第37話 私たちは中間考査⑤

「テステスーテステスー」

『聞こえてるって。』


家に帰って菓子パンをかじっていると、真奈から帰ったとの連絡がきたので、通話を始める。


『杏はもう出来そうなん?』

「いや、今から自分の部屋行って広げなあかん。」

『今まで何しとってん。』

「菓子パンかじってた。」


はぁ…って呆れるようなため息がスピーカーの向こうから聞こえてくる。


 とりあえず自分の部屋に。問題集は朝やったまんまで広げているから、机の上を軽く片付けてスマホを置く。


「もう始めれんで。」

『りょーかい。』


真奈の方からもシャーペンのノック音が聞こえてくる。向こうも準備が出来てるみたいだ。


『それで早速やけど56番教えてくれん?全くわからん。』

「えぇーっ、もう?別にいいけど。それはな…」


なんて言いながら、私たちの課題を終わらせるとかいう作業が始まった。


 1時間ほど過ぎた頃。


『疲れた〜!ギブギブ!一旦きゅーけいしよ!』

「まだ1時間ぐらいしか経ってへんで。」

『もう授業1回分やん!きゅーけい!』


真奈はもう集中力が切れたらしく、スピーカーの向こうで叫んでいる。私はまだまだいけるというのに。


『私はきゅーけいしてるから、杏はやっといてえぇで。あっ、こんな感じで喋りかけるかもしれんから許してや。』

「えっ、無理なんやけど。割とマジで明日殴るかもしれんけどええんか?」

『杏はそんなことしないって知ってるから。』


ゲラゲラと笑っている真奈。本当にする気はないけど、こんな感じで言われるのってなんか癪やな。


 真奈の邪魔に耐えながら2問ほど進めると、真奈が戻ってきた。


『ただいま〜!』

「おかえり〜。さっ、晩ご飯までに終わらせよ。」

『もしかして、そこまで休憩を取るのはないつもりで?』

「もちろんやん。本気出せば誰でもできるって。」

『くぁwせdrftgyふじこlp』

「それほんまに言う人初めて見た。」


恨めしそうな顔をしているであろう真奈のことは放っておいて、問題を進めていく。残り10ページを切って、やっと終わりが見えてきた。


『杏ってさ、集中力めっちゃあるやん。』

「ん?そーかな?」

『普通2、3時間も勉強続かんて。』

「ちょっと時間忘れてたらそんなけ経ってるから。」

『なるへそ?』

「バカ兄なんか一日中部屋籠ってたことあったし。」

『あの人は人間やめてる説あるから。』


喋りながら残りページ数のカウントダウンが始まる。その間もたまに真奈に教えたりしながら着実に減らしていき、ついに終わった。


「終わった〜!」

『私はあと3ページ。ちょっと待っててや。』

「分かってるって。」


時間を確認すると、7時を回った頃。今日の当番は桜さんなので、私は呼ばれたら行くだけだ。


 真奈も課題が終わって、バタンと倒れ込む音がした。


『づがれだぁ。』

「おつかれおつかれ。もうそろそろ呼ばれると思うからまた明日な。」

『うん。また明日。今日はありがとね。』

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