異世界特典で手に入れた呪いの装備が原因で勇者パーティから追放されました。〜聖剣が失われ呪いの装備でしか魔王討伐出来ないが特異体質のハーフエルフとスローライフするので戻って来いと頼まれてももう遅い〜
第21話『呪いの勇者は、リッチーに魂を喰われる』
第21話『呪いの勇者は、リッチーに魂を喰われる』
「やっぱりダメでしたか?」
「駄目もクソもあるかよ。あれでどうやって殺せって言うんだ。本当は死にたくないんだろ? 切られると痛いもんね!」
訳有りそうなんで、リッチーに事情を聞いてみることにした。このリッチーの名前はニーナ。魂喰らいの一族であるのはもう分かっている事だが、どうやらリッチーのすみかで、妙な事件が多発していたらしい。
リッチーは基本、人間を喰わないのだが村から週に一度、人間の死体が発見されている。人間を喰うことは禁忌としており、掟を破った一家は、村総出で処刑する決まりになっていたんだとか。
その容疑にかけられたのがニーナ一家であり、ニーナ自身は冤罪であると思っているが、彼女自身の落とし前もある。自分が死んでこの件を丸く収めようって魂胆だ。
両親共に行方不明のまま、半年もの時間が流れたという。その間も未だに人間の死体は増え続ける一方らしいが、どうもきな臭いし、ニーナが死んだ所で状況は何にも変わらないだろう。
ーー謎が深まるばかりである。
「リッチーって人の魂を喰えるのか?」
「もちろん、可能です。ですが、それにより死ぬことがあれば禁忌に反します。絶対にしてはいけない最低な行為ですよ」
「そうなのか。ちょっと試しに俺の魂を喰らってみてくれよ」
「分かりました。信用して頂く為にも私の力を披露しましょう」
ニーナは両手を広げて詠唱を始めた。すると、ドス黒いオーラを放ちそれを一点に集め俺の右肩にそっと触れていた。
特に体調の変化も無く、手の凝った事をしていた割には大した違和感も無かった。まさか失敗したのだろうか。
「少しだけいただきましたよ。なんかカケルさんの魂は苦いですね」
「苦いってお前……」
遅れてやって来た、下半身の違和感。その現実に向き合いたくないのだけど、気になって仕方ない。不安を抱きながら、恐る恐るソレを確認した。
|(俺のタマキン、無いんですけどー!!)
「お前が喰らってきた魂、いや、タマキンその全てを吐き出せ! 何が苦いだ、少しエッチなこと言えば許されると思ってんだろ!」
「すみません、すみません! どうやら失敗してしまったようでして、ソウルドレインのスキルを使えばタマキンは戻せる筈です」
「一刻も早く戻して下さい!」
マリエルに、指を刺され腹を抱えて笑わせてしまった。起こる余裕なんてないので、後でしっかりと懲らしめてやろう。
ソウルドレインは魂に干渉出来るスキルらしく、取りすぎた魂を戻したり、逆に吸い上げる能力もあるんだとか。
そのスキルを使ってもらい、なんとか俺のタマキンは元の玉座に返り咲くことが出来た。人の体で遊ばないで頂きたい。
「とりあえず、現場に案内してくれないか?」
「いいのですか? 私を信用しても……」
「分からないことが多すぎるだけだ。この目で判断したいこともあるしな。流石にほっとけねぇよ」
「ありがとうございます。私は村に入れませんので、手前までの案内になります」
また、お一人良しの悪い癖が出てしまったな。だとしても、ニーナが心配なのは事実だ。この件を収めるには、人を殺しリッチーの村に死体を遺棄する犯人を探すのが、手っ取り早いだろう。
ーー平和に事が済みますように。
俺の願いは、きっと届かないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます