第20話『呪いの勇者と魂喰らいのリッチー』
昼まで睡眠をとっていた俺は、快適な目覚めと共に起床した。昨日のアクアの話しが頭によぎるけど、聖堂教会についてアリアドネに詳しく話しを聞かないといけないなと思い、皆の共有スペースに俺は向かうことにした。
そこに向かうと、何やらバタついているようでアリアドネが焦っていた。何をそんなに焦る必要があるんだろうな。敵襲でも来たのだろうか。不思議に思う俺に、血相変えてマリエルが近づいて来た。
「カケルさん今起きたんですか!? お客様がみえてますよ」
「まさか、屋敷に入れたのか?」
「勿論です。助けて欲しいって言ってたので屋敷に入れました」
「うちはお助け屋じゃねぇーんだぞ! どうすんだよ、絶対厄介事だろ。もう僕、嫌なんですけど」
うちがお助け稼業であると、イフリートの討伐に首狩りの王の件もあって噂が広まっているみたいだ。なんでも、狙った獲物は逃がさないらしい。どこのスナイパーだよふざけやがって、俺は狙い外しまくってんだよ。
俺達のスローライフはまだまだ先になりそうだが、とりあえず客がもう屋敷に来ているならば仕方がない。客の待つ応接間に、俺とエリクシア達で向かうことにしました。
「ご依頼があるんです」
「あ、うちそういうのやってないんです」
「もうここ以外はどこも引き受けてくれないんです〜!」
「だから違うって言ってんだろー! お前あれだろ。人の話し聞かないタイプだろ」
黒のマントを羽織り、目鼻立ちがはっきりした清楚系な美少女だが少し話しただけで胡散臭さが極まっていた。
だってそうだろ? 他所が断っている依頼なんだから、絶対にロクな依頼ではない。早く帰ってもらってこの状況を無かったことにしたいのだ。
そんな思惑に相反して、エリクシアが思い出したかのように俺に耳打ちをしてきた。
「この娘、リッチーだよ」
「リッチー? アンデットの類か? だから、アリアがそわそわしてたんだな」
「かなり有名な『魂喰らい』の一族だけど、どうしたんだろうね」
|(マリエルちゃーん! この娘やばい奴なんですけどー!)
次から次へと、事件に巻き込まれる体質なんでしょうか。正直言って、昨日のアクアとのやり取りで聖堂教会の事しか考える余裕がないんだ。
アリアドネにここを任せて立ち去ろうとすると、リッチーの美少女は、いきなりトンデモない依頼内容をぶち撒けてきた。
そりゃ、他所も断るだろうなと納得してしまう。
「私を殺して欲しいのです!」
「え、今、なんて?」
「だから、その禍々しい剣で私を殺して欲しいのです!」
「普通に嫌なんですが……」
やっぱりな。予想通りの厄介事で気持ちが落ちてしまう。確かに魔物には違いないが、いろんな種族が分け隔てなく住む街だ。そんな簡単に殺しなど出来ない。
仮にも魂を喰らってきた一族だろうに、嫌になったんだろうか。殺して下さいなんて、皮肉な話しだよな。どうにか説得出来ないものだろうか。
「いや〜、だってあなたリッチーでしょ? 魂を喰らうのが仕事と言いますか〜、使命でしょうに。本当にいいの? 結構痛いよ?」
「私は贖罪をしたいのです。どうせ命を奪って生きていたのですもの。その最後は、命を奪われるのが相応しい」
「もうどうなっても知らねーからな! 殺せばいいんだろ! 化けて出てくるんじゃねーぞ!」
諸刃の剣を構えて、リッチーの美少女に剣先を突きつける。
おかしいな、自殺を止める筈だったのに流されるまま彼女を追いつめていた。もうヤケクソだ。さっさと殺ってしまおうと剣を振りかざす時、リッチーは頬を赤らめて大胆な行動を始めた。
その行動に俺は、振りかざそうとしていた諸刃の剣を引っ込めることになる。
「ここに剣を貫いて下さい」
リッチーは着ていた上着のシャツを、しかも胸元を露出させ殺しを迫ってきた。そんなことされたら無理ですよ。殺せる訳ないじゃないですか。
「あ〜、くそー! リッチーの自殺の止め方なんか分からねぇよ。 俺は一体どうしたらいいんだー!!」
「色仕掛けに負けるなんてサイテーです」
マリエルにボロクソ言われてしまったが、無理なものは仕方が無い。リッチーの彼女には、何か狙いがあるのかも知れないが皆から蔑まれている状況を俺は、今どうにかしなければいけない。
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