タバコが消える時

ろくろ99

第1話 プロローグ

「お母さん!お花がいっぱいあるよ!」

「こら、走らないの!」

母娘の元気な声が大通りに響く。

白い建物が続いている道にある1軒の花屋に向かって娘は走って行った。

色とりどりの花が並び、花についた水滴が光で輝いている。

「あの、あのね!あの紫の色の花が見たいの!」

娘は花を指差しながら母親の手を引いていく。 


「いらっしゃいませ。」

初老の店員さんが声をかけてきた。

おそらく黒髪だったのであろう、根元以外は白髪を蓄えた頭を下げている。

「おじいちゃん!この花がね!綺麗なの!」

「そうなのかい、この花の名前は知っているかな?」

「知らない!何?なんてお名前なの?」

「このお花の名前はね……。」


店の奥で1人の女性が微笑んだのが見えた。

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