第12話『呪いの勇者とギルド受付嬢の覚悟』
「カケルさ〜ん! 大事な話しなんです。門を開けて下さーい!」
「絶対に嫌ですー! どうせまた厄介事でしょー?」
屋敷の小窓から遠く声を掛けるのはこの街、エルムーアのギルド受付嬢アクア・ローレルである。ギルドに最低限しか顔を出してなく、最近はこれといってダンジョンに出ていないので、説教をしに来たのだろう。
でも忘れちゃいけない。俺達は、ダンジョンに出て冒険ばかりしたいのでは無い。仲間と共にスローライフがしたいんだ。だから最低限、ギルドカードが失効しないギリギリで冒険に行っているに過ぎないのだ。
早く帰ってくれるといいのだけど。欠伸をしながら小窓を閉めようとすると、アクアが聞き捨てならない言葉を吐いたのだ。気になってしまって、無視をする筈が聞き入ってしまった。
「あの勇者パーティが危ないんです。話しだけでも聞いて下さい!」
「分かりました。話しだけは聞きます。門を開けるので応接間まで来て下さい」
智治達が危ないとは、一体どう言うことなんだろうか。されど勇者だし、よっぽどの事が無ければ危険な目になどならないだろう。遂に、アクアは俺を騙す為に嘘を付いたのかと思うと少し落胆した。
話しを聞くために、まだ寝室でゆっくりしているエリクシア達を呼び出して、アクアの情報を貰うことにした。
「で? 話しとは?」
「我がギルド部隊が聖剣を発見しました」
「へぇー、凄いじゃないですか」
「正確に言いますと、聖剣がある場所を発見したんです。魔王城の近くにある煉獄通り。カケルさん達がイフリートを討伐した煉獄塔の側にあるダンジョンにあるんです」
「なるほど。まさか智治達があそこに!?」
「はい、そうなんです。そういう情報は、すぐに勇者に通達されるようになってるので。恐らく、魔王幹部と交戦になるでしょう」
「別に勇者なんだからいいんじゃないか?」
「そうはいかないんです」
神妙な顔つきで語るアクアは、一体何を考えているのかがサッパリだ。俺と智治の喧嘩を、アクアだって間近で見ていた筈何だけどな。まさか、俺が助けるとでも思ってるんだろうか。
別の理由がありそうだ。
「彼らよりも先に、聖剣を回収してギルドに納めてくれませんか。あの馬鹿勇者に渡したらいけない気がするんです」
「拒否します!」
「貴方に拒否権なんて無いんですよカケルさん。貴方は勇者ですから。いいんですよ? エルムーアを隠れ蓑にしたくて冒険者になったんですよね。私の権限でギルドカードを永久凍結しますから」
「分かったよ弱みにつけ込みやがって。でもタダじゃやんねぇーよ? 俺らは一応冒険者なんだから」
「お金は勿論払います。それでも足りないなら私の身体で払いますから。お願いを聞いて下さい!」
それ程までに何故、彼女は聖剣にこだわっているのかは分からんが、そこまで本気なお願いをされたら俺だって男だ。協力してあげたい。
違うからね? ギルド受付嬢アクアのエロいボディに釣られた訳じゃない。後ろから三人に睨まれているけど絶対誤解してるよな。俺はスケベでは断じて無い!
ーー彼女のお願いに真剣に向き合いたいだけなんだ!
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