ひとでなし

Aoi人

自己

何もできないゴミがいる。私のことである

他人に迷惑しかかけない人害じんがいがいる。私のことである

それでも死ねないクズがいる。私のことである

自分の落ち度を書き出すも、やはり、生きたいという気持ちに変化は訪れない。いくら自分の生きている価値のなさに気がつこうとも、無意識のうちに、現実から目を背けようとする。そんな自分が憎くて、嫌いで、だんだんと吐き気がしてくる。足元がおぼつかなくなり、やがて立てなくなる。立とうとしても、立つほどの気力さえ私には残っていない。それに足掻くことさえせずに、私は立つことを諦めて、地面で仰向けになる。無意識のうちにポケットに入れていたスマートフォンを取り出し、イヤホンを付け、慰めの声を求める

『辛かったね。君はよく頑張ってるよ。よしよし』

甘い声で囁かれるたび、私の心は満たされてゆく。そして同時に、更に自分が憎くなる

都合の良い言葉を求める自分は、ひどく醜い。だんだんとダメな人間になっていくのを感じる

ただ、だからといい、自分を否定するのも、他人から自己を否定されるのも、どちらとも、私には耐え難い苦痛であった

そして、何もないときには、私は心の底から恐怖してしまい、パニックを起こしてしまう

肯定されるとダメになり、否定されると辛くなり、無反応だと怖くなる

恐らく、人と関わること自体、私には毒なのだろう

だが、それでも、私は人との繋がりを断ち切ることはできなかった

例え毒であっても、私、いや、人類にとってはもう、人との関わりというものは、中毒なのであった。さながら麻薬のように…いや、麻薬よりも依存し、人を蝕んでいく、この世の最悪と言った方が的確かもしれない

常に考え、行動し、協力する。そういった、いわゆる人間関係というものが、私にはどうにも難しかった。それでも、こうして他と関わり続けていることが、なによりも、その醜さと依存性を示している

思考という動作は常に、私に苦痛を強いてくる。それは、たとえどんなときでも変化することはない。人と関わっているときも、自分を恨んでいるときも、そして、今この瞬間でさえも、もちろんそうなのである

だから、私はその苦痛から逃れるため、目を瞑り、視界を暗転させる。暗闇の中に、睡眠というたった一つの逃げ場を探す。しかし、私の思考というものは、はそれすら許すしてはくれない。何も考えたくもないのに、思考は勝手に過去をフラッシュバックさせてくる。自然と涙が出てくる

憎悪。嫌悪。陰口。暴言。暴力。いじめ。躾。

恐怖という感情に襲われるための記憶ばかり、思考は好んで再生する

死を求めたくなる

しかし、私の感情というものは、それすら許してくれることはない。死という絶対的な恐怖に抗うほどの心持ちを、残念ながら、私は持ち合わせていなかったのだ

苦痛に飲まれ、だんだんと闇に落ちていく

人であることを忘れ、全てを投げ出したいと思う。しかし、それすら、私には恐ろしいことであったのだ

あるいは、私はもう、人という生物ではなかったのかもしれない

それならば、私はなんと幸福な生物であろうか

私はそのとき、一筋の涙を流した。その涙の意味は、私ですらも分からなかった

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