絶対的な世界

絶対的な力を持った、官能の使者。

彼は、懐に潜り込み、神々を受胎させた。

そして、妊娠した。

幼子は絶対者。

その名は「無」。

光のかけらも、存在しない。

深淵に置いてきぼり、幼子は孤独。

誰が守ってくれる?

一つの青いピエロ

ピエロはジャグリングをしている。

そしてシャウトが、ピエロを、深淵まで向かわせた。

青いピエロはこういった。

「泣くな、幼子」

幼子はこう言い返す。

「おぎゃー、おぎゃー」

言葉にできない、生命の声。

青いピエロはこういった。

「始まる。幼子、君の生きていく世界が始まる」

そしたら、太陽が昇り始めた。

黄色い太陽。

墜落していく追憶

崩壊していく、ハートブレイカー

「おぎゃー、おぎゃー」

青いピエロは幼子を抱きしめた。

嘲笑した。

そして、泣いた。

そのピエロは、泣いて、幼子を抱きしめて、その時だ!

世界に光がひろがったのは。

世界の隅々、動物たち、虫たち、百億の砂まで、そして、アフリカで泣く子供達にまで。

「幻の世界」それが、宇宙をアートする。

アーティストはこういった。

「幻の世界にようこそ」

青いピエロもこう言った。

「もう、戻れないんだよ。アートの世界に。それで、狂気の大乱交」

「おぎゃー、おぎゃー」

幼子は、言葉を覚えた。

「うふふふふ!」

不意に女性の声がした。

「おめでとう」

幼子は答える。

「愛してる」

幼子が初めて覚えた言葉がそれだった。

 こんにちは、世界。

 月の裏側にようこそ、と青いピエロは澄んだ目で、言った。

 太陽が、真っ赤になった。

 そう、真っ赤な太陽は、ピエロが追いかけた太陽。今は違う。

 青い月の裏側に身を潜め、しくしく泣いているのが青いピエロ。

 そして、幼子を抱きしめる、月の表の方で、待っている赤いピエロ。

 青と赤のコラボレーション。ユニゾン。セックスのカラフルな罠。

 そして、神々が、こう返す。

「君たちの愛は偽りだ」

 と青と赤のピエロは声をそろえてこうかえした。

「偽りではない。真実です」

 神々はこういった。

「それならば、行動で示せ!」

 神々はたけり狂っている。

 地球を殺そうとした人類を。

 幼子がこう返す。

「愛してるの。滅ぼさないで」

 その言葉を待っていた、と神々は言う。

「ならば、青と赤よ。力を示せ」

 そして世界はカラフルになっていった。

「愛してるの、愛してるの、愛してるの……」

 世界は止まない。神々の怒りは、そんなものでは止まない。

 永遠の平和?

 笑わせるな! と神々は声をそろえて言う。

「行動で示せ!!」

 と神々は、叫ぶ。

 「選択をしろ」

 と神々は言う。

「愛してるの……、……」

 無言の説得。

 そして、無言のうちに言葉は、言葉が生まれる。

「ラブ&ピース」

 すると神々は笑った。

「この期に及んで、幼子よ、ラブ&ピースはない、でも、幼子の祈りは訊きとめる、しばらく待ってやる」

 人類は滅亡する。

 選択を間違えれば。

 幼子は笑った。

「きゃ、きゃ。きゃ!」

 そして、赤い太陽は、黄色い太陽に戻った。



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