第5話 ケモケモランドの聖域

「……それは儂にもわからんなぁ」


 ケモケモランドで一番大きな木の家の中で、フク爺は顎を当てながら答えた。


「フク爺でも⁉ そんなぁ……」


 ケモケモランドの長老、フク爺ならきっとあたしの疑問の答えを知っていると思ったのに。


「……じゃが、聖域にいけばあるいは……」

「聖域? 聖域って、ケモケモランドの北にあるあそこ……?」

「うむ……じゃがあそこは……」

「つれてって」


 あたしが頼み込むと、フク爺は困ったような顔でため息をついた。


「……ついてきなさい」

「やった!」


 フク爺の家のノレンをくぐり北に向かう。

 雪の上をさくさく歩いていると、大きな四角い変な物が現れた。

 木よりも固くて岩よりもつるつるした物だ。


「いつみても変なところだね」

「これは建物というのだ」

「建物?」

「うむ」


 フク爺の顔を見ると、とても険しい顔をしていた。


「ねえフク爺。どうしてここは入っちゃいけないの?」

「……純粋ではなくなるからだ」


 あたしには、その言葉の意味がわからなかった。


 フク爺が薄っぺらい木を開くと(トビラ、というものらしい)中からカビっぽい臭いがした。


 中にはカクカクした縦長の棚がいくつも並んでいて、その中にはぺらぺらした枯れた葉っぱみたいなものの束がたくさん詰め込まれている。


「ケヘッケヘッ! なんかここ、空気悪い……」

「我慢しなさい。おーいドラムよ! おるか!」


 フク爺が呼ぶと、棚の隙間から銀色のふとーい竹みたいな動物が出てきた。


「なにこの子!」

「こやつはドラム。この場所を管理する者じゃ」

「へー、なんていう動物なの?」

「動物ではない。ロボット、という存在じゃ」

「ロボット……?」

「イラッシャイマセ! ナニカオサガシデショウカ!」

「うわしゃべった!」


 びっくりして毛が逆立っちゃった!

 それどころか反射的に後ろに飛びのいて四つん這いで威嚇までしちゃった。シバタにびびりだって馬鹿にされるからあんまりしたくないのにな。

 

 それにしてもこのドラムって子、なんだか耳がキンキンする声だなぁ。


「そやつはこの聖域……図書館の本をすべて記憶しておる。聞けばなんでも答えてくれるはずじゃ」

「そっか……なら、教えてドラム」

「ナニヲケンサクシマスカ?」

「あたしが知りたいのは――――」

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