第7話残影のように

想う。


残影は、微かな灯の中で、


火にくべる、生贄のシープ


香る歌


故郷の歌


口笛の夢み心地な、春のなかで、感覚は消耗していく。


後ろ。


影。


伸びていく狂気


影法師、かくれんぼ、幼い日の、痛み、そして、希望。


失われた楽園、決壊していく、快楽の土石流。


押し流されていく。押し流されていく。


すべての記憶が、押し流されていく、しかし、火がある。


水中の、さざ波の上で、踊る天使。


超えてゆけと、彼は言う。


僕は答える。


「うるせえな」と。


中指を立てる。


ファック、ファック、ファック


人類みんなにファック!


ファンクそしてパンク。


セックス・ピストルズ


勝手にしやがれ


勝手に、どうぞご自由に、生きなされ。


「うるせえな」

と僕は答える。


それが回答。


シド・ヴィシャス。


やってやろうか。


唇をグイっとゆがめて、俺は、クールなパンクス。三分間のパンクス。


怒れたキチガイ詩人、地獄へ落ちた、説教者


鏡の前で、髪形をキメる。


それで、口笛を吹く。


「アナーキー・イン・ザ・UK」


この世の中、本当に腐ってる。けど、中指立てていこうぜ。頭は空っぽ、青空。


いつか見た青空。


帰りたい、でも、帰らない。


俺は、マザー・ファッカーだ。


すべてをぶち壊した。でも、帰りたい。けど、帰れない。


遠い。


望郷の彼方


死が待つのだ。でも、俺の詩は、夢。


糞ったれな、三分間。


影法師が揺れる。


あの日のかくれんぼ、いつかの夕暮れ


手をつないだ記憶。


つなぎとめてゆけ


そして、激情の薔薇は散る。


棘を残して。


今は、そのまま、夢を見ている。


丸裸で夢を見る。全部さらけ出して、語り合おう。


シャガールを夢見た、幼い詩人、言葉が駆けだす、有罪者。


キメる。髪型が決まる。ブンブンブン、へたくそなベースが唸るぜ。


最高だね。そう、最高だぜ。生きてるっていうことは。

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