第42話『呪いの勇者は、アクアに恐怖した』


 「クゥーン!」


 「心配してくれるのかブレッド。ありがとう平気じゃないよ」


 俺の腫れた頬を気にかけて、ブレッドが慰めてくれていた。


 大丈夫だぜ、いつもの事さ。慣れた訳じゃないんだが、これが平常運転であり、俺の日常なんだ。気持ちだけ受け取っておくよ。


 用事も済んだことで、本命のギルド本部まで足を運ぶ事にした。受付まで行こうとしてたのだが、アクアは俺を仁王立ちで待ち構える。


 まるで、般若の顔だ。そんなに怒ってるんだろうか。俺、無理だよ、あんなの相手したくないんだが。軽く冗談でも言って、誤魔化してやろうと考えるばかりです。


 「はぁ、よかったですね。生きていて!」


 「はい、アクア様のお陰でどうにか生きていることが出来ました。その巨乳有ってのことです。ありがたや、ありがたや」


 「冗談言えるくらい元気でしたか。いいですか、私はカケルさんに死なれると困るんですよ? 少しは考えてください!」


 「へいへい、今回は助かったぜ。そんなアクアにお礼の品を持って来た」


 「ーー、お礼の品? ですか?」


 鍛冶屋バルジに、作って貰ったブレスをプレゼントする。照れ臭いけど別にいいよな。仲間の証、みたいなもんと思ってくれるとありがたい。


 着けてくれれば、緊急時の助けにもなるし、都合もいいだろう。アクアとの約束もあるしな。聖堂教会に、消されそうになったら助けるって誓いは、忘れた訳ではない。その保険の為のブレスだ。


 「綺麗ですねこれ。貰ってあげますよ、カケルさん」


 「遠慮の無い奴だな。みんな着けてるから、気にせず貰ってくれ」


 「みんなってそれ……。私も仲間だと言いたいんですか? 全く、素直じゃないんだから」


 「うるせぇ! 二度も言わせんなよ! 護りたい奴にしか、そいつは渡してねぇ。アクアも俺の護りたい者の一部なんだ。黙って受けとりやがれ!」


 「そうね。甘えさせて貰うわカケルさん」


 小っ恥ずかしいじゃねぇか、ここまで物を渡すのに神経使うなんて初めてだよ。多分、あれでも気に入ってくれたんだろうが、むず痒くてたまらん。柄でも無いこと口走っていて、自分らしく無かったかなど、気になってしまったよ。


 目的も果たしたし、屋敷に帰ろう。仲間とまた、信頼関係が築かれていく喜びに浸りながら、今日は屋敷でゆっくりしようかな。


 なんで、お助け稼業なんかやってんのか分からんが、今後は厄介事はごめんだぜ。俺は仲間と、平和な生活がしたいだけなんだがな。


 だけど、心臓潰しの件でますます、俺達パーティの存在を魔王軍側は危険視しているだろうし、平和な生活は、まだまだ先になりそうだ。



 

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