんから電話を取った。


「私がお願いする!」


「ほーい、零くん!元気かーい?」


「宝之華です」


「おう?何かな?」


「私、着物着ることになって、でー髪のセットお願いしたいんですけどー」


「おおーいいよ。そういうの得意なやついるいる」


なんだ、杏さんがするわけじゃないのか。


「明日、なんですけど…無理ですか?」


「いいよーたしか休みだったしー。任せな!」


杏さんに頼んで正解だった。こんなスムーズに決まったし!


次の日は朝から髪をセットしてもらった。杏さんの友人の渚さんという女性だった。もちろん杏さんも一緒に来てくれた。


「あなたモデルさんなんだって?」


「はい」


「なんかイメージと違って生意気な感じする。子供だし」


杏さんの知り合いってなんか私に優しくない。と言いつつもしてくれるところは優しい。


「おおー着物も似合うねぇ」


完成を見て微笑む杏さん、さっすが!


「えへへ、この着物もらったんですよ~」


「ひゅーご婦人!」


「…ご婦人って感じ全然しないけど?ほど遠くない?」


渚さんはやはり私に優しくない。


準備を整えたら、早速零さんの職場へと向かった。道中、着物で歩くのが慣れてなくてわたわたしてしまった。

そんな着物を普段着ている零さんにびっくりだ。颯爽と歩いてるもん。

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