異世界特典で手に入れた呪いの装備が原因で勇者パーティから追放されました。〜聖剣が失われ呪いの装備でしか魔王討伐出来ないが特異体質のハーフエルフとスローライフするので戻って来いと頼まれてももう遅い〜
第6話『呪いの勇者は自称無能少女を絶対に見捨てない』
第6話『呪いの勇者は自称無能少女を絶対に見捨てない』
「星が綺麗だなマリエル。で、話したい事ってなんだ?」
言われるままギルド酒場の屋上に向かった俺は、倒れて夜空を見上げるマリエルに声をかけた。彼女は、夜空を見つめ無邪気な子供の様な、でも感傷に浸る顔をする。
速やかに、転送装置を見つける事が出来なかったことを気にしているんだろうか。そんな必要全くないんだけどな。
「カケルも横になって星をみませんか?」
「うん。そうさせてもらう」
綺麗すぎるだろってぐらい満天の星だった。元いた世界にも負けない程の美しい星。それらを二人で暫く、見つめているとマリエルが聞いて欲しい話しがあると言ってきた。
「私の話しなんです。聞いてくれますか?」
「勿論だ。ゆっくり話してくれ」
「私は、誰にも馴染めずにずっと孤独だったんです。友達が、仲間が欲しかった。唯一の友達がこのお人形です。そんな変な奴ですが、私には才能がありました。知ってますよね、私はバフにおいては最強だとね」
「知ってるさ。確かに強かった」
「ですが、最大の欠点。私の魔法は命中不安定なんです。ずっと憧れだったんです。仲間と共にパーティを組んでダンジョンを攻略して、楽しい毎日を送りたい! でもそれは、叶わないんです。こんな無能な私は、どこのパーティにも引き取ってくれません。」
「ーーお前は無能なんかじゃ……」
「無能ですよ私は。パーティに入れても無能過ぎて追放されたこともありましたから」
涙を流しているのか、顔を隠し、淡々と言葉を並べている。
俺は知ってるんだ。マリエルが無能なんかじゃないってことくらい。バフの性能はともかく、デバフの性能は恐ろしく凄い。
むしろ俺の方が無能なんだ。彼女のことを何も分かってあげられなかった、ただの呪われた勇者。
ポツポツと語るマリエルに頷きながら、俺は話しを聞き続ける。
「カケルさんとエリクシアさんとの冒険、本当に楽しかったんですよ? 怖かった、ドキドキもワクワクもです。その全てが私にとっての宝物。それなのに私は、皆さんを危険に晒しました」
「マリエルは悪くないだろ? あの状況じゃ戦う以外、選択肢がなかったんだから」
「だとしてもです。私が皆さんの仲間になったらいつか誰かを殺してしまうんです! これで分かりました。私は、冒険者を諦めます」
心にも無いことを言って、冒険者に憧れていたのは嘘じゃないはずだ。このままでは、マリエルが立ち去ってしまう。絶対に引き止めたい。俺の心はもう決まっているんだから。
「カケルさんとエリクシアさんでまた、冒険…… したかった、なぁ……」
「待て!!」
泣きながら立ち去ろうとするマリエルに、強く抱きしめながらも優しく頭を撫でた。この娘だけは絶対に逃がさない。この機会を逃せば、二度と会えなくなってしまいそうだったから。
「カケルさん、離して下さい!」
「誰が離すかバカヤロー! マリエルが言ったんじゃないか。大切な仲間を護るんです、絶対に見捨てたりしませんってな」
「ーーですが、私がいると迷惑を」
「俺も絶対に見捨てない。俺らにはマリエルが、マリエルが必要なんだ。確かに俺らは欠陥だらけかもしれない。でも、それでいいじゃないか。俺たちはパーティなんだから」
「いいんですか? こんな私をパーティに入れても」
「マリエルじゃなきゃ、駄目なんだ! 俺と一緒に冒険しよう」
「ーーありがとう……。ございます…。」
人はこんなにも笑顔で泣けるんだと、見ていると心が温かくなった。俺だって似たようなものである。この世界に来て、心が動かされることばかりだ。
現実じゃ、感情を失ったただの出来損ないだったんだから。
ーー呪いの勇者である俺は、マリエル・リットナーという泣き虫で、変に自信家で、仲間を大切に思える優しさと美しさを合わせ持つ、最強のバフ使いを仲間に入れたんです。
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