第38話

ということで、細川先生宅のドアを叩くと、細川先生が出てこられた。


「どーも!ご飯下さい!」


「は?ずうずうしいやつめ」


「申し訳ありません。帰ります」


きっと細川先生は機嫌が悪いんだ。


「お願いします。私、細川先生のご飯が食べたいんです!」


それは本当にずうずうしいんじゃ?


「なに?しょうがねぇな」


と言われ、部屋へ入ることに。さすが宝之華である。


「あれ?奥さんは?子供は?」


「杏は今日遅い。子供達は実家に遊びに行ってる」


「で?今日の料理はなんなの?」


「調子のんなよ」


いきなり怖いです。いや、調子に乗った妻を許してあげて下さい。


「ひどーい。でーなんなの?」


あわあわ。調子乗りすぎですね。すみません。


「中華丼だ」


…馴染んでいる。


食事しながらも、2人は喧嘩腰な会話を続けていた。これは楽しんでいるのだろうか?

2人だけの会話に混ぜてもらいたいので、なにか話さなくては。


「あ、あの、細川先生はいつもこんなにお料理を作られるのでしょうか?」


「は?おめーらが来るからわざわざ作ってやってるんですけど」


「し、しかし、こんなに材料がどこから…」


ああ、どうしたら。どうやっても調子に乗っていると思われてしまう…。


「いつも多めに作れるようにしてんです。理由は急な客の対応のため」


「じゃあ、私たちの他にも誰かここにやって来るんですね」


「そーだし」


なるほど。人がいいわけである。


「細川先生は毎日家にいらっしゃいますが、仕事は大丈夫なのでしょうか」


「お前に心配されたくないんですけど。明日から夜勤だし」


「えー。じゃあご飯はどうしたらいいの?」


「てめーで作れ」


「えー面倒なんですよー」


「作れよ」


「だってー零さんは全然料理できないしー。私1人でやんないとだしー」


「は?零くんは作れない?」


「す、すみません」


「杏さんも出来ないんじゃないんですかー?」


「は?できるし。たた俺が作ってあげたいだけだし」


…奥様にとことんお優しいようで。


「のろけっすか!」


「は?うざ」


「杏さんいないと寂しすぎるんじゃなーい?」


「お前調子乗りすぎ。もう帰れ」


また喧嘩に。

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