第43話『呪いの勇者と盾の女神』
「カケルさん、お客様っていうか神様が来てます……」
「即刻、帰って頂くように伝えろ!」
マリエルが申し訳無さそうに客人が来たと伝えるが、うちは勿論お助け稼業なんかやってない。ましてや、神様だと? 絶対に厄介事じゃねぇかよ。
首狩りに臓物潰しと、魔王軍幹部を撃破したことで、俺たちはエルムーアで英雄扱いだ。好きで倒した訳では勿論無い。
降りかかる火の粉を払っただけであり、それがたまたま、賞賛に値する行為であったことが原因なだけだ。やれ、救世主だ、英雄だ、などもてはやされて助けの依頼が殺到してしまっている。
ゆっくり仲間と過ごさせてくれよと、願い続けても叶わないのが現実でして、今では、依頼に関しては厳重に精査して引き受ける事にしている。なんでもかんでも引き受けてたら敵わなんからな。
今回は、調べるまでもない。却下しよう。
どこの神なんだか知らないが、確実に関わってはいけない匂いがプンプンしている。帰って貰うように頼んでおいたマリエルは、丁重にお断りを入れてくれただろうか。
様子を見るが、外にはマリエルが一人立っていて困惑している。きっと、待つのが面倒になって帰ってしまったのだろう。
一安心して、屋敷の応接間にあるソファに腰をかけると、正面ソファに絶世の美女が座っていて、俺は、目が飛び出してしまいました。
どうやって入って来たかは不明。碧の髪に瞳は大きい。極めつけは、あの露出の多い羽衣に近い服で爆乳と来た。まぁ、あれだ。エリクシア程じゃねーけど、美人過ぎて声が出なかったんだよな。
「いきなりお邪魔してすみませんでした。勇者カケル様」
「い、いえ! 拝ませて頂けて光栄です!」
|(目線が離れられないんですけどー!)
あまりの色気に興奮してしまっていると、マリエルが俺の居る応接間に帰ってきた。まぁ、当の神様はソファで平然とくつろいでいるから、度肝を抜いただろうけどね。
「ーーな、な、!? 何でここに居るんですか!」
「俺が聞きてぇよ……。どうしようマリエル。話し聞かないといけないよな……」
話しを聞くしから道が無くなってしまったようだ。最悪な気分だよ。嫌々ながらも、せっかくいらっしゃった神様に、依頼の内容を確認する作業に移った。
「今回は、どうしてうちに?」
「カケル様のご活躍、天界の方でも伺っております。申し遅れました。私は、盾を司る女神、名を『アテネ』と申します。実は、私の夢を叶えて欲しいのです」
「夢……。ですか? 神で有れば何不自由無く、生きているでしょうに。一体、どんな夢なんですか?」
「私は、『恋』をしてみたいのです!」
あー。やっぱり面倒事じゃねぇかよ、ふざけやがって。でも何でだろうな。神様が『恋』をしたいだなんて。あまり、聞いたことないんですが。
何か、裏があるのではないかと詮索してしまいそうだったけど、今はグッと我慢して、盾の女神アテネの願いについて、マリエルと真剣に考えることにした。
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