ヒーローの秘密物語⑩
「これでヒーローになれるって、どうして栄輝は知って・・・」
「流石に鈍いって! 俺は元々ヒーローだったということさ!!」
「そ、そうだったの・・・!?」
ヒーローに変身するところを見られても腕時計はたくさんあるため問題ない。 ヒーローとしての能力を使えることは実証済みで、変身を解けば腕時計が壊れるということが分かっているためだ。
奨も状況を把握し新しい腕時計で変身した。
「ただの子供がふざけた真似をしやがって!!」
研究者たちも戦闘態勢に入った。 栄輝と奨も負けじと向かってきた男を迎え撃つ。 栄輝たちが圧倒的に不利だが変身してしまえばこっちのもの。 そう思っていたのだが、男たちは思わぬ行動に出た。
「たとえ二人でもヒーロースーツを着ている奴らには手に負えない! 我々も変身するぞ!!」
そうして研究者たちも変身し始めたのだ。
「おいおい、マジかよ。 これさえあれば誰でも変身できるんじゃないか」
「一斉に取り押さえろ!!」
「わーお。 ヒーローの姿同士で戦うって凄く不思議な光景・・・」
「奨! 喋っていないで手を動かせ!!」
「本当に僕たちだけで勝てるんだよね!?」
「人数が多くて正直厳しいけどな。 他の研究者たちがここへ来てしまう前に終わらせるぞ!!」
―――もちろん俺たちが負けると思ってここへ来ていない。
―――研究員たちがヒーローになったのは驚いたけど、どう見ても使いこなせていないじゃないか。
栄輝はヒーローになった時のことを思い出していた。 ヒーローになると素の状態より身体能力は上がるが、逆にそのズレで動きづらかったのだ。 簡単な動きならヒーローになれば有利だろう。
しかし戦いとなると一日の長がある二人の方が圧倒的に強かった。
―――力の加減が分からなくてよろけてばかりじゃないか。
―――こんなものあっという間に終わるぞ!!
そうして研究者たちを簡単に倒すことができた。 彼らの敗因は実際に試したことがなかったことだ。
「これで、全員・・・?」
「さぁな。 また見つければその場で倒していけばいいだろう」
「にしても驚いた。 栄輝もヒーローだったんだ?」
「俺も驚いたよ。 奨もヒーローだったなんて」
「いつ気付いたの?」
「ここへ来る前。 奨とアメーバが戦っている時に奨は声を出しながら戦っていたからすぐに分かったぞ」
そう言うと奨は恥ずかしそうに言う。
「あー・・・。 それでバレたらしょうもないな。 気を付けないと」
「もう気を付ける必要なんてないけどな。 今ここで終わらせる」
「これからどうするの?」
「とりあえずここにいる奴らから何が目的だったのかを聞こう。 その後に通報してこの研究所の電気をシャットダウンさせる」
「あと吸い取られた気力を取り戻せるといいね」
「・・・あぁ」
咲良のことを思い出したがグッと堪えた。 栄輝はぐったりしているヒーロー姿の研究員を揺り起こした。
「お前らの目的は何だ? どうせここでアメーバを作って街に送り出していたんだろ?」
「・・・」
「俺たちとお前らは同じ人間のはずだ。 どうしてこんなことをした?」
尋ねると一人明らかに風格の違う一人の男性が語り出した。
「・・・日本の将来のために決まっているだろう」
「将来? いや、何を言ってんだよ。 未来に希望を持たせるなら活力を奪い取るなんて尚更駄目じゃないか」
「駄目ではない。 夢や希望を持つ者がこの先も増え出したらどうなると思う?」
「向上心が増えてより日本がよくなるんだろ?」
「違うな。 そのような人たちが結束すれば我々組織の計画を脅かすかもしれないだろう」
「計画って?」
「ヒーローという名の戦力を生み出し日本を意のままに操り支配する計画だ」
「・・・ッ!」
「ちなみに活力を吸い取ったアメーバをヒーローが倒せばその活力はこの研究所内に送られることになっている。 つまり最初から君たちは我々の手の平で踊らされていたということだよ」
その言葉に怒りを憶えた栄輝は奨に言った。
「・・・奨。 アメーバをここへ連れてくるぞ」
「え?」
「この研究所内に作り出されているアメーバがどこかにいるはずだ。 俺がそれを連れてくる。 その間に奨はコイツらの変身を解いてくれ」
「いいけど、アメーバを連れてきて何をする気?」
その言葉に栄輝は振り返って言った。
「コイツらの活力を全て吸い取るに決まってんだろ」
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