第41話

「藤原くん、白河くんを見なかったかい?」


「いいえ」


「全く、白河くんはどうなっているんだ」


「知りません」


藤原さん冷めてる。てゆーか長山さんって短気なの?


「お疲れ様です。長山さん」


あ、噂をすれば白河さんがやってきた。


「白河くん、君はまさか準備もしてないんじゃ…」


「はい。そうです。今から準備してくるんで」


え、白河さん遅刻してんのに謝る気すらない。


「あの、藤原さん、いつもああなんですか?」


「そうです。白河さんはマイペースなんで」


それはマイペースじゃすまなくなくない?自由すぎでしょ?

待つこと小一時間。ようやく白河さんは現れた。


「全く、白河くんはどうなっているんだ」


「すみません。撮影始めて下さい」


えええ…命令してるよ。これが大物というのか?ジャムさんとは全然違う。

撮影は順調に進み、さっさと終わってしまった。早く終わるんだったら、遅刻しなきゃいいのにな。


「さて、終わりましたし、翼さんのところに行きましょう」


「えー今日誰ですか?」


「めいさんです」


「はーい」


翼さん担当のめいさんの撮影はまだ見たことなかった。翼さんと会うのはいつも緊張する…。

撮影場所へ行くと既に撮影は始まっていた。


「藤原くん」


「はい」


いきなり翼さんにぱしりにされちゃったために、私は1人で見学することに。


「めいさん、ちゃんと服に併せたポーズで」


「こう?」


「違います」


「こう?」


試行錯誤するめいさん。翼さん怖い。ゆきなさんのときもこんなんだったけど、あの人はすぐ対応していたな。


「めいさん。もう新人ではないんですよ。しっかりして下さい」


「はい…ごめんなさい」


私がここにいたらどうなってたか。考えただけで怖い。


「ほのかさん」


「は、はい!」


「萩原くんのところに行って下さい」


「はい」


命令通りに萩原さんのいる撮影場所に向かう。もう来てるのか?


「ほのかさーん!」


いるし。


「偶然!まなちゃんの撮影開始しまーす」


ナイスタイミング。翼さん。

まなさんの撮影は、時間がかかる。撮ったものを一緒に検討する。そんな感じ。


「ねーほのかちゃん、これどう思う?」


まなさんから質問される。


「そ、そうですね、ええと、ポーズを変えてみては?」


「そうね。じゃあお願いします」


「はい」


萩原さんも苦労してるのね。


「さて!ほのかさん休憩どうぞ」


「え、まだ撮影終わってないですよ?」


「どーぞどーぞ」


ということで、休憩になった。休憩室に行くと、既に誰かが座っていた。


「お疲れ!」


誰?この人。ちょっと丸っこいし、モデルじゃないよね?


「あ、あなたはどちら様?」


「おーう!私は日和ひわだよ。雑用してるのー」


「そうなんですね」


「はい。お茶どーぞ」


「ありがとうございます」


「お弁当?偉いね。ここでもご飯作ってるから金に余裕あったら頼んでね」


「はい、どうも」


はーなんか疲れたな。弁当を開けて食べる。


「おー料理上手だね」


「そうですか?」


「でもさー、煮物とかって超余るじゃん?一人暮らしだと飽きるほど食べないとじゃん?」


「そう、ですね」


「まじ偉いし」


本当は零さんの朝、昼ご飯でもあるのですぐ消えちゃうよ。

ふと、ドアの開く音がすると、下津さんがやってきた。


「お疲れ様」


「おーお疲れ。お茶飲みなよ」


「ありがとう。今日はから揚げ定食なのね」


あ、下津さんは定食を手に持っていた。いつの間に。


「そーうまいよー」


日和さん自慢げだ。


「あら?ほのかさんは手作りなの?」


「はい」


「偉いわね」


また褒められちゃったよ。


「下津さんは料理しないんですか?」


「ええ、全然しないわよ」


超意外なんですけど。


「あのねーそれは小暮くんが料理できすぎるからだよ」


「え、小暮さん?」


小暮さん関係あんの?


「由良ちゃんは小暮くんと付き合ってたんだよ、昔だけどー」


「そうなの。有太の料理は店に出せるようなレベルでね。私作る気失せちゃって」


「え」


下津さん、元カノってこと?


「小暮さんは料理ができたんですね」


「そー。生意気だよね!」


「ほんと生意気よね」


この言われよう。女子は怖い。この話題、萩原さんに聞く前にもう知っちゃったよ。


「そういえば、小暮さん離婚してるって聞いたんですけど…」


「ああ。それは由良ちゃんじゃない他のモデルさんだよ。子供3人いるんだよーあいつ」


「仕事ばっかりしてたから別れちゃったのよ。バカでしょ?」


「へ、へえ」


それなのにナンパしてる小暮さんって、ダメじゃん。


「有太きっとほのかさんのこと狙ってるわ。気を付けたほうがいい」


「え」


気を付けるってどうすりゃいいんだか。でも、下津さん名前で呼んでるし、元カノなのにモデルしてるし。それってまだ小暮さんのこと好きなんじゃ?


「ねーほのかちゃん。彼氏いるの?」


「い?」


「日和知りたーい!」


「いないですよ?」


「そうなの?どんな人がタイプ?」


「え?あ、そ、そうですね、間抜けな人?」


「まじ?それってバカってこと?」


「そんな感じです」


「ありえん。趣味悪い」


間抜けなのは私なんだけどね。


「日和さんは知的な人が好きですからね」


「ま、そうかな?」


「日和さんの旦那さんはお医者さんなのよ」


「へえ、すごいですね」


細川先生と同じなんだ。同じ病院かな?

今度はトントンっとノックの音がした。


「誰?」


日和さん怖いよ。


「藤原です」


「どーぞ」


「失礼します。ほのかさん、食事終わったら旭川さんのところへ行って下さい」


「え?私?」


「はい。では失礼しました」


連絡のみかい。


「藤原くん大変そーだね」


「ええ。彼はまじめだから」


でもなんできのこ頭なの?

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